今月26日、外交史料館は、沖縄返還交渉関係、およびその他に関する外交文書を公開した。
沖縄返還交渉,日米安全保障条約改定交渉関係目録
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/honsho/shiryo/shozo/okinawa_anpo.html
外交記録公開一般案件目録(外務省移管ファイル件名目録)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/honsho/shiryo/shozo/ikan.html
今回の文書公開に際して、新聞各紙の注目ポイントが異なっていて興味深かった。
『朝日新聞』は、先般、「核密約」問題が大きな話題になったことを踏まえたと思われるが、
沖縄返還問題と密接にリンクしていた日米繊維交渉に焦点を当て、
当時ニクソン大統領の補佐官を務めていたキッシンジャー氏が、
日本側に対して、早急に譲歩するように発言していた文書に関心を寄せている。
「繊維密約、キッシンジャー氏履行要求 70年外交文書
『朝日新聞』(ウェブ版))2010年11月27日付
http://www.asahi.com/politics/update/1126/TKY201011260221.html
http://www.asahi.com/politics/update/1126/TKY201011260221_01.html
一方、『読売新聞』は、米軍が返還前の沖縄に配備していた中距離弾道ミサイル(メースB)について、
日本側が、米国に対して、配備する際に公表しないように要請していた点に注目している。
こうした要請を行なった背景には、メースBが核搭載可能だったことがあり、
事前通告によって公表してしまえば、そのたびに国内の政治的混乱が引き起こされることを、
日本側が懸念していたからである。
「沖縄核配備、非公表求めた政府…外交文書公開
『読売新聞』(ウェブ版)2010年11月27日付
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20101126-OYT1T01250.htm
『産経新聞』は、沖縄返還に合意した1969年11月の日米首脳会談に先立ち、
ライシャワー元駐日大使が、
日米安保破棄の場合、日本が核武装に走るとの警告を発していた文書を取り上げている。
「安保破棄なら日本は核武装 ライシャワー氏が警告 外交文書公開」
『産経新聞』(ウェブ版)2010年11月27日付
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101127/plc1011270106002-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101127/plc1011270106002-n2.htm
なんとなく各社の論調やアプローチが出ているように見えて面白い。
ただし、史料的に見ると、歴史の解釈を大きく変えるような文書は含まれていないようで、
強いて挙げれば、ライシャワーの警告はエピソードとして関心を促す部分があるけれども、
米国の情報文書などを見ていると、割と似たような警告が出されていたりすることもあるので、
米国の政策プロセスにおいて、特に珍しい話でもないかなという印象を受ける。
もっとも、まだ文書自体を見たわけではないので、あんまり消極的な評価を下すべきでないかもしれない。
実際に文書をチェックしたら、案外、使えるということもあるからである。
いつになるかは分からないが、いずれきちんと見る機会もあろうかと思われるので、
そのときにまた、改めて評価することにしたい。