Re-Set by yoshioka ko

■「黄長はかく語りき」 第十二回

 黄長氏本人への単独インタビューの(中)です。シリーズ『黄長はかく語りき』をご覧下さい。

□なぜ「内部崩壊」は起きないのか?
 私が聞きたかったふたつ目のことは、その権謀術数家であるところの金正日氏の政権はなぜいまもなお健在であり、なぜ内部崩壊というものが起きないのか、ということだった。
 黄長氏は、ひとつは、といって天井に目を向けた。

 「ひとつは、あまりにも独裁が強固だから、それがひとつ。もうひとつは、外部から民主主義的な原則を離れて、いろいろな口実を設けて、その体制を支持している勢力がたくさん残っているということです。この体制は金正日が造りました。金正日は人民のための政治家としてはゼロ以下だけど、独裁者としては卓越した手腕を持っているのです」

 「こういうふうな要因が結合して(いるその一方で)、住民たちは精神的自由を持っていない。そういう意味では物質的にも、政治的にも、精神的にも全て奪われた状態だから(内部崩壊を促すことも)できないのです」

 独裁が強固なのは独裁者として卓越した手腕を持っているから、というのは十分理解できた言葉だった。しかし、外部からの支持勢力が残っている、というフレーズが意味するものはなにか。韓国政府が採用し続けている〈太陽政策〉なり、それを基調とした〈平和繁栄政策〉を批判したものだったのかどうか。

 黄長氏から返ってきた答えはもっとストレートなものだった。
 「それは日本を含む、そこに含ませても日本人が反対する資格はないのではないかと私は考えています。日本こそ、その意味で、徹底的に民主主義的な原則を守らなければならないと思うんです。しかしそれは日本もそうだし、アメリカも同様だと考えています。民主主義的な立場に原則的に徹底していない。そういうふうな要因が、(独裁政権の崩壊に大きな影響を与えるはずの)最も重要なアメリカにも日本にもある。ましてやほかの国についてはいうことはないでしょう」

 日本やアメリカが民主主義の原則にもっと徹するとするならば、金正日政権を相手に核問題や拉致問題といった目先の解決を求めるのではなく、政権そのものを崩壊させるために努力すべきだ、そう黄長氏はいっている。ましてやほかの国、というのは当然韓国を指しているのだが、その韓国が採用している宥和政策は論評外というのだ。

 あくまでも金正日政権の崩壊こそが北朝鮮問題解決の唯一の道、と主張する黄長氏ではあるが、インタビュー内容に関して事前の打ち合わせをしたとき、私が最も聞きたいと思ったことは、戦争という手段に頼らずに北朝鮮の体制を変えることができるのか、ということだった。黄長氏は、その質問にはきちんと答えます、といい、そのとき小さな黒いノートに何事かを書き込んだ。
 その質問をするときがようやくきた、と私は思った。

 戦争という手段に頼らずに、いかにしたら北朝鮮の体制を変えることができるのか?

 「北朝鮮の問題を根本的に、終局的に解決しようとする場合、すべての悪い問題の根拠は、根本的な根拠は金正日独裁体制にあります。だから北朝鮮問題を解決するためには金正日体制を変えなければならないという前提のもとに、すべての問題を話す必要があります」

 なぜならば北朝鮮問題の解決とは、かの地に真の民主主義国家を作ることであり、民主主義の原則に則って南北の統一を実現するところにあるからだ、黄長氏はいう。
 そのためにはどのような方法があるのか。

 「私は金正日独裁体制を変えなければならないという根本的な立場に立って、しかしそれを戦争の手段、方法によって変えるべきか、平和的に変えるべきか、というときには平和的に変えなければならないと思います」

 平和的に変える、といのは平和共存主義者のいうそれではない、とも釘を刺した。それは月刊誌『脱北者たち』7月号の巻頭言の内容を噛み砕いた内容だったが、この場での発言を繰り返せば、独裁集団(金正日政権)の側から暴力を伴った攻撃があった場合、平和のためだ、譲歩しよう、という立場は平和的な立場に立ったものではなく、平和共存主義に立った立場であり、それは民主主義的な方法ではない、という。

 もっと噛み砕けば、独裁集団からの暴力があった場合、交渉という手段に望みを託すのではなく、民主主義的な力によって断固闘うべきだ、というのである。

 では、どう闘うのか。黄長氏は3つの段階を考えている、といって言葉を区切った。声には力がこもっていた。それどころか口を挟むこともはばかれるような雰囲気が漂い始めていた。(以下最終回に続く)

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