妄想と戯言2

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はじめに!を読んでください。

それはまるで、杯に浮かぶ月のように(魯粛×呂蒙)

2017-01-12 19:53:17 | 無双シリーズ




急ぐ必要はない。そう言ったはずのアナタが取ってきた行動のどれを思い返しても、その言葉を理解することなどオレには到底無理だった。それでもこうして共に歩むうち、その答えなど、とうに...





「どうした、呂蒙」

疲れたか。そこまで続いた言葉によって、ぼんやりと一点だけを見つめていた己に気づき、ハッと顔を上げた。
先ほどまでの心地良い騒音は遠くに響き、雲から覗く月明かりがぼんやりと、隣に座る男の顔を映し出す。声こそは出さないが明らかに楽しげな笑みを浮かべている。

「戻るか。それとも部屋で休むか?」
「いえ、平気です」
「そうか。だが、呑むのはこれで終いにしよう。明日の軍議に響いては話しにならんからな」
「はい...魯粛殿」

差し出された杯を受け取る。いっぱいまで注がれた酒には月が入り込み、この質素な庭園に趣を造り出す。
遠くからは男たちの笑い声が響いている。まだ続くのであろう宴は盛り下がる気配もない。
ぐいっと杯を傾ける。魯粛殿も同じようにそれを飲み干していく。おそらく互いに、抜け出したことを後悔はしないだろう。

「魯粛殿」
「ああ、なんだ?」
「...聡いアナタのことです。オレの考えなど、とうにお見通しでしょう」
「......」
「アナタが違うと言うのならば、恐らく、そうなのでしょうな」
「......」
「だが、この想いは.....ああ、いや、違うのです魯粛殿。オレはアナタを尊敬している...尊敬、しているからこそ...」

酒のせいか、伝えたいと思うことは山ほどあるというのに。だらだらと溢れる言葉は、己の意思とは真逆の意味を繋いでしまう。
俯くオレに魯粛殿の表情は分からない。ただただ静かに、オレの言葉を受け止めている。込み上げてしまったこの気持ちをどう吐き出せばよいのか。ふと、目頭が熱く動いた。

「魯粛殿、オレは...言葉遊びに興じる気など、微塵も...」

ないのです、と続けようと声を絞り出したその瞬間、杯に浮かび揺れていた月が一瞬、その姿を隠してしまった。何が起きたかなど理解できないほどに、そこに落とされたものが誰の涙か、など。
泣いてしまったことに気づいたのか、はたまた偶然のような頃合いで肩を掴まれ、顔を覗き込まれる。魯粛殿の瞳には情けない顔をした己が写りこんでいた。互いの視線が嫌でも交わるこの距離は、段々と危うい感情を呼び起こしていく。呂蒙、と先を促す低い声が鼓膜に響いた。

「...アナタは以前、答えを急ぐ必要はないと、仰いましたな」
「ああ...」
「いつ尽きるやも知れんこの時代を生きるオレたちに、その言葉は一番アナタらしくないと、あの日から常に考えておりました...」
「......」
「逃げたのはどちらでしょうな、魯粛殿」

少し、生ぬるい風が吹いた。酒によって火照った身体には居心地が悪い。
この、宴会場から離れた庭園を選んだのは魯粛殿だった。風通りが良いわけでもなく、ただ月がよく見えるから、と。
抜け出すことを提案された時には覚悟を決めていた。それはおそらく...いや、魯粛殿とて同じはずだった。逃げることで楽にはならない。かと言って、進むわけもないのだ。
じろりとその顔を見上げれば、いつもの笑みが真剣なものに変わる。そして先ほどよりも低く、唸るように、呂蒙と。

「...その先はおそらく、互いを狂わせる選択になるやもしれんのだぞ」
「フッ...今さらですな」
「...泣いたと思えば次は笑うか」
「いいえ、違うのです魯粛殿。オレたちは......最初から、終わることを恐れてさえいなければ...始まってもいないことを、恐れてさえいなければ...」

自然と、互いに手を掴み合う。

「...良いのだな、呂蒙」
「...アナタこそ」

見上げた瞳が大きく揺れる。覚悟と、後悔と、見出だしてしまった答えと。全てを今吐き出すかのように、自然と、互いの唇を引き寄せ合った。深く求めるように頭を押さえつけられる。
荒い呼吸と鋭い視線を交わしながら何度かその行為を繰り返し、ようやく離れてもなお、視線だけはまるで睨み合うかのように離れない。
いつの間にか側で転がっていた杯に、こぼれてしまったであろう酒と、あの危うい月を思い浮かべる。

「熱いな、」
「...酒のせいでしょう」
「フッ...」


そうしてまた、月夜に浮かぶ二人の影が重なった。










みたいな粛蒙がみたいなーって(笑)
お粗末さまでした!

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