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ヨウ素剤で刑事7人に踏み込まれる

ヨウ化カリウム、ヨウ素剤、安定ヨウ素剤、放射線防護剤、KI、Potassium Iodide

この広告で”七人の刑事”がなだれこんで来ました

2012-10-29 22:32:20 | 事実経過

2012年8月6日の朝6:00に警察の捜査員7名が家宅捜索令状を振りかざして、わたしの家に踏み込んできました。ヨウ化カリウムを違法に広告した容疑だそうです。

以下は、問題の商品広告のコピー画像です。わたしがサプリメントを扱うネット上の店舗に掲載したものです。2011年3月11日の福島原発事故発生直後にこれを出すことが、いかに“犯罪的”であるか十分にご納得いただけるでしょうか。注文された方の中には福島の方もいらっしゃいました。3.11福島原発事故直後にヨウ素剤の配布を渋っていた政府の側からすると、当時緊急にヨウ素剤を輸入販売しようとした人間は犯罪者であるようです

寝耳に水のこの出来事を「ヨウ化カリウム、日本では禁制品か」という報告にまとめました。途中まででも読んでいただければ幸いです。



警察は早朝に襲いかかる・・・家宅捜索

2012-10-29 01:03:38 | 事実経過

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 ここまでお読みいただいた方々に心から感謝申し上げたいと思います。現在私は非常に不安な毎日を送っています。次はどんなふうにして攻撃してくるのだろうかと疑心暗鬼の日々です。戦前戦中は”公安”が恐れられていましたが、今日ではその尖兵は”サイバーポリス”だと思います。私を扱ったサイバーポリスの面々は、正義感に燃えた若者のように見えました。戦前戦中もそうだったのでしょう。国家、社会を守るために自分たちは闘っているのだと思っているのでしょうが、その実、しばしば国家権力や財閥のお先棒をかついでいることがあまりわかっていないようです。

ヨウ化カリウム、ヨウ素剤は、日本の原子力政策にとっては非常に厄介なものであるようです。原子力災害の際には非常に役に立つはずの放射線防護剤ですが、その存在自体が原子力災害の発生を前提にしているために、原発の安全神話を喧伝してきた側にとってはおそらく頭の痛い存在なのです。そういった、万が一の原発事故の際に必要になるヨウ化カリウムがふつうにドラッグストアで売られていてはさぞや具合が悪いのではないでしょうか。ヨウ化カリウムは日本では欧米のようにサプリメントではなく、医薬品扱いにされています。しかも”劇薬”指定です。つまり医者の処方箋なしには手に入れられないものなのです。こんな国はありません。無理やり劇薬のカテゴリーに押し込んだかのようです。このようにして極力、一般の目に触れないように、一般の手に渡らないように巧妙にヒタ隠しにされてきました。これはどう考えても組織的な操作としか思えません。日本政府の原子力政策の一環であるように思えます。

日本には日本の法律、薬事法ががあるんだから仕方がないだろう、というひとがいると思います。世界の他の国と比べなくても、おかしいものはおかしいのです。日本には今回の原発事故以前に大きな原子力災害が2回ありました。そうです。広島、長崎への原爆投下です。あえて言えば、あのとき以来日本のどの家庭もヨウ化カリウムを常備していなければならなかったのではないでしょうか。原子力災害はなにも原発事故だけではありません。どこかの国から核ミサイルが飛来してくる可能性も排除できないのではないでしょうか。そうでなければ、パトリオットミサイルも、イージス艦も不要でしょう。2度も核攻撃をされても懲りない国民、2度も攻撃されたのだから3度目はないと勝手に思っている国民、世界唯一の被爆国なんだから、もうどこの国もいじめないだろうと何となく思いこんでいる国民の一人がこの私でもありました。

世界保健機構(WHO)は、原子力災害時にはヨウ化カリウムを服用することを推奨しています。そればかりか、各国政府に、国民がヨウ化カリウムを購入できるようにしておくように勧告しています(1999年改訂ののガイドライン)。特にチェルノブイリ原発事故のあとでは、世界の原発のある地域の住民はヨウ化カリウムを備えるようになっていたのです。海外の常識などではありません。それがふつうの人間の常識ではないでしょうか。いっぽう日本では、原発の安全神話と矛盾するような都合の悪いものはずっとヒタ隠しにされてきたのです。寝た子を起こしてはいけないという親心でしょうか。原発の巨大利権を守るためでしょうか。原発事故の可能性だけでなく、冷戦時代にはソ連からの核攻撃の可能性を考えて自宅にヨウ化カリウムを備えている家庭がイギリスやアメリカにはありました。アメリカではテロの時代になってからはかえってテロに核爆弾が使用される可能性を考えてヨウ化カリウムを備える家庭が出てきました。じっさいアメリカでは9.11事件以降、売れ行きが伸びています。危機管理というのはそういうものではないでしょうか。

このサイトでは、ヨウ化カリウムを通して、日本という国、原発問題、危機管理を考えていきたいと思います。とはいえ、今の私には今自分がかぶっている問題が最優先です。弁護士に一度相談しましたが、次からは敬遠されて、メールで連絡してももうナシのつぶてです。

皆さんの中で、似たような事例、参考情報、アドバイスなどがありましたら、ぜひお寄せください。弁護士にも見捨てられ、こちらはワラをもつかむ思いです。どんな内容でもかまいません。よろしくご協力ください。

連絡先: snapeclass@gmail.com

 よろしくお願いいたします。

なお、こちらの名前は、”ザウルス”というハンドルネームで通しています。

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警察の家宅捜索から約4カ月後、私のこのケースはわたしの想像を超える展開をみせました。詳しくは以下のページをごらんください。


書類送検とその報道

2012-10-28 13:34:00 | 事実経過

書類送検とその報道

知らされていなかった書類送検

 2012年11月13日 

書類送検される。

わたしには何の連絡もなかったので、わたしは知らずにいた。以下の記事をわたしはちょうど1ヶ月後の12月13日に、気になってネット上で検索して初めて目にした。

  

マスコミによる報道

 

 サンケイネットニュースより

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「放射線予防剤」とネットに広告 実質経営者を書類送検「被ばく防ぎたかった」

2012.11.13 13:33

 「放射線から身を守る予防剤」などとうたい、厚生労働省の認可を得ていない医薬品の広告をインターネットに出したとして、兵庫県警サイバー犯罪対策課と須磨署は13日までに、薬事法違反の疑いで、神奈川県の健康補助食品輸入代行会社と、同社の実質的な経営者を書類送検した。

 送検容疑は2011年4月上旬~今年5月、ヨウ化カリウムを含むと表示した厚労省の認可を得ていない医薬品について、効果や効能をネット上のショッピングサイトに掲載した疑い。

