ほろ酔い日記

 佐佐木幸綱のブログです

第52回・迢空賞授賞式

2018年07月02日 | 日記
第52回迢空賞授賞式は、6月29日(金)、5時から、ホテルメトロポリタンエドモンドで開催されました。
三枝君は、学生時代から親しくしている人、今度の受賞をとてもうれしく思います。よかった、よかった!
同時に行われた蛇笏賞受賞式では、有馬朗人『黙示』、友岡子郷『海の音』が受賞しました。

以下、「短歌」6月号に掲載された、小生の「選考委員選評」を引用しておきます。

今年の迢空賞は、三枝浩樹『時禱集』に決定しました。
第五歌集を刊行してから、なんと十六年ぶりの第六歌集だそうです。近年は、三,四年に一冊のペースで刊行される歌集が多い中で、長い時間的蓄積があるだけ、ずっしりと重みのある充実した歌集になっています。

  雪雲の大きな翳が占める森ひえびえとひとつひとつの木あり
  いちめんの大豆畑にしずみゆきゆうひは時をゆるやかにする 

 甲州の大きな自然を大きく表現している点が第一の魅力です。短歌では大きくうたうというのがなかなか難しい。その難しさを乗り越えての佳作が多く見られます。
広々とした自然のたたずまいが、ゆったりとしたリズムで表現されていて、甲州の雪雲や、甲州の夕日までが読める点がすばらしい。

  カウンセリングというふかふかの手編みかな春浅き手をつつみて出でぬ
  百葉箱のような人生という比喩がほんのりうかぶ そうでありたい

 作者は山梨県の高校の英語教師を長くつとめました。そんな事情で学校関係の歌が少なからずあり、そこでは、その場かぎりの出来事としてではなく、背景にある教師の人生、生徒の人生が彫り込まれている点が特色です。百葉箱という地道で地味な存在を久々に思い出しました。
 引用した作ももちろん、愛誦性のある作が多いこともこの歌集の魅力です。文句なく、今年一番の歌集と思います。


写真、選評者の位置からの写真で、横顔しか撮れませんでした。

 



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