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今年の活動第一弾2つ

2017-01-22 13:30:06 | 科学技術・科コミ
 去年の科学コミュニケーション活動の動き出しは、例年になく早かった(重複して書かないけど)。
 今年も、実はかなり早くに始まることになった。

 臨時便の方はたまたま日取りの都合がついて突然お邪魔、定期便の方は1年越し。
 詳述はそれぞれで。では、メモ程度に簡単に記しておく。

その1:(1/7)第4回生命を捉えなおす研究会(全6回)/続「21 世紀の科学者たち」
 URL は顔本上のこちらに。ふとした拍子にポッと空き時間が出来て、前日夜に来場登録し行って来た。
 会場は東京・下北沢のダーウィンルーム。そこの代表者が昨年 10/15 の第 16 回ソラオトサイエンスカフェ(TISF 2016 に企画登録を頂きました)に登壇したそうで、そういう意味では TISF とも遠いご縁がある。
 テーマは、清水博著「生命を捉えなおす」を出発点にした“生物の自律性を模した自律的なシステムの構築”。登壇者は NEC 中央研究所の小川真嗣さん。司会は在野研究者の松田雄馬さん。で、企画協力があの NPO 法人「場の研究所」(かつて金沢工業大学の付設研究所だった組織が分離独立して出来た)。そう、実は僕が生物物理学を志した直接のきっかけの一つに、巡りめぐって出会(でくわ)したという感じだった。
 実際に当座で扱われた話題は、司会と登壇者のお二人の自分語りとそれぞれの思いの丈、それと小川さんの開発した全館空調システムの開発経緯。後者の空調システムは、緻密なパラメータ設定をせずに、館内各所の温度を自動感知して、自律的に各所の室温を制御するというもの。その“自律的な各所の室温を制御”の仕組みの背後に、清水さんのバイオホロニクス(生命関係学)の考え方があるという話だった。
 各人の自分語りの部分がかなり長く、それはそれで知的格闘の物語として非常に興味深く、楽しく拝聴した。ただ、それゆえに、肝心のバイオホロニクスの内容とその背景、展開可能性や学術的意義の話は少なく、それらの話題(を主催者がどう扱うか)にありつくには6回シリーズを全部聞かないとダメなのかな?とも思われた。
 知りうる限り、生命科学における日本発の哲学的思想は3つある。第1に大沢文夫さんのルースカップリング。第2に津田一郎さんのカオス的脳観。そして第3がこの清水さんのバイオホロニクス。3人とも生物物理学界隈の人で、第1者は生体高分子の物性と動力学、第2者は神経科学(特に神経回路、学習と記憶)と物理の非線形問題、第3者は非平衡物理と筋収縮、視覚の神経回路のそれぞれの研究が出発点にあり、その全てが世界の生命科学の思想的基盤となっている(ように僕には見える)。
 ただ、話題の良さと扱いの微妙さはさておいても、その話題が科学コミュニケーションの舞台で、当事者にとっての最先端の熱い話題として扱われるようになったことに、隔世の感を覚えつつ、生命科学の研究とずっと接し続けてきたことへの小さな歓びを感じもした。

その2;(1/21)ときわサイエンスカフェ No.8「理研 STAP 騒動とは何だったのか」
 URL は主催者自前ブログのこちらこちらに。横串会つながりの尾林彩乃さんから、一昨年の 10 月末にサイエンスカフェの企画立案、去年の1月下旬(ちょうど今頃か)に登壇の正式なお誘いの話がそれぞれあり、それから話題提供内容や日程調整の作業で長らく主催者側の準備があって、去年5月から 10 回シリーズ、月1回の茨城県水戸市内のある公民館の公開講座として開始。その第8回を僕が担当した。
 その尾林さんも研究歴のある人で、専攻は天文学。博士号持ちで、科学コミュニケータとしても細々と活動中。実はかなりの腕力もあり、過年のサイエンスアゴラにて、 JST から頼まれて自前で飲食店の屋台村を急遽呼び寄せたという実績もある。
 僕からの話題提供は、早いものでちょうど3年前の今頃に勃発した、理研の STAP 騒動の顛末とその周辺、背景に関するもの。'14 年 1/29 の理研 CDB(当時は発生再生科学総合研究センター;現在は多細胞システム形成研究センターに改組)での派手な記者発表から始まった扇情的な報道と、酸浴刺激による脱分化、その脱分化した細胞によるテラトーマ(奇形腫;二胚葉性又は三胚葉性の肺細胞性腫瘍)の形成を示す実験結果が大変な話題になったが、PubPeer などのネット査読で不正疑惑の告発があり、そこから実際の不正行為や不公正行為が各種ゾロゾロ出てきたのだった。結局、理研と早大の内部調査で不正行為は認定され、問題とされた Nature 論文2報の筆頭著者だった小保方晴子氏の博士号取得は最終的には取消となり、理研でも懲戒相当の処分に。ただ、その処分の前に当事者2名(小保方氏、当時理研 CDB 副センター長の笹井芳樹氏)が共にその現場から離れることに(小保方晴子氏は自主退職。笹井氏は自殺;ただ、笹井氏の他殺説も一部で根強い)。そうした一連の話(自前記事のこちらこちらも参照)を踏まえて、STAP の概念と問題の論文2報、実際の不正の内容を紹介し、併せて他の研究不正事件や、背後にある大きな構造問題に関して概観した。
 当日の来場者は主催者と登壇者を除いても 12 人ほど。当座のやりとりも活発になり、途中の質議の場面を積極的に設けたこともあり、カフェとしてなかなか盛り上がった。ただ、利益相反問題(あのセルシード社の件)に関して、「あれは不正じゃなくて、知剤の観点からはむしろ当然のことなんじゃないの?」という意味の見解が出てきたことに関しては、若干違和感も感じた(まぁ、こちらの説明も不足していたのかも知れないが;ご存じのない方々におかれては、こちらこちらの記事を参照)。
 ネタそのものは、TISF2014 幹事会企画・週刊サイエンスカフェ「STAP 騒動、何が問題なのか?」の再利用で、これに一部のデータの追加及び削除、改訂を施したもの。一部に改訂不十分だったスライドもあり、本番の当座で気付く始末w それが最大の反省点かな。

 実はある事情でかなり滅入っており、胃腸と精神の不調を来した状態が続いている。
 そんな中での臨時と定期の活動2発。個人的には有意義な清涼剤だった。

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