 須磨署によると、経営者は「50~60人に計50万円ほど売った。被ばくを防ぎたかった」と供述し、容疑を認めている。

 広告には「被ばく対策にはヨウ化カリウムが定番」などと記載され、東日本大震災の被災地となった宮城県を含む10都府県から購入があった。

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 この記事を見て二重に驚いた。

ひとつには当事者のこのわたしの知らないうちにこのわたしにとって非常に重要なことが “決定” され、“公表” されていた点である。

もうひとつは内容についてである。書類送検は時間の問題と覚悟していたにしても、この報道記事による取り扱いはわたしが予想していたものとまったく違っていた。わたしが予想していた報道記事は、「ヨウ素剤販売で悪徳業者、書類送検」というようなものであった。このわたしに対する警察の態度、扱いからしてそういった烙印や社会的弾劾が待っていると予想していたのである。それが、なんと見出しと本文中に 「被ばく防ぎたかった」と2回出てくる。記事本文の最後には「東日本大震災の被災地となった宮城県を含む10都府県から購入があった」とある。わたしが予想していたような「放射能不安に便乗し・・・」 とか「売りつけた」とか「荒稼ぎ」といった弾劾的なフレーズは皆無である。

こういった批判的、弾劾的表現が使われていなくても、もちろん読む人が読めば「こいつ、ひとの不安につけこんでひと儲けしようとしやがったな」と思う人は思うだろう。あらためてよく読んでも読者の憤慨を誘うような表現はほとんどないのだが、だからと言って、この記事はニュートラルな事実だけを価値判断を交えずに淡々と報じているというものではない。断じてそうではない。我田引水とも自惚れとも思われるかもしれないが、あえて誤解を恐れずに言えば、この記事は書類送検された「実質的な経営者」に対してむしろ “同情的” である。批判的でも中立的でもなく、むしろこの種の報道としては例外的に“是認的”である。

 わたしは何度もこの記事を読み返した。わたしのように警察にさんざんとっちめられ、弁護士にも見捨てられ、友人たちにも説教され、家族にも疎んぜられてきた人間には、ひとが自分を批判しているのか、支持してくれているのかがおそろしいほど敏感にわかる。迫害されてきた野良猫のように、出会った人間が敵なのか味方なのかを本能的に瞬時に察知するのである。そしてほとんどの場合、相手は前者なのである。

そういうわたしが、この記事を目にしたわけである。わたしは日本のマスコミを信じていないし、3.11以降は特にそうである。そのマスコミにわたしは多少の情けをかけてもらったような気がしている。野良猫が思いもかけず見ず知らずの通りがかりのひとにエサをもらったようなものである。わたしはこの記事に若干のヒューマンタッチを加えた記者の良心に対して敬服、そして感謝の念を禁じ得ない。

この記者は警察発表のわたしの書類送検のケースを単なる薬事法違反の事例としてではなく、大規模核災害という社会状況を背景として見ている。そして多くの人々が助けを必要としている緊急事態におけるひとりの人間の行動としてとらえている。そこにこそこの書類送検のケースの特殊性があると判断してこの記事を書いている。こんな小さな事件のこんな小さな報道ひとつにも、ひとの心というものは反映する。事件の背景と関わった人間に対する洞察、そして記者の人間観が文面ににじみ出ている。

 ヨウ化カリウム関連の薬事法違反での書類送検の記事は、ネット上でもこのわたしのケース以外に数件ある。あえてここでは引用しないが、調べてみれば、このわたしのケースがいかに例外的な扱いを受けているかがわかっていただけると思う。そういった“前例”からわたしは、すべて一律な扱いで、このわたしも“悪徳業者”の烙印を免れないだろうと予想していた。このサンケイネットニュースほど“好意的”ではないが、毎日jp というネットニュースが同じわたしの書類送検を報じている。この「毎日」の記事は見ようによっては、“客観・中立”報道の典型のようにも見える。

 実際に毎日jpの記事を見てみよう。

 

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薬事法違反:「被ばくに効果」と広告 容疑で書類送検

—須磨署など /兵庫

毎日新聞 2012年11月13日 地方版

 国の未承認の医薬品を「放射能被ばくに効果がある」などとうたい、販売目的でインターネット上に広告したとして、須磨署と県警本部サイバー犯罪対策課は12日、神奈川県の医薬品輸入代行会社とその実質経営者の男を薬事法違反(未承認医薬品の広告の禁止)容疑で神戸地検に書類送検した。放射能被ばくをめぐる未承認医薬品の広告の摘発は県内初という。

 送検容疑は、11年4月~今年5月、厚生労働大臣が承認していない「ヨウ化カリウム」の効果や効能についてインターネットのショッピングサイトに広告したとされる。60錠入り瓶を2本セットで5100円で販売。「核施設の作業員が飲んでいる」 「放射線防護剤と呼ばれている」 などとうたっていたという。

 今年5月、同署などがサイバーパトロール中にサイトを発見した。男は 「50~60人に売った」 と容疑を認めているが、販売実績については裏付けできなかった。【井上卓也】

〔神戸版〕

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こちらの記事は非常に事務的に警察発表を伝えていて、その意味でこれといったあからさまな批判的、弾劾的表現は見当たらないのだが、全体としてやはりマイナスに傾いているような印象、つまり「けしからん」という印象を与えるように思うが、どうであろうか。

 書類送検の記事は、記者が警察発表をもとに書くものである。しかし、わたしのケースではそもそもあまり“社会の敵”のマイナスイメージに合うわかりやすい材料があまりなくて記者はちょっと困ったはずである。わたしの広告にはウソも誇大表示もなく、特にボロ儲けもしていないのである。サンケイの記者は、これはちょっと違うぞと考えて、むしろプラスの視点から記事にした。いっぽう毎日の記者は、こういった記事での常道で通そうとして、可能な限りマイナスのトーンで仕上げようとしたようである。そこで、限られた材料のうち「・・・などとうたって」が使えると判断したにちがいない。毎日の記事にやや弾劾的な印象があるのは、記事中に「・・・などととうたい」「・・・などとうたっていたという」という表現が2回使われているためである。1回ならば目立たないが、これだけの短い記事中に2回となると、いやでも強調の意味を帯びることになる。多くの場合、こういった文脈では 「・・・とうたって」 は 「・・・と偽って」 という意味あいすら持つ。

まず、“「被ばくに効果」と広告 容疑で書類送検” という見出しと、本文中の“「放射能被ばくに効果がある」などとうたい” であるが、そもそもヨウ化カリウムが被ばくの予防に効果があることは核災害医療の常識である。「カルシウムが骨粗鬆症の予防に役立つ」というのと同じレベルの常識である。誇大広告でも虚偽の広告でもない。純然たる科学的、医学的事実である。次に、“「核施設の作業員が飲んでいる」「放射線防護剤と呼ばれている」などとうたっていたという。” という本文であるが、これもれっきとした社会的事実であって、ウソでも出まかせでもない。 

