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屋根裏としょかん

静かに世界が見える場所

~いい本はみんなでこっそり読むのだよ~

この「チッチ」はもしかして、石田衣良の分身!?「チッチと子」

2010-03-14 17:39:54 | ジ~ンとする本
◆「チッチと子」 (石田衣良/毎日新聞社)

売れない作家であり、一児のパパである「チッチ」こと青田耕平。
妻は交通事故で亡くなり、子育てと作家業に追われる日々。
直本賞にノミネートされて日常が騒がしくなったり、
息子との関係に悩んだり、そこに創作の悩みも恋の悩みも加わって、
心の中は波乱万丈ですが……(笑)。
この「チッチと子」の親子関係は、現代の理想でしょうね~!

文壇の裏側が見えるストーリーに、興味津々になってしまいました。
作家が単行本を出して、印税がいくら、文庫になって印税がいくら、
直本賞のおそるべき宣伝効果などなど。
主人公の作家は、短編で賞をとり、直本賞にノミネートされる…っていう
流れがまるで石田衣良のよう(笑)。
物語の中では、「作家が自分のことのように物語を書いても、
それはあくまでフィクション」だと、何度か主張されているところに、
牽制が感じられ、怪しさがあったりして(笑)。

妻の死に関する疑念が解かれるエピソードは、
ちょっと展開が早いような気がしたけど…それは置いておいて。
「チッチと子」の人生が明るく、また新たな風向きでスタートするラストが、
爽やかでした。

それにしてもこの息子さん、大人びていて賢くてかわいい!
成長したら、石川遼くんのような好青年になりそうですねぇ。


くるみ

どこにでもいる青年が、数々の人生を動かした。「横道世之介」

2010-03-14 17:34:23 | ジ~ンとする本
◆「横道世之介」 (吉田修一/毎日新聞社)

舞台は80年代のバブリーな日本。
東京の大学に進学するため上京してきた青年、横道世之介。
サークルでサンバを踊り、講義をさぼって友人の家にいりびたり、
切ない恋も経験して……、そしてそれから。
彼の生き方は素朴で、自己主張も強くないのに、
周りの人をじんわりと包み込む懐の強さを感じさせる。

今もどこかにいるんじゃないかな、2010年の横道世之介くん。

なんていうこともない、普通の大学生の物語なのに、
どうしてこんなに心に残るのだろう……。
これは、不思議な引力のある本。

主人公の横道世之介は、ごくごく普通に大学生活を送って、
友人をつくり、恋人もできて、自分の将来のことを考えたりもする。

くせ者ぞろいなのは、むしろ主人公ではなく、周りの登場人物の方で。

ある事件から、大学を辞めて別の人生を歩むことになった友人。
当時では衝撃が大きすぎる(!)趣向を、告白してきた友人。
また、想いを寄せられる女の子は、生粋のお嬢様だったりもして。

普通だったら、とまどったり、怯んだりするような出来事が起きているのに、
横道世之介は、それをするりと受け入れてしまえる柔軟さがある。
流されているようで、自分らしさをさり気なく守っていて、
彼が最後に見せてくれるのは、他の誰にも真似できない勇気。

世之介の生き方と、かつての恋人の生き方が、
共鳴しているラストはまた、印象的でした。

カメラマンは、カメラマンになることが目的なのではなく、
ましては技術を習得した結果なれるものなのでもなく、
とりたい「何か」があって、それを実現するためにカメラを使う
という人間がなるものなのかも、ね。


くるみ

何かに一生懸命打ち込まない世之介君、そんな頼りなさがいい「横道世之介」

2010-01-26 22:33:52 | ジ~ンとする本
                          「横道世之介」(吉田修一/毎日新聞社)

「悪人」を超えた!!と巷の書評は言うけれど純平は「悪人」とは違う吉田修一を見た・・・
ちょっと偉そうか言い方かな、すみません(笑い)
物語の進行にはそんなに起伏がある訳でないので
次がどうなる、そしてどうなるという話ではありませんが
このなんてことのない日常の流れが何とも純平にあうんです(笑い)
 
今迄の吉田修一作品を読んでいて
あの人にこう言う一面もあるのか、と思いながらも読まされました。
舞台は20年前、要所、要所で世之介が関わった人物の「現在」が織り込まれていきます。
バルブ絶頂期の世情と20年後の比較がこれまた巧い(笑い)

横道世之介と言うおかしな名前の青年が大学に入るために九州福岡から東京へ
そこで始まる大学生活よくある日常を重ね、成長して行く出会い、関わりの過程がうまく書かれている。
たとえば大学の入学式で出会った同級生が、
あることで世之介と出会ってからの交流が薄れて行く・・・
20年後その同級生は世之介の記憶が遠のくが、あるきっかけで世之介の存在にふれる。
この辺を読み手に実にうまく気がつかせるあたりが巧みである(笑い)

