私がこの世に出てきて、早30年近くたとうとしています。
思えば、その頃は日本全体が上り調子で、物造りの技術は世界一になっていました。
“宇宙からバクテリアまで”当時のオリンパスのキャッチコピーです。
撮影できないものはない膨大なシステムを、それぞれのメーカーが揃えていました。
そんな時代の中、私を買ってくださった方は、55mmf1.2という、特殊なレンズをチョイスしたのです。それからというもの、私の持ち味はいかんなく発揮しました。
とても柔らかく写るので、女性や花にはうってつけでした。旅行や行事、撮影会の度、私は活躍しました。
その後時代はどんどんとハイテクになっていき、いつまでそんなカメラ持っているの?
と言われる始末。とうとう新しいカメラを買ってしまい、私はタンスの守り神となったのでした。
真っ暗なタンスの中、それはとてもホコリが多く、薬臭い所でした。家族の誰もが、私の存在を忘れているかのようです。15年位たってから再び日の目を見ることが出来ましたが、それは持ち主との最後の別れでした。
新しいデジタルカメラの下取りでした。
しかし幸運にもすぐに次の持ち主が現れたのです!
黴埃だらけの私を持ったとき、うをぉぉぉ!と変な声を上げていました。
1500円で引き取られた私は、オーバーホールされ新品同様に生まれ変わり、大切に保管されているので嬉しいのですが、ガラス越しの汚い部屋と、触られるときの嫌らしい手つきは、どうも頂けないと思うのです。
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