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[sci][soc][divin] チーム美らサンゴ・その後

2015-10-21 22:18:31 | 科学技術・科コミ
 今年2回目のダイビング旅行がやって来た。

 あれは3年前のこと。その時の記録が自前ブログのこちらにあるが、思いの丈があって、現地行きとあるお誘いに成就した。そう、自分の科学コミュニケーション活動において、テーマの1つにしている「科学研究への市民参加」の事例調査として、自分の生涯趣味の1つであるスキューバダイブがどんな可能性を持つだろう?という思いから出発して、3年前のサイエンスアゴラ出展企画(を作っていただいたこと)に結びついた(→こちらを参照)。
 さて、その時に植えた自分のサンゴはどうなっているだろう? そして、皆で育むサンゴの海、そして海を守り育てる皆さんの思いの丈が、その後どんな発展を見せているだろうか? それをいつかまた知りたいという思いがムクムクと頭をもたげてきた。
 その思いの一部は、日本サイエンスコミュニケーション協会(JASC)の会誌掲載記事としても成就した。

 たまたま今回のエントリーは、今回と次回とで2連作というかたちを採る。
 3年と云えば、小さなサンゴの苗がそれなりの大きさになっている。
 では、なぜ今年だったのか? その理由の一部は次のエントリーに。残りの部分は今回に。

 というわけで、その2回目のチーム美らサンゴの体験記と道中の模様をなるべく手身近にものしておきたい。
 といっても、そう簡単に短くはならないw

 旅立ちは会期前日の夜。その出発日の午後6時過ぎまで、実は生業に従事していた。職場が大田区でなければ、そんな離れ業は無理。
 職場のすぐ近くでタクシーを捕まえて、羽田空港に直行。空路で羽田発 20:00 の那覇行き最終便へ。ダイビング機材は事前に泊港前の投宿先に宅配便で送付済。慌ただしさと、ワクワクする感じが入り交じる。
 気流の関係で、那覇着はやや遅れて 22:50 。3年前はモノレールの最終便1本前に乗って宿に向かったが、今回はホームに向かうエスカレータでKYなビジネスマソwに立ちはだかられ、僅か 10 秒差で終車1本前を逃し、ホームで 15 分待たされる羽目に...。
 投宿先到着は、シンデレラタイムの 30 分前を過ぎた頃だった。利用したホテルの隣が、慶良間諸島などに向かうフェリーの発着する泊港のターミナルビル「とまりん」。既に時の彼方にある、海行きデビューした某都市型店のツアーで、ここから慶良間諸島の渡嘉敷島に渡ったのも、今は昔。

 翌朝7時、宿前からタクシーで国道 58 号線を北上。集合場所の恩納村コミュニティセンターまでは一本道。道中の車窓左側には、軒並み米軍基地の広大な敷地が。それでも宜野湾を過ぎると、のどかな風景に。
 ちょっとだけ山道のような場所を通り、右折すると沖縄科学技術大学院大学(OIST)へのアプローチになる交差点を直進して、海が見えてくると、会場はすぐだった。予定の集合時刻(8:50)より1時間弱早く到着。その集合場所の至近には、3年前に入場した、あのサンゴの陸上養殖設備があり、漁港から万座毛に向かって右を見やると、3年前の集合場所だった全日空インターコンチネンタルホテル万座リゾートが鎮座している。

 現在、現地での体験プログラムを統括するのは、現地のダイビング店 Lagoon。同店の店舗は会場のコミュニティセンターから徒歩至近。店長の池野さんは、3年前にガイドでお世話になった。そして、今回2本潜った僕の所属チームのガイドが、実はその池野さんの奥様。なんという偶然!
 そして、全日空インターコンチのダイビングサービスも引き続き連携関与。池野さんはそこから独立。担い手の幅が広がった格好に。
 受付の手続きの際には、コンソーシアムとしてのチーム美らサンゴを事務局として事実上統括する全日空の石橋さんとも、今回再会。昨夏には、JASC の取材で汐留のオフィスにてインタビューさせて頂いたが、その時以来のご無沙汰になる。
 そして、今回はテレビ取材が入った。衛星放送のナショナルジオグラフィックチャンネルの公開録画があり、僕もインタビューを受けた。思いの丈を素直に話したけれど、その数分後にサイエンスアゴラや東京国際科学フェスティバルの話を少しすれば良かったかなぁ...と、ちょっぴり後悔w