最後はどうなるの~世之介はどんな大人になるの~っと思いましたが
最後は作者も迷いに迷った結末ではなかったかと思う純平でした。
また偉そうな言い方ですみません(笑い)

純平にも5年前、10年前、20年前、30年前??、大なり小なり
色々??沢山の関わりを持った人が、それぞれに日常を生きている・・・そんな事を考えると、
こうして生きている事の尊さを、ちょっとだけ感じてしまうかな(笑い)

余談ですけど新大久保駅で実際にあった韓国人留学生との転落事故を思い出したもので、
読んでるうちに駅に行くな!ホームにいるな!!とかとか真剣に思ってしまいましたよ。

そんなところが小説って面白い

怪人純平

繊細な少年の心が、チェスの海に奇蹟を起こす。「猫を抱いて象と泳ぐ」

2009-07-30 22:22:27 | ジ~ンとする本
◆「猫を抱いて象と泳ぐ」(小川洋子/文藝春秋)

唇がくっついたまま生まれた少年、リトル・アリョーヒン。
彼は言葉ではなく、チェスのゲームを通じて、
繊細な音楽を奏でるように、相手と心を共鳴させていく。
少年を取り巻く人たちとの、
愛や、友情や、尊敬や、優しさもみな、
チェスのゲームを通じたダイナミックなイマジネーションの
世界に包まれて、読んでいると泣きたくなってしまう。

こんなにつつましく、美しく、勇敢に輝いたリトル・アリョーヒンの
人生を、読み終えてしまうのは惜しいので。

リトル・アリョーヒンが出会う「象」は、
デパートの屋上で飼育されているうちに大きくなって、
地上に降りられないまま、亡くなってしまったし。

リトル・アリョーヒンにチェスを教えてくれたマスターは、
身体が大きくなりすぎて、亡くなってしまった。

それだからか、少年リトル・アリョーヒンは、
身体が大きくなることを拒んで、決して成長しない。

いつまでも小さな少年はまるで、
かたくなにその繊細な心を守っているようで、途中からラストが
想像できてしまう。

触れたら壊れてしまいそうなくらい、美しいものを、
そのままでとっておくためには…方法はひとつしかないから。

変わらないことはできないし、大人にならないでいることもできない。
日々、何かを失っているように感じる私に、
リトル・アリョーヒンの生き方は、
羨ましいくらい純粋で気高く見えちゃうものでした。


くるみ

大人にしみるポカリスエット小説。「4TEEN」

2009-01-28 21:44:11 | ジ~ンとする本
◆「4TEEN」 (石田 衣良/新潮社)

誰もがあのころ、ピュアで最強な中学生だった…よね?

貧しい家庭に生まれた少年、
裕福だけど難病をわずらった少年、
クールで切れ者の少年、
ワルになりきれないシャイな少年…。
月島を舞台に、4人のボーイズが繰り広げる爽やかで切実な青春劇。

そこらの中学生モノと違うのは、
現代の空気をガシッとつかんだ作家が生み出す
リアルな人物像のおかげかも。
拒食症にプチ家出、出会い系サイトなど、
取り入れられた流行のネタも多岐にわたり…、
それが「現代らしさ」を感じさせてくれて。

一方では、月島から新宿の歌舞伎町まで出かけることが、
性に目覚めつつある14歳の少年たちにとって、
大冒険だったりするところなど…は、
なんとな~く、親の世代の方が共感を抱いてしまいそうな、
「懐かしさ」を漂わせていて。

見事なバランスだな~なんて感心しちゃいました。

本を読んで祈るように思ったことは、
ここに描かれているような少年たちが、
現実の中学生のなかに2~3割でもいてくれたら…ということ。

打算をせず、心の赴くままに生きて、
「女の子」が大好きでスケベでも、
弱いものを思いやれる当たり前の強さをもった人間が、
今の若者に少しでもいますように。


くるみ

宣言します!「百万円貯まったら出て行きます!」百万円と苦虫女

2008-09-22 23:25:58 | ジ~ンとする本
             タナダユキ「百万円と苦虫女」幻冬舎
人間はチョッとしたズレを修正出来ないで不器用に生きていること多いよね
でもそのズレが修正出来たからって、幸せとは限らないけど(笑い)
ただ目立たないように静かに暮らす事が出来れば幸せと、生きてきたはずなのに。
人より少し不器用だからある事件で前科者?になって・・・
どんどん、どんどん不器用になっていく。

