サンケイビズ「財政再建原理主義」が
経済を破壊する
【ついき秀学のMirai Vision】http://www.sankeibiz.jp/macro/news/110128/mca1101280502001-n1.htm
「財政再建原理主義」が経済を破壊する
2011.1.28
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経済財政担当相に加え、少子化対策、税制・社会保障担当も
兼務する与謝野馨氏
菅再改造内閣の経済財政担当大臣に与謝野馨氏が
就任しました。与謝野氏は昨年『民主党が日本経済を
破壊する』という書物を著して、民主党政権の経済政策を
批判してきた人です。菅直人首相は消費税増税に道筋を
つけるために起用したようですが、国民の大多数が
今回の与謝野氏入閣にあぜんとしたことでしょう。
そもそも与謝野氏は前回衆院選で比例代表の自民党枠
で復活当選を果たしており、その議席を維持したまま民主党
政権に入閣するのは、まさに有権者に対する背信行為です。
自民党幹部の言う通り、議員辞職してから民間人として
大臣になるべきでした。
しかも今回、経済財政相の座を与謝野氏に譲って経済
産業相に横滑りした海江田万里氏は、前回衆院選で
東京1区で与謝野氏を破って当選しています。同一選挙区
の当選者と落選者が肩を並べて同じ内閣の閣僚に就く。
国づくりの理念として「不条理をただす政治」を掲げる
菅内閣において、こんな異常事態を当事者として迎え
ざるを得なかった海江田氏が、「人生というのは不条理
だな」と述べたのは同情に値します。
民意を問わずに増税へ驀進
与謝野氏の入閣で最も問題なのは、やはり
「財政再建原理主義」ともいうべき経済政策です。
与謝野氏は自民党政権の頃から2010年代半ばまでに
消費税の税率を少なくとも10%程度に引き上げることを
提言しており、今回の大臣就任の際も「(菅首相が昨年
の参院選前に)あえて消費税に触れたことを意気に感じて
閣僚に就任した」と語るなど、財政再建を至上命題とする
筋金入りの増税論者です。
加えて、与謝野氏の増税を進める手法にも問題があります。
閣内から上がった「消費税引き上げの前に衆院解散で信を
問うべし」との声に対して、「選挙が4年に1回はあることを
考えると、あまり大きな問題ではない」と述べ、解散の必要は
ないという考えを示しました。
一昨年の衆院選で当時の鳩山由紀夫民主党代表が
「4年間は消費税を上げない」と公約したことを踏まえれば、
有権者を愚弄した判断と言うほかありません。
大胆な金融緩和でデフレ脱却を
幸福実現党はこれまで、デフレ下で増税すれば景気は
いっそう悪くなり、税収はかえって減ることになると、
一貫して主張し続けてきました。
小泉内閣で経済財政相を務めた竹中平蔵氏によれば、
ハーバード大のアルバート・アレシナ教授が数百の
財政再建事例を調べたところ、歳出削減よりも税を先に
上げた場合は必ず失敗しているとのことです。
わが国の事例としても、橋本内閣が財政再建のため
1997年に消費税率を引き上げ、特別減税を廃止したら、
個人消費や住宅投資が大幅に落ち込み、著しい景気後退
と金融危機が起きました。
財政再建が重要でないとは言いませんが、優先
すべきはデフレ脱却とそのためのより大胆な金融緩和です。
2~3%程度のインフレ目標を設定した上で、日銀が
現在の米連邦準備制度理事会(FRB)のように市場から
大規模な長期国債買い入れを行うか、
あるいは政府からデフレギャップ相当の国債を直接引き
受けるかする必要があります。
増税の正当化に使われる社会保障関係費の増加ですが、
年金は支給年齢の引き上げなどで将来の給付負担を低減し、
医療・介護は自由化や無駄の排除で支出増を抑制しながら、
経済成長による税収増によってカバーしていくことを先に
追求すべきです。
言葉だけの成長戦略しか持たない民主党政権に、
「私は財政再建や社会保障改革のほかには取りえは
ありません」(1月25日付朝日新聞によるインタビュー)と
告白する“下げ潮派”与謝野氏が加わって、
日本経済は今まさに奈落の底に落ちかねない危機にあります。
一日も早い衆院解散、ないしは内閣総辞職が望まれます。
◇
【プロフィル】ついき秀学 ついき・しゅうがく 1971年、
大阪府生まれ。東京大学法学部政治コースを卒業後、
宗教法人幸福の科学に入局。財務局長、専務理事などを歴任。
2009年、幸福実現党に入党。10年7月、幸福実現党党首に
就任。妻と2男の4人家族。趣味は読書と散歩。