冬桃ブログ

好事魔多し

 秋のS村行きをとても楽しみにしていた。
 おまけに横浜から車で連れて行ってもらえた。
 昼間の日差しは夏同様に強烈だが、どことなく
空も緑も空気も穏やかになっているように思うし、
秋茗荷がわんさと出てるのも嬉しかったし、
さあ、十日間ばかり、ここの空気を満喫させていただこう
……とうきうきしていたのに、着いた翌日、体調を
崩してしまった。
 原因は疲労、と、すぐに判断がついた。
 
 横浜では横のものを縦にも斜めにもしないような
のんべんだらりとした毎日。
 日がな一日、録画した映画を観て、その間、なんやかんや
食べ続け、飲み続けていたりする。
 要するにその時点でもはや体調は良くない方向に
傾いているというのに、S村へ来たとたん、私は人が
変わったような働き者になる。
 ここではすることがいろいろあるのだ。

 まずは花畑を凌駕している雑草をなんとかせにゃならん。
 スペースを確保して新しい花の苗を植え、ハーブなんかも
何種類かプランターに種蒔きする。
 午前7時頃から日差しがきつくなるので、5時半には
起き、雑草取りに励む。 
 が、軟弱で神経質な脳と体は「やる気満々」の心に
どうしたって追いついていけない。
 二時間くらい寝たか寝ないかという睡眠不足。
 睡眠薬も効かない。
 横浜とS村では動きの振り幅が大きすぎるのだから、
まあ、正直に言うと毎回、どちらでも「絶好調!」
とは言えない。
 今回はついに、診療所へ行く羽目になった。
 
 診療所の待合室は満員で、見事に高齢者ばかり。
 皆さん、顔見知りのようだ。
 診察を終えたおじいさんが、二人連れのおばあさんに声をかける。
「今日はどうしなさった? 稲刈りは終わったかねえ」
「おかげさんで。腰がちょっとねえ。お宅さんは?」
「わしは大丈夫。元気そのもの。今日は定期健診だよ。
それじゃあ、お先に。頑張ってな」

 おじいさんが診療所を出ていく後姿を見送り、
おばあさん二人が囁きあう。
 「やっぱり歳は争えんねえ」
 「あの歩き方がねえ」

 まあ確かに、おじいさんの後姿は少々、よたよたしていたが
おばあさん二人だって背中も腰も丸くなってるし、
「よっこらしょ」と立ち上がって歩く姿は、先ほどの
おじいさんとそっくり。
 この方たちとそうは変わらない年齢の私は、わが身を見る思い。

 薬をいただいて、まあ、大事なく回復しそうだ、と
安堵したのもつかのま。
 洗濯機が壊れた。
 聞けば前の住人から引き継いだものだというから
けっこう古いのかもしれない。
 私がお金を出すわけでもないのに、「すぐに買い替えを」
と、この家の主、老ドラゴンをせっつく。
 短絡な私と違って、物を大事にする彼は、まずじっくりと
故障の原因を調べ始める。
 
 初秋とはいえ、外仕事をしていると半端なく汗をかく。
 シャワーを何度か浴び、そのたびに着替えるし、
バスタオルなんかも贅沢に使う。手洗いできる量ではない。
 さらに私は旅人。限られた数の着替えしか持ってきていない。
 服が足りなくなったらどうしよう、と焦る。
 
 ようやく老ドラゴンが「寿命だろう」という結論を出し、
アマゾンで新しいのを注文してくれた。
 でも届くまで数日間かかる。その間は手洗い。
 治りかけた体調がいきなり悪化しそうになった。

 ま、しかし、落ち込んだのは一瞬。
 覚悟を決めて外へ出れば、心ときめく出会いがいっぱい!
 愚痴ってないで、たまには心も、やさしく手洗いしよう。

キクイモの花。


オクラは私の背よりも高くなった。


アカタテハ。あ、いま気づいた。その下に見えるのは
アゲハチョウの幼虫では?!


ウラナミシジミ


 ナスの葉にいたスズメガの幼虫。


ヒョウモンチョウ


苔に覆われた木にからみつく朝顔。


赤紫蘇でくつろぐアオガエル。


大家さんからいただいたイチジク。


 





 
 

 
 
 
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