「百万円貯まったら出て行きます!!」っと宣言して。

貯まるごとに知らない町に脈絡もなく降り立つ鈴子。
また知らない人達と不器用に知り合い、不器用に心の温かさにふれ
不器用に相手を少し傷つけ、不器用に相手との距離を縮められず受身のまま生きていく。
それでも自分の不器用さを見つめ直して行こうとする姿勢が
何とも言えず切ないくらい不器用である。

ラストもほんの少しのズレのいたずらが切なさを増す。
これはもしかしたら、今流行の自分探しかと思って読む人が・・・違うな
自分探しなんかしたって、ほんとうは意味がない。
どんな遠くに行っても自分からは逃げられないし、自分は自分だから(笑い)

不器用でもいいから自分を好きになることだよ。

怪人純平

メニューのない食堂、そこでの出会いが少しずつ全てを変えていく「食堂かたつむり」

2008-09-03 23:30:25 | ジ~ンとする本
            「食堂かたつむり」小川糸/ポプラ社

「食堂かたつむり」表紙のほのぼのイラストに何か惹かれて・・・
と言っても本屋で手にしたのではなく(笑い)
怪人純平の所には幸せな事に(笑い)時々「本の宅急便」が届きます(感謝!)
そんな話はまた後日、ここ「屋根裏としょかん」の新コラムで(笑い)

そんな中から見つけた「食堂かたつむり」

装丁のイメージから少し前に話題になった
癒しの「かもめ食堂」系かと思いきや(笑い)
ところがのっけから、悲惨・・・

アルバイトを終えて家に帰った主人公「倫子」が目にしたものは
きれいさっぱりもぬけの殻の部屋?ありゃりゃぁ?
同棲していた恋人インド人に、家裁道具一切合切持ち逃げされて
残ったものと言えば祖母の形見の「ぬか床」だけと・・・
おまけにショックで声まで無くし。

そこから始まる「食堂かたつむり」

宝くじが当たって自分の旅立ち先を目をつぶって、「えいっ、ヤーッ」と地図を指差し決めて
地球の彼方フィンランドで気ままに始めた「カモメ食堂」とは大違い(笑い)
でもどこか似ている「食堂かたつむり」

でも終盤チョイ前のあの壮絶シーンは、あれよ、あれよと純平には衝撃でした。
とても大切なこの物語の件ですが、これから読む人のために黙っています(笑い)
でもチョッとだけ「エルメス」なんて可愛い名前がついてるから、そう思うのか(笑い)
日常を考えれば昨日の食卓でもあったかも・・・

おかんと倫子の間の溝が徐々に埋まっていく所は、読み応えあり深く惹かれたました
母と娘の絆って不思議ですね
反りの合わないおかんの本当の事を知った時、全ての???が雪解けのように
そして、ふくろう爺の鳴き声の秘密が・・・泣けました。

都会の喧騒を忘れ、たまには自然いっぱいの中で
澄んだ空気と美味しい料理に舌鼓を打ちたいもんだ・・・そんな「食堂かたつむり」
ラストの優しさにも舌鼓したくなった純平でした。

怪人純平

今度の東野圭吾は悪~?の腰巻につられ「ダイイング・アイ」

2008-01-11 01:01:56 | ジ~ンとする本
           角川書店/東野圭吾「ダイイング・アイ」
どうしたんですか~東野圭吾さん
「夜明けの街で」新境地にして・・・この恋はどこまで続くのだろうか。
ミステリー?あれ!不倫小説?~優しくなっちゃって(笑い)
そんな時オアゾの本の樹海で平積、山積み「ダイイング・アイ」の腰巻に光る!!
売りコピー!!  今度の東野圭吾は悪!だと(笑い)
最近ほんとこの手の腰巻コピーにやられます(笑い)
期待に胸膨らませレジに並ぶ怪人純平でした・・・

幻の快作ついにベールを脱ぐ!!
胸つく苦しさ、狂えるようなエロティシズムが漂う夜のサスペンス。
とか、とか言われましたが怪奇もどきの、いや怪奇風味のサスペンスかな(笑い)
新作かと思ったら10年ぐらい前に書いた作品のよう
幻のままの方が良かったかも。

雨村慎介(バーテンダー)は閉店後に襲われ
そのまま意識不明となり病院のベットで意識が戻る。
そんなバーテン雨村は記憶の一部を欠落していた
雨村を襲ったらしい相手は自殺して発見されたが
その人物は雨村が人身事故を起こした時の被害者の夫だったとか。
雨村はその事故の記憶だけを失っている(チョッと不自然)
記憶を求めて動き出すと、雨村を取り巻く人間に微妙な動きが・・・
この辺で止めときましょうかね(笑い)

