僕の細道

【となりの山劇】第5話

ああ名古屋、の巻 その5

※注意
以下はJRタワービル建設以前に書いた文章です。文中には現在とは事情が違う表記がありますが、修正するのがめんどくさいので原文のまま掲載します。細かな事を気にしてはいけません

<100メートル道路><
 名古屋市内のど真ん中には通称「100メートル道路」なる道がある。南北が「久屋大通」東西が「若宮大通」という。これを、道路の幅が100メートルあると勘違いしてはいけない。片側3車線の道路の間に巨大なグリーンベルトを設置したようなものと考えるといいだろう。その両端の幅が100メートルあるというだけの話。

 詳しくは知らないが、この道路自体は戦後における名古屋復興計画の一環という話だ。古い写真を見ると久屋大通にテレビ塔が立っていて、両端はずーっと焼け野原というような写真がある。その頃と比較すると現在はかなり復興したといえるのだが、この2本の通りが市民から親しまれているかというと、そうでもない。どちらかというとあまり大切に扱われていない。せいぜい近所の人たちや、会社の人が軽く休憩したり、時たまイベントで利用するくらいで、普段は殆ど利用されていないのではないか。
 何故かというと、きちんと公園らしく整備されていないからだという意見がある。確かにそうで、今やまともな緑が存在するのはテレビ塔の北側。南京広場からロサンゼルス広場の周辺だけである。
 テレビ塔の南側は妙に人工的な公園だし、バスターミナルや地下駐車場がある所は人が通りにくいし、しょっちゅう掘り返しているので緑が育たないし、従来若宮大通にあった緑は根こそぎ撤去され、その上に名古屋高速を作ってしまい、充分に日が当たらない。ここでは日が当たらないと同時に雨も当たらないので、ここ数年はホームレスの人たちの絶好の住み家と化していて、なおさら一般市民が近寄らない。

<大須>
 昔、大須といえば「大須観音」と「骨董市」だったが、現在では「パソコン」と「古着」と「サブカルチャー」であろう。その内容が示すように、昔と現在では客層が随分違う。
 昔から、名古屋の3大アーケードと言えば「大須」「大曽根」「円頓寺」というのが定番だったが、大曽根のアーケードは今ではすっかりと姿を変え、かつて黄金時代を築いた円頓寺も、すっかりと寂れてしまった。そういう大須だって、大昔は栄えたというが、私が物心ついた頃は既にすっかり斜陽と化していて誰も歩いていなかった。
 その大須だが、大昔の事は知らないが、昔の大須は、まさにジジババの街であった。アーケード商店街には、いかにもそれらしき誰が入るのだろうというような古い店が軒を連ね、休日になっても人出はまばらであった。なにしろ私が小学生の頃、万松寺商店街等をローラースケートで走り回っても誰ともぶつからない程空いていた。今ではとても考えられない。
 それが映画館の跡地に通称「アメ横」がオープンした。これは東京にあるアメ横とは何ら関係がない。大須にできたアメ横はいわば「電気街」で、主に家電を中心に扱っていた。アメ横のオープン当初はさすがに賑わい、それから数年後に、「第二アメ横」が完成しこれで大須は安泰かと思われたが、柳橋に「ユーテク」が出来るなどして、次第に客足が遠のいてきた。

 それから数年たって、大須商店街の中に小さなパソコンショップが出現した。最初の頃はそれほどでもなかったが、世の中がパソコンブームになると、同様の店がどんどん増殖し、アメ横を中心とする周辺は今や名古屋一のパソコン街に成長してしまった。
 一方、大須観音周辺は「コメ兵」の勢力が強く、この辺りの商店街には怪しい骨董屋や古本屋があったりして、どちらかというと「リサイクル」を中心とした文化が成長していた。それにしても、以前だとやはりジジババを対象とした店が中心だったのが。その中に突如として、若者向けの「古着屋」が参道とゲーセンの上の2ヶ所に出現したのだ。それ以来、チープを売り物とする出店が相次ぎ、いつの間にか若者からジジババに至るまで、幅広いニーズに応える古着街がここに出来上がったのである。同じ大須の中においても、大須観音付近とアメ横付近では、明らかに客層が違うのである。

 そして最近、また別の種類の店が出来つつある。一つは「フィギィア」専門の店である。この手の商品は従来プラモ屋の一角にしかなかったものだが、なぜこんな路地裏に、というような暗い場所にマニアックな店舗が出来ていて、入るのに多少勇気がいったりする。もう一つは、新しい飲食屋である。これが例えば万松寺商店街の一本違う筋の仁王門通などに出来て、こんなとこに店が出来て人が入るのかしらんと思っていたら、これが大繁盛している。ブラジル国旗がかかっている多国籍的な一角はすっかり大須になじみ、認知されているようだ。
 このように、大須の姿は刻一刻と変化を続け、店舗はどんどん裏スジに入り込み、店のある範囲がどんどん拡がってきていて、とても一日では回りきれない程になってきている。私の実家が大須から引っ越してしまったので、今では月に数回しか行かなくなってしまったが、行くたびに新しい発見がある。常に店舗が新陳代謝を繰り返している。今こそ、大須が面白い。

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