秋風

アキバ系評論・創作

コミティア89

2009-08-23 19:05:13 | Weblog
今日はビックサイト西館で創作系オンリー同人イベントのコミティアに行ってきました。
1800サークルと創作系オンリーとしては大規模で賑わっていましたが先週のコミケに比べ何と快適な事か!w
あれくらいの混みようなら苦しくもなく寂しくなくですね。

インフルエンザ対策でマスク着用者も少なくなかったですが皆様もお気をつけ下さい。
健康あっての趣味ですよね。

次回のコミティアは11月15日……調整がつくなら参加したいですね。

月下の舞姫vol.4

2009-08-23 18:37:45 | Weblog
「黄泉比良坂(よもつひらさか)の場所なら末広町交差点の地域安全センターで聞いて」
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/1/manseibashi/koban/pb_suehiro.htm

 あゆは小一時間前に怒鳴りつけられた初老の男に凛とした声で言い半身に構える。
 パソコンやビデオゲームが好きな割りにあゆは目が良いので普段ならもっと遠くから視認できたはずだし、先程の事があったので警戒すべきだったのに何とした事か油断していて近づくまで気が付かなかった。
 あゆは心のどこかで情報弱者で肉体的にも貧弱な初老の男性を見下していた事を恥じて慢心を後悔した。
「うらめしや……」
 その男はビルの前の外灯の下でうなだれて呻くように呟きながら一歩前に出た。
「裏通りにあるメイド食堂、裏飯屋! あら素敵♪」
 つい、あゆの若さが出て挑発してしまい分水嶺を越えさせてしまった。
「うぼぁあぁあぁ……」
 男は身体を震わせとうとうゾンビのようにまともに喋れなくなってきた。

「しまった」
 あゆは再び後悔しつつも気持ちを切り替え素早く冷静に頭の中で戦術を組み立てる。
 まずふたつある防犯ブザーのストラップをそれぞれ抜きふたつとも鳴動させる。
 ひとつは身に付けたままでもうひとつはホルダーから出し相手の足元に投げつける。
 理性が残っていれば爆音でひるみ逃げるはずだが過剰な期待はしない。
 次にダッシュで今来たヨドバシカメラ方面に逃げる。
 同時に左手にはポケットの中の制汗スプレーを握り目潰しの用意とする。
 それでも捕捉された場合は格闘戦になるが小さい体躯によるハンディがある為カバンを振り回すなどなるべく距離を保った展開を心がける。
 状況に応じて携帯電話から110番通報をするが瞬時に場所と状況が通じるわけでもないのであまり頼りにはしないとする。

「よし!!」
 あゆは自分に号令をかけ覚悟を決める。
 その時、ビルの玄関から人影が音も無く滑るように出てくる。
「裏飯屋かゲテモノ料理専門店みたいだな、変な臭いでご近所から苦情が来そうだ」
「お父さん!」
 あゆの父の手には非常に堅牢な懐中電灯、マグライトが握られている。
 6セルC、単二電池6本を収めるロングタイプだ。6セルDの単一電池6本の方が一般的だが標準的日本人の手には太すぎるのであまり日本国内では流通していないものをあゆが見つけ出してきて玄関に備えていたものだ。

 あゆは左手に制汗スプレー、右手にホルダーから出した防犯ブザーを持つ。
「ショータイム!!」 
 あゆが引き攣った顔で気勢を上げ防犯ブザーのストラップを手榴弾の安全ピンのように口に銜える。
「お客様、お帰りはあちらでございます」
 あゆの父は慇懃無礼に恭しく謙り自分の足元からヨドバシ方面に掛けて箒で掃くように道を照らす。
 初老の男は我に帰り小走りに、でもすぐ息が切れてとぼとぼと歩いて秋葉原駅方面に消えた。
 あゆも戦闘モードから復帰していつものいたずらっぽい笑顔の少女に戻った。

「まだまだね、私……」
「分かっているならいい、無事で何よりだ、食事にしよう」
 見上げれば気配を消す為部屋の電気を消したビルの4階の窓からあゆの母が身を乗り出しこっちを見ていて目が合うと慌てて中に引っ込んでしまった。
 片手に携帯電話、片手に――何か持っていたような気がするがあゆには認識できなかった。

「お腹すいた」