私の他にも何度も観た方は多いかと思いますが、私はアメリカで字幕なしでも良く観ました。(17才で留学した時に流行ってた)
このトムハンクス作品は、ディカプリオ作品とは対照的なところがあり、それはシェイクスピア悲劇とチェーホフ喜劇の対象性と言っても良いかと思います。
シェイクスピア劇が出来るだけ派手な演出を求めるのに対して、チェーホフ劇は平凡で落ち着いた所に意外なドラマ性を求めます。
「フォレスト ガンプ」も正にそんな作品で、ガンプはちょっと頭が緩い発達障害の男性ですが、多くの人に勇気と希望を与えます。
物語はとある公園のバス停で、ガンプがバスを待ちながらヒマなホームレスやお婆ちゃんに「思い出話」をするところから始まります。
それは子供の頃の初恋の思い出がメインで、その初恋の人に久しぶりに会いに行く高揚感から語られます。
話は彼がベトナム戦争に徴兵されて活躍し、大統領からメダルを受けたコトなどにも及びますが、そうした大きな話はガンプにとってはつまらないコトで、それよりも戦死した黒人の友達の船を引き継いで漁師になり、戦傷で足を無くした元上官と一緒に一旗挙げたストーリーが盛り上がります。
この上官役のゲイリー-シニーズも結構シブい役者で、ジョン-マルコヴィッチと共演した「二十日鼠と人間」は、「フォレスト ガンプ」的なノリの名作です。
一方、初恋の人ジェニーは反戦運動に加わってヒッピーになり、ギターと歌で身を立てようとしますが上手く行かず、ドラッグに溺れて自殺寸前にまで追い込まれます。
そんなジェニーをガンプは救い出し、平和な家庭を築こうとしますが、ジェニーにはヒッピー仲間達がおり、いずれはまたその道に出て行ってしまいます。
捨てられたガンプはヤケになって走り出し、それはアメリカを往復し何年にも及び、彼は復員兵として特別な存在に祭り上げられます。
この「Run」のテーマソングにはジャクソン-ブラウンの歌がフィーチャーされていて、トムハンクス映画では音楽センスの良さも光っております。
しかしそんな周りからの喝采もガンプにはどうでもよく、あっさり捨て去りジェニーに呼ばれて公園のバス停まで来ます。
彼の話を聞き終えたお婆ちゃんは、ジェニーの家が公園から走って5分の所に存るコトを知らせ、ガンプはすぐに走り出します。
ジェニーの家で、ガンプは初めて自分の息子と出会い、ジェニーはガンプと再び共に生きる道を選びます。
しかし彼女はエイズで余命いくばくも無く、またすぐにガンプの元を離れて行ってしまいます...
だいぶ端折りましたが、「フォレスト ガンプ」ほど純粋な「愛」を持った男は、映画史上でも稀かと思います。
しかし彼は些か特殊な男なので、より一般的なベトナム復員兵と妻達との間の葛藤を描いた作品として、「帰郷」もお勧めしておきます。
こちらは思いっ切り「生々しい」リアリティ(発狂、不倫、自殺など)が描かれており、反戦映画としては「フォレスト ガンプ」よりもずっと重みがあります。
しかし「ガンプ」には、ふっ切れた楽天性で戦争の心の傷を癒やす努力が感じられ、戦地から戻っても人生は長く続いて行くので、アメリカではそうした努力こそが一番の重みを持つのかも知れません。