 さて、肝心のプログラムだが、3年前のそれと比べてだいぶ進化していた。

 3年前のサイエンスアゴラの時にも、ワークショップ前半のサンゴクイズが来場者の好評を博したが、その発展版を含む内容が説明会の一部。説明会終了後は、ノンダイバープログラムの参加者とダイバープログラムの一部希望者が陸上の養殖設備を見学し、その間にリピーターやベテラン参加者向けのディープな対話型カフェが行われた。何度も参加している方々におかれては、もっと突っ込んだことを色々やりたくなったり、科学的な側面やビジネス的な側面に興味を持つ方々も現れて、如何にもという感じ。
 サンゴの植え付け方法も3年前とはがらりと変わり、円柱型の細いブロックに比較的大きく育ったサンゴの苗を結びつけて、ねじ切りした穴にねじ込んで差し込む様式になった。その細いブロックの形状も、ごく最近になって円柱から正四角柱になった。ねじ切りした棒の刺さったブロックの形状は、さしずめアイス菓子の如し。
 ブロックを用いて植え付けをする利点が1つ。サンゴは鉛直上方に向かって成長するため、ブロックに縦にサンゴの苗を固定することで、自然なサンゴの成長に近い条件になるという。それまでの、小さな苗を板状のブロックに横向きに固定して、ボルトとナットで止める方式よりも成長に有利らしい。
 植え付けるサンゴの種類も、ただ闇雲というわけでもなく、成長の早い種類のサンゴを選び、それらがある程度育ったところで別の種類のサンゴの苗を植え付けるようにしている。そのことで、サンゴ礁における生物多様性の配慮にもなっているということだ。

 3年前には学術的な基盤も加われば更に強みと広がりがあるかな...と思いきや、その方面の動きもしっかりある。かつてはサンゴ植え付けの取り組みには、日本サンゴ礁学会の関係者からの批判も多かった。だが、縁あって?恩納村にある OIST の研究者の手でサンゴのゲノム解読が行われ(OIST のこちらこちらを参照)、それと関連して、チーム美らサンゴによるこの取り組みが、恩納村のダイビングエリア周辺の生態系の撹乱になっていないことを示唆する結果を得たらしい。

 午前中の説明会及び学習プログラムが終了し、しばし休憩。

 後半は、いざ海へ。
 ノンダイバープログラムの方々は、前半はグラスボートでサンゴの観察、後半はシュノーケリングでサンゴの植え付けの様子を観察する。
 ダイバープログラムでは、勿論、サンゴの植え付け体験をする。2本のダイビングのうち、1本目でサンゴの観察、2本目で実際の植え付けをする。ポイントは3年前と同じトベラ岩。その時に筆者が植えたサンゴも、この場所にあったはず。ポイント内のどこにあるかは同定できなかったし、その苗が育っているのかどうかも分からない。しかし、その時以来のサンゴの植え付けの積み重ねで、個々のサンゴの個体(というか外骨格を含む群体)も育っている様子があり、個体数も増えていると実感できて、海中にいる間にぶつからないように気を使わねばならぬほど。
 2本目の植え付けの時には、サンゴの苗を海中の養殖場から抜き取り、ねじ切りをした岩場の植え付け場所へ。割り当ては、前回と同じく1人2本。予め苗のないブロックを差し込んだ場所に赴いて、苗を結びつけたブロックと交換する。植え付ける場所の周囲をブラシでゴシゴシこするのは今まで通りだが、植え付けの作業そのものはかなり簡便になった。それゆえに作業そのものに物足りなさを感じる向きもあるようだが、その気持ちは理解できつつも、そこは今後の検討課題なのかなと。僕の見る限り、6人のチームで1人2本ずつ植え付けても、6人が植え終わるまでに 15~20 分程度はかかる。ガイド役や運営の方々の頭を悩ませる試行錯誤も、きっと色々あるのだろう。

