サイエンスアゴラの準備でバタバタしている今日この頃だが、それでも今年も行ってきた。
唯一毎年参加している、基礎生命科学系の学会の年会。今年の会場は京都である。
その学会年会は、こちら。
第 51 回日本生物物理学会年会
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会場は、京都・宝ヶ池の京都国際会館。
日本に幾つかある国立の国際会議場の一つで、知る人ぞしるあの気候変動枠組条約第3回締結国会議(COP3)の会場として使われ、かの京都議定書締結の舞台となったところである。会館の正面玄関を入ってすぐの箇所にはそれを記念した展示コーナーがあり、「KYOTO 地球環境の殿堂」なる冠がついている。
地名の由来となっている“宝ヶ池”は、その京都国際会館のすぐ裏手にあり、同会館の庭園と隣接している。その宝ヶ池ではボートに乗ったりなど出来るようで、ちょっとした観光地にもなっているようだ。
さて、当日の模様は、いつも通りネットワーキングチャット Twitter で中継録画をしている。
とはいえ、諸般の事情でその中継録画のメモ自体がかなり後回しになっているが、随時進めたいところだw
(追記:まとめを作りました。
1日目、2日目、3日目のそれぞれにリンクを張ってあります。)
ここでは、期間中に見たこと、感じたこと、考えたこと、あったことを、それぞれ簡単にまとめておこう。
京都と言えば、生物物理学界隈では、非平衡系やサイバネ系が比較的強い。いわゆるソフトマター系や化学反応における時空間の秩序形成に関して、日本に幾つかある拠点のうち有力なものが京都にある。また、「心臓の京都モデル」に代表されるようなサイバネティクス的な研究を強みにしている研究室も幾つかある。
とはいえ、蛋白質の高次構造や分子動力学を扱う研究室も(全国に遍在しているのだが、京都にも)多い。今回の学会実行委員長・七田さんの研究室もその一つ。この七田先生、実は筆者が生物物理学会の学会誌編集委員を2年務めたときの1年目の編集委員長で、その時にはお世話になった。編集会議の開催地が通常は京都府庁至近の中西印刷京都本社で、その会議のために京都に何度か出向いたのも、今となってはちょっとした思い出だったりする。
さて、学会の中身をば。
やはり、今年の売りは“生細胞1分子イメージング”だろう。例えば羊土社のこちらの記事を参照。生きた個体の中にある、生きた状態の細胞を顕微鏡観察で撮影し、静止画なり動画なりを撮ってその画像を解析するのである。その際に、その細胞の中にある生体分子なり標識分子なりの動態を、その画像解析で調べるのが、この“生細胞1分子イメージング”である。
例えば、生きている身体の中にある骨格筋や心臓における、筋肉の伸び縮みの様子を、ビデオにとって観測し、その筋収縮に関与する蛋白質の働きを調べることが出来ると云うことだ。
そんなことを可能にする顕微鏡やデータ収集装置の開発が、ここ何年かにかけて行われてきて、最近ずいぶんと形になってきた。それは、例えば、生理現象なり何かの内臓なりのサイバネティクス的なモデルの検証を実際の生理学実験で可能にするばかりか、それらのモデルの磨き上げにフィードバック的に寄与することにも繋がる。
そうした感じの内容を含む演題を、今回は随所で見ることが出来た。
無論、これまで通りの、生体高分子の高次構造や分子動力学、光生理学(動物の網膜、植物の光合成系)や各種の分子モーター(アクチン&ミオシン、チューブリン&ダイニン、ATPase など)、遺伝子ネットワークの生化学反応モデル、人工細胞の創成を視野に入れた脂質小胞の人為的構成、概日リズム、高分子の構造活性相関における熱的揺らぎの問題、神経回路や免疫系などの多細胞系のクロストークや細胞ネットワークの問題など、これまでの生物物理学が扱ってきた問題の多くは今年も引き続き扱われている。
