金融機関の経営支援
経営不振に陥った企業に、メイン行等が再建支援のために行職員を出向させることがあるが、不調に終わった場合は、出向者だけでなく、金融機関にも責任が転嫁されることになりかねないこと等から、出向者の責任が重くなるというリスクがある。
デット・エクイティ・スワップ(DES)は、債務会社の経営再建のために再建の一部を債務会社の株式に換えることで、債務会社にとっては債務の資本化が図れるメリットがあるが、その場合、一般に金融機関は債務免除は行わない。また、中小企業の再生を考えた場合、再建が困難であれば金融支援を継続するよりも、資産的余裕のあるうちに廃業等による再出発を進めることも選択肢の1つである。
中小企業融資は代表者が担保提供し保証人となるケースが多いため、経営支援策として債権放棄を実施する場合、代表者の債務保証の免除も併せて検討する必要性が高い。このことを含め、一般に債権放棄は容易ではない。
金融機関としての説明態勢(総合的な監督指針)
中小企業の場合、代表者の保証を付すことの有効性は高く、融資慣行になっているが、保証人に対する説明責任が強化され、総合的な監督指針は、その場合にも保証人にする理由等を客観的、合理的に説明することを求めている。また、経営に実質的に関与していない第3者を保証人とする場合も同様であり、保証人の立場を考え、保証契約締結後の主債務者の債務履行状況等の情報提供を行うことについても示唆している。
なお、当該監督指針では、融資取引にデリバティブ等のリスクを負う可能性のある取引が含まれる場合、当該取引について最悪のリスクを想定した最大損失について口頭ではなく書面によって具体的に事例を示して説明が求められていることの他、手形割引にかかる契約条件についても同様であり、金融機関の説明義務は重くなってきている。
自己査定による債務区分
金融再生法では、自己査定による要注意先の債権は、貸出条件緩和債権、3ヶ月以上延滞債権は要管理債権であり、それ以外の債権は正常先の債権と同様に正常債権である。
また、金融検査マニュアルでは、当初の事業計画の進捗状況が7割程度確保され、かつ黒字化する期間が5年いないであれば、自己査定によって創業赤字企業を正常先と判断しても差し支えない。そして、貸出条件を緩和する変更を行った場合、当該貸出の適用金利が基準金利を下回っても、実現可能性の高い抜本的な経営改善計画が策定されているか、1年以内に策定されることを確認できれば、貸出条件緩和債権には該当しないとしている。
自己査定では、地方公共団体は債務者区分の対象外であり、債権全額を非分類債権とすることになる。
債権の償却と引当
正常先の債権は、貸倒実績率等にもとづき一般貸倒引当金を計上するが、その場合、保証協会の保証付債権であっても例外ではない。
また、貸出条件緩和債権を保有する債務者については当該債権だけでなく債権全額に対して今後3年の貸倒れを見積もって引当てする必要がある。
実質破綻先・破綻先の債権で償却・引当の対照にしなければならない債権は、ⅢⅣ分類である。
経営支援可否検討時のポイント
経営支援先を選定する際に最も重要な視点は事業に存続価値があるかであり、金融機関として債権回収上の有効性を大前提とすると経営支援の本質から逸脱してしまうおそれがある。
経営支援には組織的な対応が必要であり、このような取組みスタンス等がアンバランスにならないように、対象先の選定は本部統括部署が選定基準によって決める必要がある。その際、ジリ貧(次第に状況が悪くなる)企業であっても、破綻による地域への経済的影響が大きいような企業であれば対象先に選定し、再生に向けたさまざまな経営支援策を検討する必要がある。また、金融機関としては、経営資源を効率的に活用するためにも支援先の選別を強化する必要がある。
マーケティング・マネジメント・プロセス
マーケティングは、売上や収益を上げるために不可欠な企業活動であるといえる。P.コトラー、G.アームストロングは、①市場機会の分析→②ターゲット市場の選定→③マーケティング・ミックス戦略の策定→④マーケティング活動の管理といったプロセスを、効果的なマーケティング・マネジメント・プロセスとして主張している。