 つまり、そもそもわたしは効きもしないものを売りつけたわけでも、誇大宣伝をしたり、ウソ偽りを言って顧客をだましたわけでもないのである。科学的事実と社会的事実を述べただけである。記者はこのことをわかったうえで、あえて、「・・・などとうたって」を繰り返し使って、「言ってはならないことを言った=ウソを言った」 かのような印象を読者に与えようと苦慮している。わたしは一切ウソもでたらめも言っていないのであるが、それでは記事としては面白くないのである。そこで、「・・・などとうたって」を2度使用したのであろう。このためこの記事は全体としてやや“弾劾的”な印象を与えている。「“社会の敵”がまた一人摘発されて、めでたし、めでたし!」という「書類送検」の常道の報道記事の完成である。

ちなみに、この毎日の記事はこれだけ短いものであるにもかかわらず、事実誤認が3つもある。まず、見出しに「被ばくに効果」とあるが、わたしは「効果」とか「効く」とかいう表現は一切使っていない。これは重要な点である。次に「医薬品輸入代行会社」ではなく、サンケイでは正しく記述されているように「健康補助食品輸入代行会社」である。これも大きなミスである。最後に「販売実績については裏付けできなかった。」とあるが、サンケイでも明らかにされているように、警察はわたしのパソコンを押収し、ディスク内のデータをもとにすべて割り出している。事実の報道という点で、この毎日の報道記事はずさんな印象がある。毎日は報道の真実性と報道内容の解釈においてサンケイに一歩譲るようである。報道内容の解釈と言ったが、サンケイは「書類送検」記事にもかかわらず臨機応変に一歩踏み込んだ“是認的”解釈をした。いっぽう毎日は、「書類送検」記事の常道にとらわれすぎて、表面的で、お茶を濁したような、煮え切らない印象を与える。常道は正道ならずである。

 

 ネット上にわたしの「書類送検」を報じた記事はもう一つ、日経のものがあった。これは翌日の12月14日付である。

 

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 「放射線を予防」と無認可薬を広告 会社など容疑で書類送検

 2012/11/14 12:53

 「放射線から身を守る予防剤」などとうたい、厚生労働省の認可を得ていない医薬品の広告をインターネットに出したとして、兵庫県警サイバー犯罪対策課などは14日までに、神奈川県の健康補助食品輸入代行会社と同社の実質的な経営者を薬事法違反の疑いで書類送検した。

 送検容疑は2011年4月~今年5月、ヨウ化カリウムを含むと表示した厚労省の認可を得ていない医薬品について、効果や効能をネット上のショッピングサイトに掲載した疑い。須磨署によると、経営者は「50~60人に計50万円ほど売った」と供述している。

 広告には「被曝(ひばく)対策にはヨウ化カリウムが定番」などと記載され、東日本大震災の被災地となった宮城県を含む10都府県から購入があった。〔共同〕

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容疑者の扱い方のプラス・マイナスで言うと、針はややプラスに振れている印象である。「・・・などとうたい」は1回であるので、ここはゼロ扱いと見よう。「東日本大震災の被災地となった宮城県を含む10都府県から購入があった。」が最後にあるので、ここはプラス扱いと見ようか。

 あえて独断的に今まで使ってきた容疑者に対する視線のプラス・マイナスの尺度で比べてみて、3つの記事のうちサンケイをプラス3とすると、毎日はマイナス1、日経はプラス1というおおざっぱな印象である。誰が見てもはっきりとあからさまに批判的、弾劾的な扱いをしている記事(マイナス2、3、4相当)は見つからなかった。ということは、もちろん我田引水の解釈ではあるが、平均するとプラス扱いとも取れる。日経はこの事件の特殊性に気づき、サンケイ同様被災地からの購入もあったことを最後に入れている。毎日が気づかなかったとは思えないが、うまく記事にまとめるのが面倒くさかったのか、マイナス扱いで済ませている。しかし、それならもっと”悪徳業者”にしないと記事にならないだろう。けっきょく、決定的な材料がないまま中途半端な扱いに終わっている。日経あたりがふつうかもしれない。サンケイはむしろできすぎかもしれない。毎日はやや手抜きである。

もっとも上記の3つの記事ですら、断罪に値する社会の敵の摘発という印象を十分に与えるかもしれない。つまり読者のあいだに「けしからん」、「ふざけた野郎だ」、「許せん」 といった反射的反応を喚起することは大いにありうるだろう。じっさい 「書類送検」 というだけでもう自動的に“社会の敵”という先入観で判断するひとは少なくない。“社会の敵” が捕まって牢屋に入るなりの罰を受けたものと人々は思っている。

しかし、日本では書類送検されるケースの約半数はさまざまな理由で不起訴処分になっている。ところが、書類送検は報道されるが、それが不起訴処分になったという続報がすべて報じられるわけではない。テレビで報じられるような大きな事件の書類送検の場合は、その後の起訴・不起訴の報道は当然あるだろう。わたしのケースのような、それこそ砂粒レベルの書類送検の、その後の起訴・不起訴を見届けるほどマスコミもヒマではないだろう。であるから、わたしの書類送検の報道も“社会の敵”が捕まって処罰を受けたんだろうというふうに受け取られているはずである。

 しかし、である。わたしのケースは上記の「書類送検」の報道の1カ月と1週間後の12月20日に不起訴処分になった。もちろんその報道はない。「書類送検」 されるにはされたが、わたしの場合、けっきょく不起訴が確定し、このわたしには何の処罰もない。罰金もない。もちろん犯罪記録も残らない。無罪とは言わないが、“有罪ではない” ことは確実である。警察がこのわたしを起訴して有罪にするためにさんざん積み上げた厚さ30センチ近くの書類の山を、検察が有罪・無罪の手前で取り下げたということである。

 この不起訴処分の経緯は以下の別ページにまとめた。

 検察庁出頭 および意外な結末


検察庁出頭 および意外な結末

2012-10-26 16:59:33 | 事実経過

 検察庁出頭 および意外な結末

知らされていなかった書類送検

 2012年11月13日 

書類送検される。

 わたしには何の連絡もなかったので、わたしは知らずにいた。以下の記事をわたしはちょうど1ヶ月後の12月13日に、気になってネット上で検索して初めて目にした。

 書類送検の報道記事については別ページを立てたので参照されたい    書類送検とその報道

 

兵庫および横浜地方検察庁から電話連絡

 2012年11月16日 

兵庫地方検察庁から電話。

 「兵庫県警から書類が来ている。夫婦両名に出頭してほしいが、所轄の横浜地方検察庁でもよい。12月中に横浜地方検察庁から出頭要請がある」という内容。

  

2012年12月 6日 

横浜地方検察庁から電話。

 12月 10日に出頭するように要請される。了承する。守衛に○○検事に呼ばれた旨伝えるようにとの指示。

 

 