会期3日目のランチョンでは、今年も男女協同参画・若手問題のジョイントセッションに参戦。テーマは「博士号を取得して多様なキャリアパスを手に入れる」。博士号取得後にオリンパスに就職した方、科警研へ就職後に社会人院生として博士号を取得した方、第一三共から出向扱いで東大分生研に在籍して博士号取得を目指している方のお3方による講演と質疑という構成だった。
最近はトレンドとしてはやや沈静化気味?の生命科学系におけるポスドク問題の余波という感じの内容だが、主催者による「若手人材の流出に対する危機感」がゆえの「若手人材確保のための土壌作り」という狙いが透けて見える内容に、筆者には読めた。
2日目夜の懇親会は、京都国際会館に隣接のホテルの地下宴会場で、例年通り若手(学部生や院生を多く含む)もシニアも大御所も一堂に会しての食料争奪戦wだった。過去には、(今では全く考えられないことだが)用意した食事が足りなくなり、当時の実行委員会の側で吉野屋に急遽電話して、牛丼を 400 人分注文したこともあったとか(→誰から聞いたか忘れたが、間違いなく生物物理界隈の関係者から聞いた実話です)。
会期初日夜は、生物物理若手の会の飲み会に参戦。
2日目夜の懇親会終了後の2次会では、僕と同世代の方々の有志一同での交流会に。
どんな話をしたかに関しては、ここでは伏せる。ただ、科学コミュニケーションなる概念の理解度に関しては、徐々に進んできているようで、僕の取り組みに関してちょっと紹介してみると、意外と食いつきは良かった。
こうした“志ある人たち”とのテーマのある人的交流は、とっても有意義。学会参加のの楽しみの一つでもあり、自分にとっての励みにもなる。
毎度の如く、学会会場の去り際は、名残惜しかった。
今年はサイエンスアゴラを直後に控えて、日程的にはかなり厳しく、余裕のない参戦になったけれど、それでも今年も行って良かったと思えた。ある一つの重大な不愉快を除いては...。
来年の年会会場は北海道の札幌コンベンションセンターなのだとか。
唯一毎年参加している、基礎生命科学系の学会の年会。今年の会場は京都である。
その学会年会は、こちら。
第 51 回日本生物物理学会年会
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会場は、京都・宝ヶ池の京都国際会館。
日本に幾つかある国立の国際会議場の一つで、知る人ぞしるあの気候変動枠組条約第3回締結国会議(COP3)の会場として使われ、かの京都議定書締結の舞台となったところである。会館の正面玄関を入ってすぐの箇所にはそれを記念した展示コーナーがあり、「KYOTO 地球環境の殿堂」なる冠がついている。
地名の由来となっている“宝ヶ池”は、その京都国際会館のすぐ裏手にあり、同会館の庭園と隣接している。その宝ヶ池ではボートに乗ったりなど出来るようで、ちょっとした観光地にもなっているようだ。
さて、当日の模様は、いつも通りネットワーキングチャット Twitter で中継録画をしている。
とはいえ、諸般の事情でその中継録画のメモ自体がかなり後回しになっているが、随時進めたいところだw
(追記:まとめを作りました。
1日目、2日目、3日目のそれぞれにリンクを張ってあります。)
ここでは、期間中に見たこと、感じたこと、考えたこと、あったことを、それぞれ簡単にまとめておこう。
京都と言えば、生物物理学界隈では、非平衡系やサイバネ系が比較的強い。いわゆるソフトマター系や化学反応における時空間の秩序形成に関して、日本に幾つかある拠点のうち有力なものが京都にある。また、「心臓の京都モデル」に代表されるようなサイバネティクス的な研究を強みにしている研究室も幾つかある。
とはいえ、蛋白質の高次構造や分子動力学を扱う研究室も(全国に遍在しているのだが、京都にも)多い。今回の学会実行委員長・七田さんの研究室もその一つ。この七田先生、実は筆者が生物物理学会の学会誌編集委員を2年務めたときの1年目の編集委員長で、その時にはお世話になった。編集会議の開催地が通常は京都府庁至近の中西印刷京都本社で、その会議のために京都に何度か出向いたのも、今となってはちょっとした思い出だったりする。
