
母が亡くなる10年ほど前から
口癖のように言った言葉があります。
それまで兄一家や妹家族とみんなで年に一度
決まりごとのように信州に旅したものです。
もう父は亡くなっていて 年に一度みんなで行く旅が母の楽しみでした。
大抵は子供たちの学校もあるので 夏休みに行くのが恒例でしたね。
私が早くから信州の山をウロウロしていたこともあり
家族が揃って信州に魅入られていました。
「今年はどこに行きたいの?」
「そうねえ 八千穂高原の白樺はもう大きくなったかしらね」と 母。
またある時は
「志賀高原の最高地点のあの枯れ木は まだ立っているかしら」
「やはりビーナスラインのニッコウキスゲの絨毯かしらね」
「ああ 乗鞍高原の遊歩道も歩いてみたいね」
何度も何度も訪れながら 飽くこともなくいそいそと答える母。
それがいつごろからか
「今年が最後になるかも知れないから 奥志賀の紅葉に行きたいね」
「もうこれで最後かも知れないから いい宿に泊まろ」 と
「最後の旅」 と言い始めたのです。
多分 何度も繰り返し受けた手術や どんどん悪くなっていく膝に
どこか不安が広がり自信も無くなっていたのでしょう。
毎年 兄が面白がって
「最後の旅が何回もあってめでたいことだ」 と笑っていましたっけ。
「お母さんは 今年が最後かもと言いながら10年は行けたよね」
妹も振り返って懐かし気に言います。
それだけ頑張ったってことなのよ、きっと・・・
遠くへ行けなくなってからは 琵琶湖でミシガンに乗り
三井寺に詣でるのがお気に入りでしたね ^-^
年月は人の心に関係なく過ぎて行き
母より先に兄が早逝し その2年後には母も後を追うように・・・
今、わたしはあなたが好きだったミシガンの浮かぶ
琵琶湖の畔に住んでいますよ。
不思議なご縁なのでしょうね。^-^
今年も 最後の旅があるとしたら どこに行きたいですか ?