企業は自社の製品・サービスを投入するターゲット市場を選定するために、まず市場機会の分析を行う必要がある。その際に必要な情報として、社会・経済・自然・政治・技術・人口動態などのマクロ環境要因と、競合他社・配給業者・流通業者などのミクロ環境要因がある。
マーケティングを行ううえで重要なのが、ターゲット市場の選定である。ターゲットが誰か、ターゲットをどこに定めるかをさまざまなセグメンテーション(市場抽出)のなかで決定していく。セグメンテーションの方法には、大きく分けて、年齢・性別・職業・収入・ライフスタイルなどの「消費者特性」と、ベネフィット・ロイヤリティ・購買契機などの「消費者反応」の2つの分類がある。
また、ターゲット市場の選定において重要なことは、自社の力量に合い、自社の強みを生かせる市場を選択することといえる。大きな市場や今後拡大が見込まれる市場は確かに魅力的ではあるが、その市場において自社が競争優位性をだせそうな製品・サービス・ノウハウなどがなければ、シェアを獲得することはできない。
マーケティングを構成する要素をマーケティングの4Pというが、4つの要素とは、Product(製品、品揃え)、Price(価格)、Place(流通、立地)、Promotion(販売促進)という。事業活動において適正利益をかくほしていくためには、4Pのなかから自社にとって最も重要なものをコア・コンピタンスにステップアップさせていく必要がある。また、そのコア・コンピタンスを最大限に活かすためには、その他のマーケティング要素を最適に組み合わせてマーケティングを行うことが必要である。4Pを組み合わせて自社のビジネスモデルを構築することを、マーケティング・ミックスと呼ぶ。
企業の技術力の評価
企業の技術力を評価する場合、業種・業態により大きく異なることが考えられるため、普遍性のある評価基準を用いることが必要になる。その基準とは、需要の3要素、競争の3要素とも呼ばれる、「品質(Quality)}、「コスト(Cost)」、「納期(Delivery)」である。さらに、昨今では「情報」も重要な技術力であり、同じように「環境適応力」も技術力と判断できる。
「品質」は、技術力評価をする場合に製品開発力を重視しがちであるが、日本の製造業の国際競争力は「ものづくり」の製造技術にその基を見ることができ、製造技術が真の意味での競争力と考えられる。製造技術は「ものづくり」と一体となり生産管理の根幹をなすものであり、人の属性に左右されることが多い。しかし、人間の能力を判断することが容易ではないため、製造技術および製造技術担当者の力量がはっきりと示される生産管理指標である生産性、歩留り(ぶどまり:生産されたすべての製品に対する、不良品でない製品の割合)、製品検査合格率から評価することができる。
また、製造業において製造工程のボトルネックは、生産の勘所となる重要なポイントであり、管理レベルの高い企業はこのボトルネックとなるべき行程を正確に把握してm対応策を講じている。
近年の生産設備はますます高度化・自動化が進んでおり、生産の設備への依存度は高まっている。設備をきちんと保全していることは、企業にとって必要な能力と判断することができる。PM(Preventive Maintenance)とは、設備の定期的な点検と劣化部位の事前取替えを行う予防保全のことで、費用はかかるが設備の機能低下と機能停止の予防効果があり、導入している企業はそれだけ高い管理レベルを評価できる。評価する際は、PMにかかる費用とPMを実施していなければ損失していたキャッシュの差で判断する。
「情報」の評価項目のなかで、設計に関する情報システムの評価指標としてCAD/CAMの導入やデータベースの導入があげられるが、設計レベルでのCAD/CAMの導入はもはや一般的な状況であり、それを導入していることだけでは技術レベルの判断指標とはならず、具体的な使いこなしのれべうが判断基準となる。