僕の細道

【となりの山劇】第22話

<電気人間だぁ~! の巻>

 イキナリだが何を隠そう私は「電気人間」である。電気人間とは言っても電気ウナギのように体内に発電機構があるわけではなく、ただ単に「静電気」をため込みやすい体質であるらしい。ホントか?

 ここまで読んで「なーんだ」と、詰まらぬ顔をする貴方は甘い。一年間を通して冬場の乾燥した季節が特にひどいのだが、会社内で仕事をしていてふいに立ち上がった時などに、そーっと何か金属部分に指を近づけていくと、

「バチッ」

かなり大胆な音と共に指先と金属の間に白い稲妻のような放電現象がはっきりと見てとれるのである。その音たるや部屋の反対側にいても聞こえるという。初めてそれを目撃した人は例外なく驚きの声を上げる事になる。

 原因は何だろうか。とりあえず考えられるのは床がカーペットで社内ではスリッパをはいているのがいけないかもしれない。それとも椅子か?。床がPタイルの時は静電気を気にした事が無いぞ。それとも空気が乾燥しているのがいけないのか?。そお言えば、事務所があるビルは空調管理をやる指定業者が定期的に調査にやって来る。その調査の都度空気が乾燥しているという指摘があったような気がする。

 しかし、それだけならば自分だけではなく全員が静電気で悩むことになる筈。でもそうならないのはやはり体質的な問題があるのだろうか。
 最初は自分でもびびったが、最近は慣れてしまってい、むしろ楽しんでいる。他の仕事中の連中の背後にそおーっと忍び寄り、ターゲットの首筋にこそっと放電してやるというたわいないイタズラをやってはひんしゅくを買っている。おかげで近ごろでは冬場になると原稿の受け渡しの時でさえも警戒されていて面白くない。

 この静電気も慣れてしまえば可愛いもので、だんだん体内の電圧が高くなってくると次第に髪の毛その他の体毛が逆立ち始め、そろそろ電圧が高いと実感できるようになった・・・というのはウソだが、長時間放電していないと「そろそろイケるのでは」という予想くらいは出来るし、実際予想通りの威力はある。

 これだけ確実に静電気が発生するならばと、秋葉原や大須等の電気街を探すとなんと静電気を蓄える装置が発売されていて、それはニッケル水素単三型電池に充電され、ウオークマン位は動かせるらしい。と言うことは同じような体質の人を多数雇えば小規模ながら電力会社ができ、発電した電力を商品に出来るのではないか・・・というのは全くのでまかせだが、今のところイタズラ以外に使用途が無いので、一利も無くて百害のみという状態になっている。

 中でも怖いのは、こんな私が社内にあるパソコンのSIMMやDIMMやHDやCPUカードなんかの交換を担当している事である。これはマジにやばい。最近では昔に比べて安くなってきたとはいえ、64MBのDIMMが20000円前後もするのである。静電気のせいで壊してしまっていたらシャレにならない。だから作業前は静電気を逃す儀式が壮大にとり行われている。

 こんな静電気と付き合ってかれこれ9年程になるが、毎年悩みつつも暖かくなると自然に無くなってしまうので、何の対策もとられないまま歳を重ねてしまっているのである。全く進歩が無い。


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