この頃とみに「静かな歌」が心に響くように成って来ました。
それだけ成熟したのか、あるいは単に年を取ったのか、とにかく集大成として私の好きな「静かな歌」をまとめてみます。
五輪真弓のベスト盤はたくさん出ていますが、「なわとび」がオープニングナンバーの盤が一番好きです。 この歌は子供の頃の思い出を現在に重ねて幻想的に謳ったモノで、人生を「なわとび」に重ね合わせています。 最近街中でも「なわとびパフォーマンス」を良く見かけますが、私も日々のジャンプを丁寧にこなして行きたく思います。
新井英一の「彷徨ホテル」も静かなソロで、こうしたソロが行えるアーティストこそ本物だと思います。 私は彼こそ日本のボブ・ディランと呼ぶに相応しいと思い、吉田拓郎がそう呼ばれているのには納得しません。 それはともかく、日本にもこうした真のブルースシンガーがいるコトを嬉しく思います。
中島みゆきの「歌姫」も静かな名唱を聴かせてくれます。 歌で全てを包み込もうとする気概が伝わってきて、彼女の静かな歌声にはそれを実現している感があります。
「静かな歌」を多く歌っているアーティストとしてはサラ・マクラクランが有名で、「聖フランシスの祈り」が中でも一番静かです。 この祈りはキリスト教の日常語による祈りでは一番有名で、フランシスは日本にキリスト教を伝えた人物でもあるので、教養として知っておく価値は有るでしょう。
ブルース・スプリングスティーンの「Straight Time」も前に紹介したコトがあり、特別に「静かな歌」が収められているアルバム「トム・ジョードの亡霊」からです。 ここではトムの様に刑務所から出た男が、社会に適応しようと藻掻く物語が唄われます。 しかしそんなストレートな暮らしにはやはり馴染めない、男のサガが静かに謳われます。
エンヤのデビュー・アルバム「ケルツ」はマスターピース(傑作)で、そこではエンヤの歌声が楽器として奏でられます。 そんな中で一曲だけ唄われているのが「I Want Tomorrow」で、実に心に沁みる歌声です。 これは「希望の歌」にも数えられ、悲しみから喜びへの転調が感動をよびます。
締めはピンク・フロイドの大作「エコーズ」とします。 彼等には20分超の大作が3つあり、「神秘」や「原子心母」と比べて「エコーズ」はずっと「静かな歌」です。 これは「天の支配」以来のコズミック(宇宙的)な歌で、前よりもずっと地に足が付いています。 ロック芸術の成熟を最も善く表した作品と言われ、音楽の教養を高めてくれるのでお勧めします。