この戦乱は既に10年以上も続いており、10の支配地域と19の武装勢力による戦闘は、既に誰もコントロールはおろか、理解するコトすら出来ない混乱状態に陥っていると思えます。
こんな泥沼の戦争について、平和ボケした日本人の私がどうこう言うのは憚られるのすが、最近図書館で借りて観た古いNHKスペシャルの「ビザンチン帝国」が、こうした戦乱に歴史的な「答え」を示しているかと思います。
ビザンチン帝国は4世紀に東ローマ帝国が中東を制圧したコトで成立し、史上類を見ない大帝国と成って世界の富の2/3を集めたとも言われます。
その国教はキリスト正教で、今でも正教会はウクライナ派とロシア派に分裂したりする活力を保っています。
しかしビザンチン帝国は14世紀にカソリックの十字軍によって滅ぼされており、このキリスト教圏での東西紛争は、最近ようやく和解への道が開けました。
ビザンチン帝国が千年以上も存続できた理由は、NHKスペシャルではイスラム教との融和を計ったコトが最大の要因だとしています。
シリアの首都ダマスカスには今でも、ビザンチン時代に建てられた世界最大のモスクが現存しており、その外壁には正教由来のモザイク芸術が施されています。
これは「永遠の芸術」として宗教的な意義を持ち、曾てビザンチンの都だったフィレンツェにはその工房が今でも受け継がれています。
一方、フィレンツェの北100kmのベネチアにもこの永遠の芸術は残っていますが、この港町は十字軍の拠点にも成ったのでその宗教性は混乱して喪われ、観光都市の只のアトラクションと化しています。
これとは対照的に、シナイ半島のモーゼが十戒を授かった山の麓に1500年以上も前から建っている修道院では、異教徒の地で非常な困難に晒されながらも、奇跡的なまでに原初の宗教性を保っております。
ここの主教は代々ギリシャ人で、NHKの取材をとても歓迎し、彼の生活と語りのシーンが大きくフィーチャーされています。
この修道院にはムハンマド(イスラム教の開祖)も訪れており、その時に結んだ和平証書の前で、これのお陰で修道院は今も存続できていると主教は語ります。
このソクラテスを思わせる風貌の主教は更に、現代において真剣に宗教を求める者はみんな同志であり、地球を破滅に導こうとする無神論者に対し、共に対峙して行くべきだと語っておりました。
この精神をシリアの人々が持てたならば、内戦はすぐにでも解決するかと思います。