さて、学会の中身をば。
やはり、今年の売りは“生細胞1分子イメージング”だろう。例えば羊土社のこちらの記事を参照。生きた個体の中にある、生きた状態の細胞を顕微鏡観察で撮影し、静止画なり動画なりを撮ってその画像を解析するのである。その際に、その細胞の中にある生体分子なり標識分子なりの動態を、その画像解析で調べるのが、この“生細胞1分子イメージング”である。
例えば、生きている身体の中にある骨格筋や心臓における、筋肉の伸び縮みの様子を、ビデオにとって観測し、その筋収縮に関与する蛋白質の働きを調べることが出来ると云うことだ。
そんなことを可能にする顕微鏡やデータ収集装置の開発が、ここ何年かにかけて行われてきて、最近ずいぶんと形になってきた。それは、例えば、生理現象なり何かの内臓なりのサイバネティクス的なモデルの検証を実際の生理学実験で可能にするばかりか、それらのモデルの磨き上げにフィードバック的に寄与することにも繋がる。
そうした感じの内容を含む演題を、今回は随所で見ることが出来た。
無論、これまで通りの、生体高分子の高次構造や分子動力学、光生理学(動物の網膜、植物の光合成系)や各種の分子モーター(アクチン&ミオシン、チューブリン&ダイニン、ATPase など)、遺伝子ネットワークの生化学反応モデル、人工細胞の創成を視野に入れた脂質小胞の人為的構成、概日リズム、高分子の構造活性相関における熱的揺らぎの問題、神経回路や免疫系などの多細胞系のクロストークや細胞ネットワークの問題など、これまでの生物物理学が扱ってきた問題の多くは今年も引き続き扱われている。
会期3日目のランチョンでは、今年も男女協同参画・若手問題のジョイントセッションに参戦。テーマは「博士号を取得して多様なキャリアパスを手に入れる」。博士号取得後にオリンパスに就職した方、科警研へ就職後に社会人院生として博士号を取得した方、第一三共から出向扱いで東大分生研に在籍して博士号取得を目指している方のお3方による講演と質疑という構成だった。
最近はトレンドとしてはやや沈静化気味?の生命科学系におけるポスドク問題の余波という感じの内容だが、主催者による「若手人材の流出に対する危機感」がゆえの「若手人材確保のための土壌作り」という狙いが透けて見える内容に、筆者には読めた。
2日目夜の懇親会は、京都国際会館に隣接のホテルの地下宴会場で、例年通り若手(学部生や院生を多く含む)もシニアも大御所も一堂に会しての食料争奪戦wだった。過去には、(今では全く考えられないことだが)用意した食事が足りなくなり、当時の実行委員会の側で吉野屋に急遽電話して、牛丼を 400 人分注文したこともあったとか(→誰から聞いたか忘れたが、間違いなく生物物理界隈の関係者から聞いた実話です)。
会期初日夜は、生物物理若手の会の飲み会に参戦。
2日目夜の懇親会終了後の2次会では、僕と同世代の方々の有志一同での交流会に。
どんな話をしたかに関しては、ここでは伏せる。ただ、科学コミュニケーションなる概念の理解度に関しては、徐々に進んできているようで、僕の取り組みに関してちょっと紹介してみると、意外と食いつきは良かった。
こうした“志ある人たち”とのテーマのある人的交流は、とっても有意義。学会参加のの楽しみの一つでもあり、自分にとっての励みにもなる。
毎度の如く、学会会場の去り際は、名残惜しかった。
今年はサイエンスアゴラを直後に控えて、日程的にはかなり厳しく、余裕のない参戦になったけれど、それでも今年も行って良かったと思えた。ある一つの重大な不愉快を除いては...。
来年の年会会場は北海道の札幌コンベンションセンターなのだとか。
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