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宅建試験・司法書士試験勉強会

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●司法書士試験:留置権1-留置権の意義と性質

2011-03-16 12:21:14 | Weblog
●司法書士試験
○留置権1-留置権の意義と性質

問題1 物の引渡しを求める訴訟において,被告が留置権を行使して引渡し
     を拒絶した場合,(A)債務の完済までは原告に目的物引渡請求権は
     生じないので,(B)裁判所は,引換給付の判決をすべきである。
問題1 まちがい。
(1)留置権は,留置権者の債権と相手方の目的物引渡請求権とが衝突した
   場合に,留置権者の債権確保のために,相手方の引渡請求を拒むこと
   ができる権利である。
(2)したがって,本問のように原告が物の引渡しを求める訴訟において,被
   告が留置権を主張した場合に,裁判所が引換給付判決をする理由は,
   本問のように,原告に目的物の引渡請求権が生じないからではなく,
   原告の目的物引渡請求権と被告の原告に対する債権とを合一的に解決
   をして,公平を期する趣旨からである。
(3)よって,本股はまちがいである。

問題2 留置権者は,目的物から優先弁済を受ける権利を有しない。
問題2 正しい。
(1)留置権は,物を留置することにより,債権を担保する効力を持つ担保
    物権である。
(2)ところで,留置権は他の担保物権と異なり、債権の弁済がない場合に
    その目的物から優先弁済を受けるという優先弁済権はない(民法
     295条参照)。
(3)よって,本股は正しい。
(4)但し,留置権は,債権の弁済を受けるまで目的物を留置することがで
   きるので,債務者としては,目的物の返還を受けるためには,債務を
   弁済しなければならない。

問題3 甲は乙からその所有に係る自動車の修理を請け負い,これを完成し
     たが,乙が支払期日の経過後も修理代金を支払わないので,自動車
     の占有を継続した。甲が修理代金債権を第三者に譲渡しても,その
     者に自動車の占有を移転しなければ,留置権は消滅する。
問題3 正しい。
(1)留置権は,担保物権であるから,被担保債権の移転に伴い、留置権も
    移転する。これを留置権の随伴性という。
(2)ところで,留置権は、目的物の占有が成立要件であり,占有がなけれ
    ば存続しない権利であるから、被担保債権を譲渡した場合には,目
    的物の占有も同時に移転しなければ,留置権は消滅する。
(3)そこで,本問の場合は,甲が修理代金債権を第三者に譲渡しても,そ
    の者に自動車の占有を移転しなければ,留置権は消滅する。
(4)よって,本股は正しい。

問題4 留置権が生じた後に目的物が売却された場合,(A)留置権は対世的
     な効力を有するので,(B)その目的物の占有者は,買主に対し留置権
     を行使することができる。
問題4 正しい。
(1)留置権は,物権であるから誰に対しても主張できる。
(2)したがって,留置権の目的物が第三者に転売された場合には,留置権
をその第三者に対しても行使することができる。
(3)よって,本股は正しい。
(4)なお,留置権の対抗要件は登記ではなく,目的物の占有である。

問題5 留置権は,物上代位性を有しない。
問題5 正しい。
(1)留置権は、担保物権ではあるけれども,目的物を留置するという段階
    までの担保物権であり,目的物の交換価値は把握していない。
(2)したがって,留置権には物上代位性もない。
(3)よって,本股は正しい。
(4)なお,物上代位性とは、担保物権の目的物が、売却・賃貸・滅失又は毀損
   によって形を変えたり、他の権利に変じたときに、その価値変形物、
    例えば、売買代金や賃料や損害賠償や補償金等の請求権等の上に、
     担保物権の効力を及ぼすことができるという性質である。
(5)そして,物上代位性は,留置権を除く他の担保物権は有するが,留置
   権はこの物上代位権性を有さない。

問題6 Aは債務者Bに対する貸付債権を担保するため,B所有の家屋に抵
     当権を設定した。その後,CはBとの間でその家屋について賃貸借契
     約を締結し,引渡しを受けて居住を始め,屋根の修繕費用を支出した。
     Aが抵当権を実行した場合,Cが抵当権に基づく差押えの前に屋根
     の修繕工事をしたときは,Cは買受入に対し,修繕費用の弁済を受け
     るまで家屋の引渡しを拒むことができる。
問題6 正しい。
(1)留置権が成立するためには,留置権者の債権が「留置権の目的物に関
   して生じたもの」でなければならない(民法第295条1項)。
(2)そして,本問のように,抵当権の設定されている家屋を賃借し,居住
   した賃借人が,抵当権に基づく差押えの前に屋根の修繕工事をしたと
   きは、その賃借人の修繕費用返還請求権は,その家屋に関して生じた
   債権ということができるので,賃借人には留置権が発生し,賃借人は
   抵当権実行による買受人に対してでも,修繕費用の弁済を受けるまで
   はその家屋の引渡しを拒むことができる。
(3)よって,本股は正しい。
(4)なお,もし,その屋根の修理が抵当権に基づく差押え後のものであれ
   ば,留置権は成立しない(民法第295条2項)。

問題7 建物の買主が売買代金を支払わないまま当該建物を第三者に譲渡し
     た場合,売主は,当該転得者からの建物引渡請求に対して,未払代金請
     求権をもって当該建物につき留置権を主張することができる。
問題7 正しい。
(1)留置権は,成立すれば,物権であるから誰に対しても主張できる。
(2)したがって,目的物が第三者に転売された場合には,留置権者は,
その第三者に対しても,留置権を主張することができる。
(3)よって,本股は正しい。
(4)なお,留置権の対抗要件は登記ではなく,目的物の占有である。
…………………………以上


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