横浜地方検察庁に夫婦で出頭

 2012年12月10日 

約束の朝10:00に横浜地方検察庁に夫婦で出頭。

 案内に従い、待合室で待たされる。指示に従い、まず夫の私から検事の部屋に通される。次に妻、そして最後に二人一緒に。

 

警察の取り調べ室とは違い、広くゆったりしていて、格子のない窓も大きく、デスクも大きく、まるで校長室のようであった。デスクの向こうにはネクタイをした大柄の三十代後半の男性が座っていた。兵庫県警から回ってきた訴状関連と思われる書類がデスクの上にどんと積んであった。厚さ30センチ近くはあったと思う。

 あいさつと互いの自己紹介のあと、指示にしたがって着席する。

「いちおうこの書類は見ましたが、起訴事実に関しては認めているわけですね」

 「はい、事実関係については認めています」

「何かあなたのほうから言いたいことはありますか」

 最初からいきなり弁明の機会を与えられるとは思っていなかったが、できるだけこの機会を有効に使おうと思った。

「はい、わたしが今度の件で問題になっているヨウ化カリウムの取り扱いを始めたのは、もう1年半以上になるあの2011年の3.11の東日本大震災のときの福島原発事故の直後でした。当時放射能についての情報は新聞でもテレビでも信頼性がとぼしく不安を感じている人がたくさんいたと思います。わたし自身は神奈川県に住んでいますが、それでも心配でしたし、まして福島県や東北の人々の不安や恐怖は大変なものだったと思います。今でこそパニックは収束したかに見えますが、当時は原発事故の原子力災害がどの程度の規模なのか、チェルノブイリ程度なのかそれを上回るものなのかもわからない不安な時期だったと思います。

わたしは当時海外のサイトや放送を通じて日本の状況を把握していました。日本のマスコミはまるで報道管制が敷かれているように真実を隠蔽していました。福島原発の最初の水素爆発の映像は日本ではすぐには報道されていませんでしたが、わたしはBBCのニュースでいち早く知っていました。福島からの放射能の地球規模の拡散についてインターネット上の海外の情報ではすでに懸念が広がっていました。その中で放射能対策、被ばく予防対策の情報を集めたサイトを目にし、そこでヨウ化カリウムというものがあることを知りました。わたし自身20年以上もサプリメントを扱っていながら、このヨウ化カリウムのことは恥ずかしながら知らずにいました。

このヨウ化カリウムについてさらに調べると、世界保健機構(WHO)が原子力災害時にはこのヨウ化カリウムの摂取を勧告していることがわかりました。1999年にその改訂版が出ています。ちょっと、いいですか、資料を持ってきていますので・・・」   そう言って、わたしは持ってきたかばんの中から用意してきたコピー資料、ネット情報のプリントアウトを入れたフォルダを取り出した。

「こちらがそのWHOの勧告の原文の英語版で、こちらはその日本語版です。こっちはFDAが出した同じく核災害時におけるヨウ化カリウム摂取を推奨する声明です。」

「ほう」   と言って、検事はわたしが差し出した資料を手にして目を通してながら、

「1999年っていうと、東海村臨界事故の頃かな」  と言った。

「そうですね、ただこのWHOの勧告は、改訂が1999年であって、第1版はチェルノブイリの直後だったと思います」

「ああ、そうか」

「わたしはサプリメントの輸入が仕事ですが、このWHOやFDA、つまりアメリカ食品医薬品局が勧告、推奨しているヨウ化カリウムを日本で必要としている人に提供しようと思ったのです。えーと、これがその実物です」  と言って、わたしは用意していたアメリカ製のヨウ化カリウムのボトル1本をかばんから取り出した。

「どうぞ、ごらんください」  そう言って検事に差し出すと、検事はためらうことなく手を伸ばした。

「ほう・・・、これはまだ在庫があるんですか」

「あともう1,2本でしょうか。ちなみにこれはこうして持っているぶんには違法なものではありませんので・・・」

「これはサプリメントですか」  と訊きながら、ラベルを詳しく見ている。

 「はい、そうです、サプリメントです。そこのラベルに横文字でサプリメントと書いてあります」

 「日本には同じようなものはないんですか」 

「あの頃は、わたしのサプリメント取り扱いの経験からして日本では簡単に手に入らないものだと判断しており、それを確かめようとも思いませんでした。たいていのサプリメント類は海外の輸入品の方が安いですし、わたしの仕事じたいがそうした安い海外のサプリメントの輸入でしたから、日本製のことは最初から頭にありませんでした。あとで知りましたが、じっさい、日本では医薬品扱いで一般のひとには手には入れにくいものです」

 「なるほど・・・  で、いつ頃輸入したんですか」

 「2011年の3月の末には輸入していました」

 「3月中ですか、早いですね」

 「はい、できるだけ早く必要としている人に届けたいという一心でした」

 「どのくらい輸入しましたか」

 「はっきりした数字では言えないのですが、数にして100本くらいでしょうか、200はいっていないと思います。すみません、その数についてのデータをまとめたのですが、今日持ってくるのを忘れてしまって・・・」

 「100本というのは・・・」

 「あ、タブレットの入ったボトルの数です」

 「なるほど」

 「実は輸入と言っても、わたしのサプリメント輸入業は、輸入代行でして、品物の送付先は原則としてお客様の住所です。品物は直接お客様の住所に届くのが原則です。しかし、当時は原子力災害の起きた非常時で緊急性があったために、少しでも早く供給できるようにとわたしの自宅ににも取り寄せ、注文に応えるつもりでした。ですから、お客様の自宅に発送される分とこちらの仕入れ分との2通りのかたちで輸入しました」

 「税関で止められていますね」

 「そうです。わたし宛ての仕入れ分が止まりました。数量が多かったためだと思います。税関からハガキで通知が来ました」

 「何て言ってきたんですか」

 「医薬品であるために輸入できない、ということでした」

 「それで、どうしましたか」

 「税関に電話をすると厚労省の薬事課の電話を教えられ、そちらに電話をしました。しかし、しゃくし定規に医薬品なのでダメだというばかりでした。原子力災害時の被ばく予防のための緊急物資なので、認めてほしいと頼みましたが、聞き入れてもらえませんでした」

 「そうですか、厚労省は輸入を認めなかったということですね」

 「そうです。ただ、税関というところも案外おおざっぱなところで、何箱か輸入したうちの一部はわたしの自宅に届いていました。一部がひっかかったということなんです。ですから、そのひっかからなかった分はお客様の方に回すことができました」

 「なるほど」 

「当時、震災後、原発事故後にインターネットにはいろいろな情報が飛び交っていました。ただのデマも多くありましたが、ちゃんとした出どころの情報もありました。その中で福島原発の近くの町がヨウ素剤の備蓄を自主的に町民に配布したところ、政府によって回収を命じられたうえ厳重な叱責を受けたというニュースがありました」