 2本目を終えて海から上がると、先述のナショジオチャンネルの取材クルーが待っていた。筆者はどんなふうに映っていたのかな?(→いや、そもそも使われないと思うけどw)

 では、今回のダイビングのデータを。

本数;#317, #318
場所;沖縄(本島・恩納村)・万座
地点;2本ともトベラ岩
スタイル;ボート
海況;穏やか
天候;晴れ
水温;27 ℃
気温;26 ℃
視界;(1本目)10 ~ 12 m
   (2本目)8 ~ 10 m
水深;#317:max. = 5.1 m、avr. = 2.1 m
   #318:max. = 3.5 m、avr. = 2.0 m
時間;#317:32 分(13:19 ~ 13:51)
   #318:38 分(14:45 ~ 15:23)
タンク;アルミの 8.0 L
スーツ;ウェットスーツ、ラッシュガード×2、海パン、スパッツ

 海から上がり、一息ついたら、3年前と同じ会場で、夕暮れ時のバーベキュー大会。
 この日の参加者数(主催者、運営者を除く!)90 人中、50 人が参加という大規模だったが、アットホームな雰囲気でのんびり楽しめた。他のチームの方々と仲良くなるのも、同じ思いでつながっていればこそ、大して苦労しなかった。

 このチーム美らサンゴのコンソーシアムとしての規模も大きくなり、参加企業数は事務局の全日空を始め 15 社に。中には芸能事務所のアップフロントエージェンシーも含まれ、同社所属で元モーニング娘。の吉澤ひとみさんが時々顔を出すこともあるそうな。
 今回の企業参加チームで最大勢力だったのはヤマハ発動機。ダイバーだけで総勢 12 人(!)。バーベキューの宴の後半で全員参加の 30 秒スピークアウトもあり、筆者も3年前のサイエンスアゴラにお誘いした話をした。その場でヤマハからの古株参加者の方から発せられた、印象的な物語がひとつ。ヤマハはマリンレジャー産業を担い、今回のボートダイブに使われた船のエンジンもヤマハ製。恩納村漁協でサンゴの海の復活に向けて、当初は独力で活動していた、関係者なら誰もが知る「サンゴの父」銘苅宗和さんから教唆を受けたと仰るその男性。彼が社内で説得に走り回り、ヤマハでの CSR 活動として社内事業を始めて幾年月。その方の思いの丈から、ヤマハとサンゴの海の繋がりが始まったのだ。

 いまや、多くの企業関係者にとっての異業種交流の枠を超え、サンゴの海を守り育てるという一念で、多くの人たちを魅きつける。そこには、個々人の情熱で閉じることなく、それを形にしようとする知と人の繋がりもある。みんなで育む、未来の豊かな海とその育て方。そこには、みんなで作る未来の科学と社会を考え、協働する社会参画の場がある。長年来、こうした科学にまつわる社会参画を自分の問題として考え、機会があればあるいは市民科学の舞台に、或いはサイエンスアゴラにご紹介したいと思ってきた。その思いが当時4年越しで結実して、早いもので3年。サンゴの海のアゴラはその後も大きく広がり続けていると、今回実感した。

 いつまでも、このひとときが続いて欲しいと思える時間は、久しぶり。
 その時間と場作りが、チーム美らサンゴの広がりゆく流れの源泉。

 なお、この旅には、大きなおまけも1つ。
 そのおまけの中身は、次のエントリーに。

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