Rising斬 the侍銃士

音楽のこと、時代小説、映画を中心にしていくと思います。タイトルは自分のHNの由来になったゲームから

映画「男たちの大和/YAMATO」

2006-06-05 00:22:19 | 映画

「男たちの大和/YAMATO」はいい意味で、「良くぞ我慢した!」と自分を誉めたかった映画だった。
始まってから20分くらい、オープニングにもならないうちに2回ピンチになり、前半観ただけで「これはヤバイ、帰ろう。しっかり気合を入れなおしてから観なければ」と思ったがそれもできず。映画館のそこらじゅうですすり泣きが聞こえるのも誘発を促していた。

題名からわかるように、映画「男たちの大和/YAMATO」は太平洋戦争で日本海軍の切り札とされた戦艦大和の乗組員とその周囲の人々の物語。
時は現代、漁師の神尾は戦艦大和の乗組員だったらしいが、その思い出を全く語ろうとしない。そんな神尾の前に、大和沈没からちょうど60年目の日、大和が沈んだ場所に行きたいという女性が現れる。その女性・内田真理子は、当時神尾が憧れていた内田二等兵曹の娘だった。ここから封印していた神尾の大和での体験が明かされていく(ちなみにここまでで泣き所2回)。
観たのはとっくの昔だが、どう書くか悩んだりでいるうちにこんなにかかってしまった。

最近、映画は内容云々やメッセージそのものより、スタッフ・出演者のその映画を作るにあたっての気合の入り方が重要になってきた気がする。
ここ何年間かハリウッド映画では物足りなく、制作費がけた違いに少ないはずの邦画や香港映画ではなぜか満足できているのもこの差にあるのかなあ、と。
実際パンフレットによれば、この映画が何を言わんとしているかは敢えて分からないようにしているらしい気がしたが、何を言いたいか分からなくても、何かを強烈に訴えてはいたのは分かる。

そりゃあ、ツッコミどころは探せば見つけれる。
堂々たるオープニングも使っているCGはチープだったし。
中村獅童演じる内田二等兵曹・反町隆史演じる森脇二等兵曹はとにかく目立っていたけど、鈴木京香演じる真理子さんが持つ写真に両二等兵曹と一緒に写っていた唐木二等兵曹がかなり影薄かったり。
はじめ俺はその唐木二等兵曹の役が長島一茂かと思っていたのに、一茂は臼淵大尉で、唐木役は山田純大だった。まあ言われてみると、「ああ、この人か、それで3人でいる場面があったのか」と思うことはできたが、かなり影は薄かった。
そういや、神尾が仲間をかばって罰せられた時、仲間から「英雄気取りするな。本人が責任を取るかみんなで責任を取るかじゃ」といったのが気に入り、見た後しばらくは「俺は責任を取らないのでみんなで責任を取りましょう」とか言っていたこともあった。
しかし、多少の欠点に気づかれようとも、見る人を羽交い絞めにして良いと言うまで離さない迫力が感じられる映画だ。

恋人や親が泣いて止めるのを「みんなを守るため」とかいろいろな言い訳をして戦場におもむく若者たち。
映画を見ながら、一途に無駄死にを選び、大事な人を守るためと言いながら結局その人さえ犠牲にし、悲しませている彼らが可愛そうで可愛そうで歯痒くて仕方がなかった。
影山ヒロノブや高崎晃がいたLAZYってバンドの「僕らの国でも」って歌で「その時手を上げて 銃を持ちたいのか 髪を切り恋人と別れ 君たちは走れるのか」という歌詞があったが、実際その状況になったらやる理由を考える余裕はあってもやるかやらないかを考える余裕はなさそうだ。
よく、自分が同じ境遇にいたらどうするかって話になるけど、これじゃどうしようもない。みんなが間違った選択をしているのはわかるが自分なら違う選択ができるとは思えない。あえて考えるなら、普段からイヤな奴として生きていれば、こういう時悲しむ人が少なくて楽だろうか。
もっといい人生を送れたはずの人たちが、限られた生き方しかできなかった時代。「本人が納得していればそれでいい」という考え方もあるけど、本人が納得したって周りは納得できない。信念に殉ずるのは素晴らしいのかもしれないが、どうしてもカッコいいと言うわけにいかない。
そうやって考えてみると自分が今、当時よりよっぽど自由な時代に生きていられるということは、実はものすごく運がいい事なのかな?自殺したいくらいつらい人生を送る人は今の世の中にもいるけど、でも自殺っていうのもある意味ではこの時代だけに提供された一つの選択肢、て考えることもできるんじゃないかな?とかそんなことを思わせられた。

こういう映画には100年くらいは残って欲しい。100年経って戦争などありえない世の中になっていたとしても、生きることに悩んでいる人にとっては役に立てる映画だと思う。
自分の命を間違ったことに使わざるを得なかった人や、せっかく持っていたものも手放さなくてはならなかった人がいたことを思うと、自分の命をもっとましなことに使いたくなってくるし、限られた時間をもっと大事にしたくなるんじゃないだろうか。