「それはどうして回収されたんですか」

「いろいろな理由があるようですが、まず、政府の指示を待たずに勝手に配布したということがあります」

「どうして配布してはいけないんですか」

「それについては、パニックになることを政府が恐れたという説がありますが、私もその通りだと思っています」

「どうしてパニックになるんですか」

「まず、当時すべての県にヨウ素剤の備蓄があったわけではありませんでした。ヨウ素剤の備蓄は原発のある県にしかなかったのです。ところが、福島原発事故の放射能の拡散は県境を越えています。県境どころか国境まで越えて世界中に広がる規模でした。そうなると、福島県のひとたちにヨウ素剤を配布しても、福島県のとなりの原発もなければヨウ素剤の備蓄もない県の人たちには配布できないことになります。こうなるとヨウ素剤をめぐってパニックが起こる可能性が出てきます。かりに日本のすべての県にヨウ素剤があったとしても、それをすべての国民に配布し始めたら、どうなるでしょうか。放射能の不安、恐怖が却って増大する可能性すらあります。そうしたパニックが起きると必ず批判は政府に向けられます。だから政府はヨウ素剤を配布したがらなかったのです」

「ふーむ、まあ、それも一つの解釈ですね」

「そうですね。ただ、当時アメリカ大使館では日本在住のアメリカ人に対して独自にヨウ素剤の配布をしていました。これはニュースでちゃんと報道されています。さらにフランスやイギリスも同様に自国民を放射能災害から守るために日本のそれぞれの大使館でヨウ素剤を日本在住の自国民に配布しているのです。スウェーデン大使館もそうしています。いっぽう日本政府は自国民を守るために何をしていたのですか。町民が自主的に配布したヨウ素剤の回収を命じていたんです。こうしたヨウ素剤をめぐる日本政府の消極的な対応は海外でも批判されています。その一端がこのニュース記事です。これはウォールストリートジャーナル紙の記事です」   そう言って、わたしはデスクの上に出していた資料の中から当の記事のプリントアウトを取り出した。すると検事は、

「それ、コピーさせてもらってもいいですか」   と言って体を乗り出して資料を手にした。

「ええ、どうぞ、かまいません」

すると、検事はそれまでずっと脇にいた助手に合図した。助手は立ち上がって私の横に来たので、わたしは資料をまとめて彼に手渡した。いろいろな資料を用意してきて本当によかったと思った。 

「ヨウ素には有機ヨウ素と放射性ヨウ素の2つがあります。ワカメや昆布といった海藻類が多く含むのは有機ヨウ素で、微量ながらも人体には必要な栄養素です。いっぽう放射性ヨウ素は人体には害があるばかりのやっかいものです。そして人体の甲状腺には有機ヨウ素も放射性ヨウ素も蓄積します。ヨウ化カリウムはこの有機ヨウ素を人体に吸収しやすくしたものです。そこで原子力災害が起きてまっさきに広がる放射性ヨウ素をかぶる前に、このヨウ化カリウムを飲んで甲状腺を人体に安全な有機ヨウ素で飽和してしまうのです。そうすると、あとから来た放射性ヨウ素はたとえ人体内に入っても甲状腺に蓄積することなく排出されます。

 さっきのウォールストリートジャーナルの記事にも出ていますが、ヨウ化カリウムというものは原子力災害時にはまっさきに摂取すべき放射線防護剤です。もちろん放射線には放射性ヨウ素以外にも、プルトニウム、ウラン、セシウム、コバルトなどといろいろあります。ヨウ化カリウムはそのうちの放射性ヨウ素に対してのみ防護作用があります。たしかにヨウ化カリウムは決して万能ではありません。しかし原子力災害時には不可欠なものです。恐ろしい放射能被ばくに対して一般人が対処できる唯一の備えです。ヨウ化カリウムが放射性ヨウ素に対して防護効果があることは原子力災害医療の常識になっています。チェルノブイリ原発事故の直後にポーランド政府は自国の子供たちにすぐさまヨウ化カリウムを摂取させました。その数、1千万人です。そのおかげでポーランドの子供たちには甲状腺障害がほとんど出なかったのです。いっぽう当時のソ連ではそのような措置がなされませんでした。そのため後々まで甲状腺障害で苦しむ人々が存在しています。なお、先ほどのウォールストリートジャーナルの記事にもありますが、1千万人の子供たちの中にヨウ化カリウムの服用による目立った副作用もほとんどなかったのです。

 じっさいわたしが扱ったヨウ化カリウムでも健康被害があったようには警察からは何も聞いていません。このことは今回のケースでもわたしにとって腑に落ちない点ですが、わたしの扱ったヨウ化カリウムで一人でも被害者が出たり、被害事実があったのなら、警察が出てくるのも理解できないことではありません。しかし、何の被害事実もないのに兵庫県から7人もの捜査員が家宅捜査令状をふりかざして朝の6時に乗り込んでくるというのは今でも理解できません。それも『効果効能をうたった』という嫌疑です。もしそうなら、風邪にはビタミンCが効きます、と言ってビタミンCを宣伝したら刑事さんが7人飛んできますか。いくら薬事法上の違反行為であっても、実害がなければ、まず所轄の保健所をとおして注意・指導があるのがふつうの順序ではないでしょうか。そして“報告書”といって、いわゆる“反省文”を書かせ、同じ違反を繰り返させないように約束させるものです。それでもその約束を無視して同じ違反を繰り返すようなことがあれば、さらに厳重な注意が、それでもなおも改めず、さらに悪質に違反を続けるばあいは警察が出てくることになると思います。ところが、今回のわたしのケースでは、何らの注意、警告もなく、いきなり7人の捜査官が乗り込んできたのです。

 警察がこのわたしを当時の放射能に対する社会不安に乗じて荒稼ぎをしようとした悪徳業者に仕立て上げようとしているのはわかっています。たしかにわたしがヨウ化カリウムを輸入したのはビジネスです。あくまでも商売です。しかしわたしはそのヨウ化カリウムに法外な値段をつけてぼろ儲けしたわけではありません。警察の方ではわたしがいくつぐらい売って、いくらぐらい利益を得たかはすでに調べつくしているはずですが、そんなに大きな額ではないはずです。世の中にはヨウ化カリウムを売ってぼろ儲けをしたひともいたかもしれませんが、世の中そういう人ばかりではないということをわかってもらいたいと思います」

「はい、だいたいわかりました。それではですね、こちらで今の話をまとめますので、聴きながら違っているところなどがあったら言ってください。」

こういって、検事はわたしの話をまとめたものの口述を始め、それを助手がワープロで入力していった。検事の斜め前にはパソコンのモニターがあって、こちらからは見えないが助手が入力していく文面がそのまま見えるようになっているらしかった。“今の話をまとめる”といっても自分としてはかなりの内容を話した気がするので、それを文章に起こすとなると相当な時間がかかるのではないだろうかと内心危ぶんだ。じっさい警察での取り調べのわたしの“豊富な経験”からすると、1時間以上は優にかかるはずである。ところが予想に反して、その“まとめ”はあっけないほど簡単なものであった。A4半分にも満たないほどのものであった。思うに、形式的なものであろう。

