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[sci] 今年のノーベル賞

2013-10-25 23:04:50 | 科学技術・科コミ
 なんだか、最近は定点観測的な記事ばかり書いているが、今回もそんな記事。
 他にも書きたいネタはいっぱいあるが、時間が無くてねぇ...。

 大分遅ればせながら、今年のノーベル賞の中身について軽く触れておこう。
 ちゃんとした解説記事を本来なら書きたいところだが、家庭と時間の都合wで簡単に済ませる。
 文学、経済学、平和の3賞とイグノーベル賞に関しては、省略する。

 というわけで、本題w

 毎年、10 月初旬の1週間は、ノーベル賞ウィークとして、関係者にはよく知られている。
 今年も 10/7 に医学生理学賞、10/8 に物理学賞、10/9 に化学賞が発表された。
 リンクをノーベル財団の公式プレスリリースに貼っておく。

 3賞の内容を簡単に紹介しておく。
 医学生理学賞の成果は、今年は「細胞内の小胞輸送の解明」だった。各種のホルモンや神経伝達物質、免疫系のサイトカインなどが正しく分泌されるためには、それらが分泌小胞に蓄えられて、細胞膜と融合し、細胞外へと放出される必要がある。R. シェックマンさんは小胞輸送に必要な遺伝子群を同定し、J. ロスマンさんは小胞と細胞膜の融合に必要な蛋白質の一群とその機能を明らかにし、T. スードフさんはカルシウムイオンが小胞輸送を制御することを示した。
 物理学賞の成果は、今年は「ヒッグス機構による質量の起源の解明」で、前々から有力候補だったネタの一つ。ヒッグス機構の説明はなかなか難しいが、素粒子物理学における質量の問題という原理的困難に挑戦した数多くの物理学者達の苦闘の最も根っこにあるのが、今回の業績である。今で云うヒッグス粒子の概念を提唱したのが P.W. ヒッグスさんで、そのヒッグス粒子により質量の生じる仕組みを説明する理論を発表したのが F. アングレールさんである。
 化学賞の成果は、今年は「化学反応のマルチスケールモデルの開発」で、一言で云えば“計算化学による分子動力学シミュレーションの手法の開発”。これは(競馬予想みたいな言い方だが)穴だったのではないか。生体高分子の分子動力学を計算機でやろうとするとき、高分子であるがゆえに古典力学と量子力学の両方の知見が必要になる。それを両方取り込んだ計算法(いわゆる QM/MM 法)を開発し、実践したのが M. カープラスさん、M. レヴィットさん、A. ウォーシェルさんの3人である。

 今年も日本人の受賞はなかったとは言え、多くの日本人研究者や日本企業が大きく寄与ないし関与している。
 物理学賞のヒッグス粒子に関しては、素粒子物理でこのテーマに関与している日本人研究者は、それこそ沢山居る。CERN(欧州原子力研究機構)での実際の検出装置を開発したのは、日本の東芝である(東芝による自社発表の記事がこちらにある)。
 化学賞の分子動力学法に関しては、この手法で研究を進めている研究者が生物物理学界隈にそれこそ沢山居る。その中には、“Go Potential”の郷信宏さんなど名前を残している日本人もいる。
 医学生理学賞受賞者の3氏のそれぞれの研究室からは、生体膜の膜融合や小胞輸送の分野を担う日本人研究者が多数輩出されている。この3氏の手で形になったと言っても良い、いわゆる“SNARE 仮説”の研究では日本人研究者の寄与も大きい。

 毎年のように、日本人の受賞者が出そうだとか残念だったとか、喧しい話題ではある。
 ノーベル賞以外にも、日本の国内外で科学賞の類は沢山あり、その中には誇るべきものだって沢山ある。
 ノーベル賞を取れなかった日本人研究者でも、世界に誇るべき良い仕事をしている人も、(今後のノーベル賞受賞者の有力候補を含めて)実は沢山居る。生前の仕事はノーベル賞受賞相応に偉大だったが、残念ながら受賞前になくなってしまった日本人研究者も沢山居る。
 そんなわけで、そこまで一喜一憂しなくても...と毎年思う。

 それでも、まぁ年中行事ではあるし、科学の全体を時々見渡すきっかけにはなっているから、一応ちゃんと毎年の定点観測にしておく意味はあるのかな。

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