妻です。
お立ち寄りくださり、どうもありがとうございます。
タイトルの「ハープ」は楽器のことではなく、小学生のころわたしがお気に入りだった指人形(・・か、えんぴつのキャップ?)の名前です。
幼稚園から小学校低学年まで、わたしはともだち作りが本当に苦手でした。
だからクラス替えした新学期は大嫌い。
休み時間は自分の机でぽつんと一人でいたし、グループで食べる給食も気ばかりつかって全然味がしませんでした。
そんなわたしに、ある日大好きなともだちができました。
どうやってわたしのもとに来たのか、もう覚えていませんが、笑顔の男の子の指人形です。
当時テレビでハープを弾く女の人を見て、(人魚姫みたい!)と強くあこがれていたわたしは、そのともだちに早速「ハープ」という名前をつけました。
家でごはんを食べるときもテーブルに置いて一緒、水にぬれても平気だったのでお風呂も一緒。
ハープが家で待っていてくれるから、学校で一人でもへっちゃら。
自分の席で学級文庫の本を開き、(あー、早く帰ってハープと遊びたいな)と、だらだら長い休み時間をやり過ごしました。
学校から帰ると、近所の河原へハープをつれて犬の散歩へ行きます。
土手に座って、ハープを指にはめてわたしは言いました。
「ハープがいれば、ほかのともだちなんか、わたし、いらないな」
向き合ったハープはいつもどおりの笑顔。
わたしは大満足でした。
学校が終わると一目散に家に帰り、ハープと遊ぶ日々。
ある日ふと、わたしは(ハープ、もしかしてハープとしか遊ばないわたしを心配してないかな?)と思いました。
いつもどおり指にはめて「ハープ?」と聞くと、なんだかハープの笑顔がちょっと・・さみしそう?
イヤな予感がしました。わたしのことを心配したハープが、いつかいなくなっちゃうんじゃないかと。
少し経った日の夕方。
犬とハープと、いつもの河原へ行きました。犬はぐんぐんクサリをひっぱって草の茂った道を歩いていきます。
犬の気が済むまでさんざん歩いてから、土手に座って、ハープを取り出そうとスカートのポケットに手を入れました。
思わず立ち上がりました。ポケットの中はからっぽ。
「えっ!」と探ると、人さし指がポケットから突き抜けます。
穴からハープが落ちてしまったのだと気づきました。
「そんな・・ハープっ!」
夕焼け、風でなびく少し丈のある草の道。
犬をほったらかしで、歩いてきた道をしゃがみながら草をかき分けてさがしました。
「・・ない・・」
聞こえた自分の声はちょっと泣き声でした。
もう一回、同じ道をさっきより念入りにさがしてみます。
足元が暗くなって見えなくなってきました。でももう一回見てみよう。
だけど・・一生懸命さがしながら、もうハープには会えない気がしていました。
ハープのさみしそうな笑顔を思い出して、(やっぱり)と思ったことを、あれから何十年も経った今でも覚えています。
その後。
ハープがいなくなったわたしは、しばらくしてから、放課後しょっちゅう遊ぶようになる女の子と出会うことになります。
ハープと別れて数年後。
中学生になったわたしは、英語の教科書で、思いがけずハープと再会することになりました。
そしてその時、ハープの本名が「チャーリーブラウン」だったと知るのでした。