「わたくし、有限会社▽▽▽▽の実質的経営者、◇◇◇◇は2012年3月11日の東日本大震災、福島原発事故直後に、日本では未承認の医薬品のヨウ化カリウムをネット上に広告しました」で始まり、「当時の放射能の不安に満ちた状況下でヨウ化カリウムを必要としているひとに提供しようとしたものです」で終わる全部で20行にも満たないものであった。ここで全文を再現することはあえてしないのは、あまりに短いので、今度は再現文と原文との違いが問題になっては困るからである。文章の量が多い場合には、表現の細かい相違はさほど問題にならないが、短い場合には一言一句の違いが目立ってきてしまうからである。ちなみに、わたしはこの記事をほとんど自分の記憶から書いている。

  

警察との相違、検事の人柄か

「まとめ」ができて、助手がプリントアウトをわたしの目の前に置いた。

「読み上げたものと同じですが、念のために確認してください。問題なければ最後に署名をお願いします」   と検事が言った。文面はたしかに読み上げられた通りのもので、誤字もなかった。助手が差し出したボールペンで署名をした。そして署名のあとに印を押すように言われた。わたしはあらかじめ持ってくるように言われていた印鑑をかばんから出して押した。警察の調書では朱印の印鑑ではなく、右の人差し指の指紋を“警察御用達”の特殊な黒いスタンプ台を使わされて幾度となく押したものである。いくらか人間的な扱いに変わった気がしたのはこの捺印だけではない。 

まず、検事の人柄である。同じ法の番人ではあっても、相手を頭から犯罪者と決めつけたような態度の警察の人間と、この検事は別種の人間であるように思えた。わたしは警察での取り調べを延べ6日間も経験していたため、今回の検察庁出頭もその延長のように予想していた。部屋の雰囲気については最初にも書いたが、やはり検事の態度、話し方、つまりは人格である。わたしは自分の話を最後までちゃんと聞いてもらえただけでなく、こちらの話に関心をもってくれ、こちらの気持ちを理解してもらえて内心驚くほどであった。世界保健機構の勧告の資料等をコピーさせてくれと、向こうから言ったのである。やっとまともに話を聞いてくれる相手が見つかったという気持ちすらした。というのは1時間に1万円も払って相談に乗ってもらった弁護士でもここまでちゃんと話を聞いてはくれなかったのである。その弁護士は再び相談してもらおうとメールで連絡しても無視し、何度か目にはあいまいな受け答えをしたままそれっきりナシのつぶてである。わたしはその弁護士に見捨てられ、たったひとりで闘う気持ちで弁護士なしでこうして検察庁出頭まで来た。今回はもしかしたら、たまたま人間的、人格的に優れた検事に当たったのかもしれないとも思う。わたしが思うのは、ふつうの社会人であって人間的で、寛大で、立派なひとは決して希有ではないと思うのだが、検事という仕事をしていて、あそこまで寛容で親身な態度で相手に接することができるひとはなかなかいないだろう。決して特別に温かい言葉をかけてくれたわけではない。励ましてくれたわけでもない。ただ、同じ人間として少なくとも対等の立場であるかのように相手をしてくれただけでわたしには十分嬉しかったのだ。相手を見下したような態度、小馬鹿にしたような物言い、意地の悪いあげ足とりなどはまったくなかった。実はこれらはわたしが検察庁に来る前に予想していたものだった。その意味で、拍子抜けであった。ある意味でわたしは日本の司法を見なおした。こういうひとがいる限り、日本の司法も捨てたものではないと思った。わたしは今回の自分のヨウ化カリウム事件以来、日本の警察、司法に対して不信と猜疑心に固まっていたとも言える。その意味ではさわやかな肩透かしではあった。どこの世界にもまともな人間が若干はいるということを再確認した気がする。

検事はわたしの被疑事件の、積み上げて30センチ近くになる調書に少なくとも一度は目を通しているはずである。であるから、この私が延べ6日間にわたる警察での取り調べで話したこと、主張したことを、このわたしの顔を見る前に知っているのである。そのうえで当人に直接会い、当人の人となりを把握し、そして当人の口から直接話を聞くのが検事の仕事である。そして、検事であれ、誰であれ、まともな人間なら、今回のこの私のしたことがたとえ違法なことではあっても、道義的に見て決して非難されるようなことではなく、わたしの主張もいちおう筋が通っていることは調書を読めば、判断できるはずなのだ。その時点で実際の被疑者にどういった態度で接するかが自動的に決まってくるのではなかろうか。

 

 “罰金刑”という落としどころ 

わたしの取り調べは正味1時間20分に及び、それがいったん終わり、妻と入れ替わった。妻の取り調べは、わずか5分間であって、主にわたしたちの会社における妻の役割等についての確認であったそうだ。二人の個々の取り調べが終わり、しばらく待合室で待たされたあと、最後に二人一緒に同じ部屋に通された。

「そうですね、ま、今回の件はいちおう法律違反ですから、処罰ということになりますが、罰金刑というかたちにしようと思います。これを裁判所の方に送って実際にそうなるかどうかはわかりませんが、こちらではそういうかたちでと思っています。もちろん罰金刑に不服であれば裁判に持っていくこともできますが、どうですか」

「いいえ、裁判までは考えておりませんので・・・」   と苦笑しながら答えた。罰金刑と言っても額が気になったが、この検事の考える量刑なら法外なものではないだろうという漠然とした期待があった。

「それでは、裁判ではなく、略式手続というかたちになりますが・・・、略式手続は交通違反とかで経験はありませんか」  と言って、わたしと妻の目を見比べた。わたしたち夫婦はペーパードライバーなので、そういった経験は皆無である。

「いいえ、二人ともありません」   と答える。 

「それでは、こちらの用紙ですが、略式手続を承諾する意味で署名、捺印をお願いします。また、結果についてはこちらから連絡することになります」

言われた通り、署名、捺印を済ませ、手続きは終了した。わたしたち夫婦は、「いろいろとお世話になりました」   と言って頭を下げてから、部屋を出た。 

横浜地方検察庁の建物を出ると、歩道の銀杏の落ち葉が冬の日差しにまぶしかった。わたしたち夫婦は日向をたどりながら駅へと歩いた。

 

 


10日後の予想外の結末

2012-10-25 11:43:39 | 事実経過

10日後の予想外の結末

 2012年12月 20日 

横浜地方検察庁から電話。前回と同じ秘書からである。

 

