「すみません、最近ストレス溜まってませんか?」
これ以上風邪を拗らせまいと早く仕事を切り上げたはずなのに、なぜか新宿に流されてフラフラ歩いているところに、気の弱そうな一人の若者が近づいてきて言った。
「いえ、別に」
どうせわけのわからんアサッテの方向見てるノーテンキな宗教の勧誘かなんかだろうと思ってやり過ごそうとする僕。しかしそのナヨナヨした感じの兄ちゃんは僕の隣を僕と同じスピードで歩き始めた。
「いやぁ、なんかお兄さんマジメそうだから」
アホか。
どっからどう見たら僕が真面目に見えるのか。エスカレーターはハタチを過ぎても逆走してきたし、コンビニのドアの「押」を頑ななまでに引いてきた。今だってすれ違った二人組の女の胸の大きさを比べていた真っ最中だった。
「いや、そんなことないですよ。ストレスとかは特に…」
あくまで社会的に接する僕。右の耳から入った言葉が、左の耳からすり抜けていく、そんなチクワのような頭の僕に、ストレスなんて溜まる訳もなかろうに。
それでもそのナヨナヨボーイは諦めることなく食らいついてきた。
「僕はあなたのために何かお手伝いしたいんですよ」
言ったな。
「じゃあ今からあの二人ナンパしに行くから手伝って」
「え?」
僕がさっきのおっぱいコンテストにノミネートされた二人の後姿を指差す。
「僕が右のコに声かけるから、君は左のコを頼むよ」
「・・・」
おい、元気よく話かけてきたさっきの勢いはどうした。あれだけ勢いあれば、女一人オトすぐらい余裕だろうに。
彼の体からは「声かける人を間違えました」オーラが噴出し、みるみるうちに小学生が泣く直前に見せるような表情になった。挙句の果ては地面見つめて俯いてしまった。さぁこっからどうする。
「あ、ちょっとすみません」
しばしの沈黙の後、鳴ってもいない携帯電話を取り出すと彼は空気相手に喋り出し、そのまま夜の街に消えて帰ってこなかった。
これ以上風邪を拗らせまいと早く仕事を切り上げたはずなのに、なぜか新宿に流されてフラフラ歩いているところに、気の弱そうな一人の若者が近づいてきて言った。
「いえ、別に」
どうせわけのわからんアサッテの方向見てるノーテンキな宗教の勧誘かなんかだろうと思ってやり過ごそうとする僕。しかしそのナヨナヨした感じの兄ちゃんは僕の隣を僕と同じスピードで歩き始めた。
「いやぁ、なんかお兄さんマジメそうだから」
アホか。
どっからどう見たら僕が真面目に見えるのか。エスカレーターはハタチを過ぎても逆走してきたし、コンビニのドアの「押」を頑ななまでに引いてきた。今だってすれ違った二人組の女の胸の大きさを比べていた真っ最中だった。
「いや、そんなことないですよ。ストレスとかは特に…」
あくまで社会的に接する僕。右の耳から入った言葉が、左の耳からすり抜けていく、そんなチクワのような頭の僕に、ストレスなんて溜まる訳もなかろうに。
それでもそのナヨナヨボーイは諦めることなく食らいついてきた。
「僕はあなたのために何かお手伝いしたいんですよ」
言ったな。
「じゃあ今からあの二人ナンパしに行くから手伝って」
「え?」
僕がさっきのおっぱいコンテストにノミネートされた二人の後姿を指差す。
「僕が右のコに声かけるから、君は左のコを頼むよ」
「・・・」
おい、元気よく話かけてきたさっきの勢いはどうした。あれだけ勢いあれば、女一人オトすぐらい余裕だろうに。
彼の体からは「声かける人を間違えました」オーラが噴出し、みるみるうちに小学生が泣く直前に見せるような表情になった。挙句の果ては地面見つめて俯いてしまった。さぁこっからどうする。
「あ、ちょっとすみません」
しばしの沈黙の後、鳴ってもいない携帯電話を取り出すと彼は空気相手に喋り出し、そのまま夜の街に消えて帰ってこなかった。