それにしても謎の女、瑠璃子といい。
あんまり意味の無い濡れ場のくりかえし(笑い)
東野圭吾って濡れ場の表現?硬いんじゃないの~(笑い)
でも最後マネキンでグイグイ攻めて来たところはさすが怖かった(笑い)
そして最後はマネキンで締めるのかと思きや~そっちかい!!と言う感じでした。
いつものドンデン返しが欲しかった(笑い)
意外と映像化すると乱歩の怪奇サスペンスの世界に行くのかも、それはそれでまた・・・
でも東野圭吾さんの次回作がやっぱり待ち遠しい。

そんなところが本って面白い・・・

怪人純平


島本理生初の男の語り手による恋愛心理小説「クローバー」

2007-12-16 00:23:07 | ジ~ンとする本
              新潮社/島本理生「クローバー」
いつもと違う島本ワールド、救いようのないダメ男が出て来ない(笑い)
純平の大好きな島本ワールドはどこへ。
と言っても面白くないと言っているのではありません。じゃあ何なんだよと言われそう(笑い)
島本理生の本でこの「クローバー」を初めて読む人は
なぁ~んだ普通の話じゃないのって思う人多いかも
ま~物語は特別変わった話しではありませんので(笑い)。

語り手の俺(冬治)と双子の姉(華子)見た目そっくりだけど性格両極端
だから小説になるのか(笑い)そんな事はどうでもいい。
二人はともに大学生、親元離れカツカツな生活を節約するため同居中
我が強くどちらかと言うと自己中(笑い)よく島本ワールドに登場しがちな
そんな二人とそれを取り囲む個性豊かなキャラ(笑い)達がおりなす
青春群像劇とも言いましょうか。

負けん気とプライドの高い華子の恋!どちらかと言うと叙情的な冬治
そこに絡む外見からわ考えられない思いもよらぬ洞察力とデリケートさを持つ熊野さん
軟弱そうなのに意外なパワーを持ち合わせる雪村さん(この人が曲者)。
この四人の関係が絶妙なバランスで描かれ面白かったが
ちょっと雪村さんが問題かな(笑い)
冬治、華子、熊野さんこの何とも言えないトライアングルに
雪村さんが入り込んで来たあたりから・・・
まあこの辺の事を言ってしまうと面白くないので(笑い)

でもダサい女が変わると・・・ああやっぱり止めとこう(笑い)

いつもの純平の好きな島本理生ワールドではちょと(笑い)違うけれど楽しめました。
最後の最後に冬治が選んだのは、それって「どうなの~」って感じもしないでもない(笑い)
そんな所がクローバー・・・ありゃ!!

怪人純平

絶対にあなたを許さないから・・・12才の女の子のセリフ?

2007-10-08 22:17:26 | ジ~ンとする本
              新潮社/島本理生「あなたの呼吸が止まるまで」

島本理生さんの一番新しい本ですが、恋愛小説ではありません(笑い)
恐ろしいね? 女の復讐執念
なかなかいい設定の話なのですが(笑い)主人公の父は舞踊家。
この父親の生きざまは良く言えば幸せだと思うけど
普通の女にはなかなかついていけないような気が(笑い)
あんのじょう両親は離婚、音信不通・・・
されど母への思いは断ち切れず「物語を書く人になりたい」と強く思う野宮朔
その12才の女の子、朔の視点で進展する物語です
屈託の無い12才の日常を描いた前半と、事件が起きる後半とに書き分けられます。

前半は12才の小学生でありながら
「ノルウェイの森」を学校に持って行って読むような、大人びたところのある野宮朔。
思春期の自意識、美意識、孤独感を強く感じるが。そんな少女に学校での居場所もなく
素直に甘えることも出来ず、でも一人になるのが怖く孤独に身を置く毎日。
でも未来がある・・・そんな時に朔の心を汚す卑劣な大人の仕業に出会う
この上ない理不尽な行為に対して「あなたの呼吸が止まるまで」朔の決意は・・・
ここからがどうも純平には引っかかります(笑い)

書く事で復讐ですかね?
あなたと分かるように書く・・・
「物語を書く人になりたい」と思う12才の心を

何か痛ましく感じてあまり「読後感」は良くなかった。
あの事件さえ除けばいい話です12才の朔から見たいろいろな世界が見えて(笑い)
島本理生、恋愛を離れてもこれだけ読ませるからたいしたものだ(笑い)。

確か島本理生さんのお母さんの舞踊家でしたね・・・
好きな作家です、これからもよろしく。ありゃ

怪人純平