「先日の件ですが、検察官の判断で不起訴処分となりましたので、お知らせします。

先日書いて頂いた略式手続の書類は必要がなくなりました。

なお、今後、薬事法に違反しないようにくれぐれもご注意ください」     という内容であった。

「わかりました。どうもありがとうございました」と言って受話器を置くと同時に嬉しさがこみ上げてきた。「不起訴処分」ということは犯罪とみなさないということだ。当然罰金刑もないことになる。家宅捜索、延べ6日間に及ぶ取り調べ、書類送検、そしてその報道、検察庁への出頭、略式手続書類の記入と、いろいろあったが、「不起訴」ということは少なくとも「有罪ではない」のだ。「無罪」とは言わないにしても、無罪、有罪の手前で取り下げたということだろう。犯罪としての記録も残らないことになる。これはまったく予想していなかった。喜ぶべき想定外である。あの検事自身、つい10日前に「罰金刑にしようと思う」と言っていたのである。おそらくその後、考えが変わったということだろう。

人間というものは考えが変わるものだ。そしてひとの考えというものは変えることができるものだ。ひとの考え方、先入観に影響を及ぼすこと、変えることは常に可能である。そして、考え方が変わると、判断、決断、選択、結果まで変わってくることがある。あの検事はコピーを取っていいかと訊いたわたしの資料に目を通したのかもしれない。そして、「このケースは起訴するに値しない」と判断したのかもしれない。参考までにその資料(勧告書、報道記事)19点のタイトル一覧(時系列順)を以下に挙げておく。

  

・  世界保健機構(WHO)原子力事故後のヨウ素剤予防服用のためのガイドライン 1999年改訂 世界保健機構

・  同上英語原文

・  米国食品医薬品局(FDA) 原子力災害における甲状腺ブロック剤としてのヨウ化カリウム 2001年 英語原文のみ

・  原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方について 平成14年 原子力安全委員会 

・  安定ヨウ素剤 高い予防効果 2011/3/16  読売新聞

・  フランス大使館 東京でヨウ素剤配布開始 2011/3/17  スポーツニッポン 

・  日本の地震:英国人 ヨウ素剤の配布を受ける 2011/3/20  BBC NWS 英語原文のみ

・  米大使館、在留国民にヨウ化カリウム剤を静かに配布 2011/3/28 ウォールストリートジャーナル日本語版

・  日本政府はヨウ化カリウムをもっと早期に配布すべきであったと認める 2011/3/21  Natural News (ナチュラルニュース)英語原文のみ 

・  原発周辺住民は「ヨウ素剤飲むべきだった」識者が指摘 2011/8/27  朝日新聞

・  震災直後、日本の行政組織はヨウ素剤を配布しなかった 2011/9/29  ウォールストリートジャーナル日本語版

・  ヨウ素剤配布 国指示前に避難拡大 いわき、三春 独自決断 2011/10/22  福島民報 

・  原発事故、ヨウ素剤服用の助言900人に届かず 2011/10/26  朝日新聞

・  使われなかった安定ヨウ素剤---原発事故直後に安全委は投与指示 2011/10/31 J-CAST テレビウォッチ 

・  甲状腺被爆、最高35ミリシーベルト いわきの子ども 2012/2/21  朝日新聞 

・  福島集団疎開裁判で分かった悲惨な現状 2012/6/19  日刊ゲンダイ

・  ヨウ素剤・配布されず 知事が権限不行使 国会事故調査報告書 2012/7/6  福島民報

・  甲状腺がんの疑い 福島県直ちに2次検査、初めて1人判定 2012/11/18  河北新報社 

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ここまでお読みいただき、心より感謝申し上げます。今回の件はいちおうこうしたかたちで”解決”したわけですが、これは警察の圧力に屈せずこちらの主張、考えを曲げずに通してきたからのように思います。そうでなかったら、ただの「社会不安に乗じた悪徳業者」として起訴されていたのではないでしょうか。少なくとも起訴はまぬかれなかったはずです。実際、このわたしを見捨てた弁護士は最初で最後だった相談で、起訴は避けられないだろうと言っていました。

起訴されなかったというだけで、すべて万事解決したというふうには思っていません。なぜ今回のような”事件”として発展したのか、その原因にはもっと根の深いものがあるように思います。

2009年にアメリカのFDAが、MMSの弾圧を開始し、日本の厚労省も指令を受けてすぐに日本の輸入業者を摘発しました。当時その輸入をしていたわたしも地元の保健所の呼びだしを受け、”注意””指導”を受け、以後取り扱いをしないことを約束させられました。これが発端であったと思います。このときにおそらく厚労省の薬事課の”ブラックリスト”に載ったのでしょう。ちなみにこのMMSはお調べになればおわかりのように、未曾有のサプリメントで、非常に単純な物質で、安全で非常に安価なものです。しかし、この一人の死人も出ていないMMSに対するネガティブキャンペーンはすさまじいものがあります。しかしそういった逆宣伝によってもMMSの流通を止めることができなかったために、FDAが大手の製薬会社の利益を守るためについに動いたと言われています。じっさいFDAの幹部のほとんどはそういった巨大な製薬会社の天下りが収まっています。MMSは日本では広まる前に芽をつまれてしまったためにあまり知られていません。

このわたしの”MMS事件”後、わたしのサプリメント輸入の仕事も大きな打撃を受けました。すべての商品説明に事細かに規制をかけられて、商品名、含有量、成分、粒数以外はほとんど何も書けない状態になりました。もともと効果効能はうたっていませんでしたが、ふつうでは効果効能とみなされないような部分も注意されてがんじがらめにされました。ネットの同じショッピングモールの他のほとんどの店では何のおとがめもない状態でした。

サプリメントではありませんが、その後アメリカ製の育毛剤を扱いました。効果効能をうたうことなく、輸入代行というかたちで扱っていましたが、今回のヨウ化カリウム事件が起きてから3ヵ月後に保健所から呼び出しがあり、取り扱いを禁止されました。まったく同じ商品がネット上では自由に流通しています。わたしとまったく同じかたちで同じ商品を扱っている業者さんたちはいくらでもいます。わたしが決してしなかった効果効能をうたうことまでしている業者さんすらいます。しかし、そういった業者さんたちはおそらくこのわたしと違ってMMSで摘発された”前科”はないということなのでしょう。

薬事法でも他の法律でも、法律というものはいろいろな目的で使われる場合があるように思えます。このわたしを呼びだす地元の保健所の職員は単に厚労省からの指令を受けて動いています。「こいつを”指導”しろ!」とくるのでしょう。あとは保健所の職員が薬事法を”厳格に”適用してとっちめるという仕組みです。その大元の指令は厚労省の薬事課でしょう。そこのコンピュータにはこのわたしのような”要注意人物”のリストがあり、常に監視の対象としているのでしょう。しかし、わたしが扱ったMMSでも、ヨウ化カリウムでも、育毛剤でも、被害者、被害事実は一つとしてありません。ほんのわずかな被害事実すらも突き付けられてはいません。わたしは誰にも被害をあたえていないのです。保健所でも、警察でも彼らは何一つ被害事実の指摘はできないのです。