DVD、買うつもりだけど、誰かといっしょには観れないね。泣くの見られるの恥ずかしいし。


5 コメント

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私もこの映画見ました。Blogを読んで自分とは違う... (seira.D)
2006-06-30 01:51:21
私もこの映画見ました。Blogを読んで自分とは違う感性を知り勉強になりました。
Lazyとは懐かしいですね。(笑)
TBさせていただきます。よろしくお願いします。
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コメント、トラバありがとうございます。 (斬theザーン)
2006-07-02 01:16:48
コメント、トラバありがとうございます。
違う感性ですか?
まあ、単純に反戦の話だと、戦争がない世の中になったら必要ない映画になりそうで、そうならないようにあえて反戦色はなくして書いては見ましたが。
個人的にすごくお気に入りだったので、戦争物に興味ない人にも見て欲しいです。
ちなみにレイジー関係、結構好きです。うちのギターはアニキにもらったKILLERですし。

そちらの記事、フラッシュもすごいですね。
自分も戦争はひどいもんだとは思ったしもちろん反対だけど、それを言うにはもっと説得力を持たないとな、と思いました。
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うん、感性が違う。それは当たりだよ。私はあなた... (seira.D)
2006-07-02 06:48:42
うん、感性が違う。それは当たりだよ。私はあなたではないもの。個性が違うし、生きてきた年齢もちがうから。それって当然。
そういう意味。自分とは違う感性を知るのは大切なことだよ。(勘違いしないようにね。)
それから戦争はなくならない。絶対に。
戦争のない人間の歴史は今まで存在しないから。その点はよくご存知でしょう?
悲しいかな、争うことは人間の本質の一つなのよ。
あまり反戦色が強いとね、思想的に何かあると思われるものいやだし、私の場合もっと長くなったからカット、カットで紋切り型の文章になっちゃったんだよね。(爆)
それに、つらつら書くよりフラッシュでも見せちゃったほうがインパクトあるでしょう?
それこそそれを見て各々がどう思うかが大切なんだし。ほら、皆それぞれ感性が違うんだら。(笑)
日本の歴史も研究者が違えば見解も違うし、それを読んで読者がどう考えるかという方が面白いよ。
戦争の悲惨さを知りたければイラク戦争についてネットで調べれば今一番鮮烈な戦争の悲惨な情景を見ることが出来るよね。
後はアフリカの内戦があった頃のリベリアとか。小学生の年齢の少年が兵士として薬物でラリった状態で最前線で戦わされた。自動小銃かついで。しかも拉致同然で兵士として軍隊につれてこられて暴力で支配されて訓練される。
その後遺症はいまでもリベリアの大きな社会問題になっている。女の子はレイプでPTSDを抱えている子が多い。こんな事例はまだまだ世界にはたくさんあるよ。ベトナムやら朝鮮戦争だって、日本軍が戦った中国戦線だって皆悲惨だった。
Europe戦線も同じ。今の南米は経済が破綻状態で内紛が絶えな国が多いしね。
だからあえて戦争について書かないんだ。私がうるさいから。(爆)
興味があれば人は黙っててもそれを追求するよ。そういうもんだしさ。あの程度で十分かなと思う。うん。
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ごめんなさい~。 (seira.D)
2006-07-02 07:30:02
ごめんなさい~。
ちょっと気が付いて訂正します。本当におきぬけ寝ぼけ頭でカキコしてたんでごめんね。

映画はもともと大和の数少ない乗組員を探してインタヴューをしたドキュメンタリーが原作なんですよね。あの時間では彼らの思いは表現できないと思いました。
結局あれは反戦映画ではないものね。
ただ、私としては戦争に行って犠牲となった方々には尊敬の思いをもっていただけるといいなぁと思っています。
あの戦争の意味がどうあれ、国のために、家族のために死地に赴いた方々には敬意を表します。靖国問題がニュースでも流れますけれど、日本は負けたので外国から内政干渉されてますが(そうとしか思えない)国のために戦った方々は尊敬しないと国の基盤が揺らぐと思います。ベトナム戦争の帰還兵の事例がこれを物語っています。中国や朝鮮半島の国々の歴史捏造プロパガンダも凄いものがあるしね。
そのあたりも私たち日本人がきちんと調査した史実を元にした歴史認識を持たないといけないと思ってるんですよ。
日本人はなかなか素敵な民族ですよ。(笑)
そうでなければ台湾人があんなに親日のはずないですから。
いけなーい!また長くなっちゃった。
これだからな~。。。この手の話は。。(苦笑)本当にながながとごめんなさいね。
私、勘違いしてて、コメント読んじゃったの。
ゆるされて~。
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どうやら誤解が解けたみたいでよかったです。 (斬theザーン)
2006-07-03 00:31:46
どうやら誤解が解けたみたいでよかったです。

まあでもホント、こういう映画だと、やっぱり戦争についての話題にはなりますよね。そういうのは他に考えるときも少ないし、いい機会でした。
この映画を通しても、未来のために全てをなげうってくれた方々がいることを教えてもらえたのだから、やっぱり彼らに見られて恥ずかしい生き方はしたくないと思います。
「男たちの大和」の最後でアツシ君が見せた行動もそういうメッセージなんでしょうね。
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