兵庫県警が家宅捜索令状をふりかざして乗り込んできたときに、わたしは自分の扱ったヨウ化カリウムで被害を受けた人がいるのかどうかおそるおそる訊きました。すると相手の刑事は「そのことはあんたには言えん!」と言いました。そして、ちょっとしてからこう付け加えました。「被害が出てからじゃ困るだろう!被害が出ないようにこうしてやっているんじゃないか!」と言いました。この取ってつけたような追加の回答はその時点でやはり被害事実が存在しないことを告白しています。それと同時に捜査員7人が兵庫県から神奈川県まではるばるやってきたのが、被害事実が存在しないヨウ化カリウムという放射線防護剤を輸入した男を立件するためであることを物語っています。これらの7人の捜査員もけっきょく保健所の職員と同じです。薬事課の職員の指令で動いているのです。その職員はおそらくパソコンの前で次の手を考えながら、わたしのこの文章をせせら笑いながら読んでいることでしょう。


“助けない”日本人

2012-10-24 11:47:03 | 事実経過

“助けない”日本人

とにかくわたしはあの7人の刑事たちを最終的には打ち負かすことができたと思っている。それも自分一人の力で。彼らはあれだけの人数でわたしに襲いかかったが、けっきょく起訴には持ち込めなかったのである。時間はかかったものの何とかわたしは権力の魔手を撥ね返せたと自負している。黙って言いなりになっていたら、間違いなく “社会不安に乗じて荒稼ぎをしようとした悪徳業者” として起訴されていたはずである。

勝ち目が無い、あまり金にならないケースと思ってか、弁護士は背を向けた。必死だったわたしが再度メールしてもナシのつぶてだった。わたしを見捨てた弁護士にはわたしが自力で勝ち取ったこの 「不起訴処分」 という結末は知らせていない。起訴されたものと思っていることだろう。

 

友人の説教

親しい友人も背を向けた。 「自分勝手なことをして法律を破って、大事な家族に迷惑をかけたわけでしょ」 と、このわたしに説教をするだけであった。わたしがヨウ素剤の意味、東日本大震災の核災害時におけるヨウ化カリウムの重要性について説明しても、まったく耳をかさなかった。

核災害直後に実際にこのわたしがネット販売したヨウ素剤を求めて購入した福島県をはじめとする東北の人々がいたのは事実である。そのことを言っても、「要するに、法律違反でしょ」 と言うだけであった。市会議員をしている別の友人にもメールで事情を話して相談に乗ってもらおうとしたが、ぬらりくらりと逃げられてしまった。

どうやら、お上(かみ)に盾突く人間に与(くみ)するのは得策ではない、とふつうの日本人は本能的に思うようである。自分が友人として応援や関与をしないことを正当化するためにこそ、その当事者の非を責めるのではなかろうか。自分が悪いんだろ、ということのようだ。

そもそも法律的には “違法” であることはわたしも認めているのである。広島・長崎の原爆投下以来の最大規模の核災害の直後という緊急時に、政府が備蓄の配布を渋っていたヨウ素剤を、わたしが “勝手に ”自由に購入できるようにネット販売したことを単に “法律違反” で片づけるかどうかという問題であるはずだ。

偽善に聞こえることを恐れずに言えば、わたしは “人助け” のために “法律違反” をしたと思っている。実際わたしは自分の販売するヨウ素剤が誰かの助けになってくれればいいと思っていた。それが “犯行” の動機である。

わたしはその友人に次のようなたとえを挙げて話をした。「道を歩いていたら、ある建物から火が出て燃えだしているのを目にしたとしよう。周りには誰もいないとしよう。そのとき、フェンスを乗り越えて敷地に入って火を消したとしよう。この人間の行動は法律違反である。住居不法侵入である。この人間を起訴することは可能であるけれど、あなたはどう思うか?」 このたとえに対してその友人はぴしゃりとこう言った。「火事の場合は人が死ぬかもしれないが、あなたの場合はそうではない。」 と。

わたしはそこまで言う友人の無理解に絶望的な気持ちになった。広島、長崎に次ぐ3度目の核災害の発生数日後の段階であった。被害の実態もつかめない状況で、ひとが死ぬ可能性が無かったと言えるであろうか?たとえ死ななくても、放射線障害に苦しむひとが出てくる可能性は十分にあったと言えないであろうか。しかし、わたしはあえて反論もしなかった。友人と思っていた人間が目の前にいても、すでに背を向けている悲しい事実に打ちのめされていた。

彼の言いたいことはつまり、「あなたのしたことは人助けでもなんでもなくて、ただの法律違反ですよ。それもしなくてもいいことをわざわざして家族にも迷惑をかけた馬鹿な行為ですよ。」 ということであろう。わたしのした行為を “偽善” とすら思っていたかもしれない。

道義的に正しいかどうかというむずかしい問題を、単に法律的問題に限定して 「要するに、法律違反でしょ」 と言い、わたしの行為は “自業自得” ということにされたのである。

 

家族の白い目

恥ずかしながら、家族ですらわたしに背を向けた。妻は7人の刑事の襲撃直後から体調を崩し、めっきり老けこんでしまった。そればかりか、このわたしとあまり口をきかなくなってしまった。わたしのせいで警察が来たという理解である。それでわたしに対して恨みを持っているのであった。しかし、その妻は、あの3.11の核災害時にこのわたしがヨウ素剤を必要としているひとのために輸入しようと持ちかけた時には賛成していたのである。

娘は母親に吹き込まれてわたしを警察の厄介になった犯罪者というふうに見るようになった。自分勝手なことをして家族に迷惑をかけている無責任な父親というふうにわたしを見て、以来わたしと距離を持とうとしている。しかし、わたしが不起訴になって少し態度が軟化した。

近所の家々にも「あそこの家には警察が来ていた」 という話が伝わった。警察の襲撃の数日後にも娘は近所のひとに路上であいさつがてらに 「何かあったの?」 と訊かれたりした。娘はなにも言えずに帰って来た。

たとえ最終的に警察の襲撃を撥ね返したとは言え、警察は相当の被害、ダメージをこちらに与えている。実質的にはほとんど “罰” を下したようなものである。世の中のふつうの人間の警察観は幼稚園のこどもと変わらない。「警察はいつでも正義の味方で、悪い人をつかまえる」 という幼児レベルの理解にとどまっている人はけっこう多い。

面白いことに、警察を “信じている” ひとは、医者も “信じている” 傾向がある。お医者さんは病気を治す、という素朴な、ほとんど牧歌的な観念を抱いている人は世の中に多い。わたしは、多くの医者は、病気を治すフリをしながら背後の製薬会社と結託して金を儲けている種族であると思っている。 警察は、正義のために働いているフリをしながら、実際は背後の巨悪の手先になって動いていることがよくあると思っている。