◆「往復書簡」 (湊かなえ/幻冬舎)
心と心がつながった、あの時の、あの人たちへ。
問いかけたいこと、確かめたいこと、
共有した「あの事件」について知りたいこと…、
何かしらの思惑をこめて手紙がつづられる3編の短編集。
たとえば、十年ぶりに出会った学生時代の友人に、
卒業してから今日までのエピソードを聞くのは、ありがちなこと。
かつてお世話になり、今は闘病生活を送っている恩師からの頼みを、
聞いてあげたいと思うのも、当然の心理。
海外の危険をともなう国でボランティア活動を始めた恋人に、
自分たちの気持ちを確かめあう手紙を送るのも、微笑ましいこと。
だけどそこには「裏」があったらどうだろう。
それぞれの主人公すら知らなかった「事件」の真相が、
手紙のやりとりによって明らかになったとき、
読み手はホッと胸をなでおろしたり、不安な気持ちに揺さぶられたりする。
なかでも3編目の『十五年後の補修』は、
十五年も付き合った恋人が突然、海外ボランティアに発つことから始まる。
日本に残された女性が、彼への思いを綴った手紙を送ると、
彼も彼女に負けず、ロマンティックな言葉を返してくる。
でも…、二人が出会った出来事について話が進んでいったとき、
思いもよらない「真相」がむき出しになり、
二転、三転する「事実」と、
彼と彼女の胸にある「隠された真意」の切り返しが見えてくる。
ラストは、ゾクッとしてホッとして悲しくなったりもして…。
でもこの『十五年後の補修』について一言だけ疑問を書いてみると、
あの事件で隠されていた彼女の行為、
果たして十五年前の彼女に、そんなことが本当に実現できたのかどうか、
そのあたりのリアリティが気になってしまったのだけれど…。
この『往復書簡』は、『告白』『夜行観覧車』のように
人間の悪意が潜んだ作品ではないのだけれど、
それでも「隠されている事実」が何なのか興味は募っていったし、
真相が見えたときに受ける衝撃は同じくらい大きかった。
「人間って、こんなものだよね」っていうダークな真実でなくても、
胸をつかれる人の姿があることに驚きました。
小説ってすごいし、
湊かなえさんの着眼点で描く「人間像」はやっぱり奥深い。
お久しぶりの、くるみより
純平副館長さん、お留守の間、ありがと~!!!
心と心がつながった、あの時の、あの人たちへ。
問いかけたいこと、確かめたいこと、
共有した「あの事件」について知りたいこと…、
何かしらの思惑をこめて手紙がつづられる3編の短編集。
たとえば、十年ぶりに出会った学生時代の友人に、
卒業してから今日までのエピソードを聞くのは、ありがちなこと。
かつてお世話になり、今は闘病生活を送っている恩師からの頼みを、
聞いてあげたいと思うのも、当然の心理。
海外の危険をともなう国でボランティア活動を始めた恋人に、
自分たちの気持ちを確かめあう手紙を送るのも、微笑ましいこと。
だけどそこには「裏」があったらどうだろう。
それぞれの主人公すら知らなかった「事件」の真相が、
手紙のやりとりによって明らかになったとき、
読み手はホッと胸をなでおろしたり、不安な気持ちに揺さぶられたりする。
なかでも3編目の『十五年後の補修』は、
十五年も付き合った恋人が突然、海外ボランティアに発つことから始まる。
日本に残された女性が、彼への思いを綴った手紙を送ると、
彼も彼女に負けず、ロマンティックな言葉を返してくる。
でも…、二人が出会った出来事について話が進んでいったとき、
思いもよらない「真相」がむき出しになり、
二転、三転する「事実」と、
彼と彼女の胸にある「隠された真意」の切り返しが見えてくる。
ラストは、ゾクッとしてホッとして悲しくなったりもして…。
でもこの『十五年後の補修』について一言だけ疑問を書いてみると、
あの事件で隠されていた彼女の行為、
果たして十五年前の彼女に、そんなことが本当に実現できたのかどうか、
そのあたりのリアリティが気になってしまったのだけれど…。
この『往復書簡』は、『告白』『夜行観覧車』のように
人間の悪意が潜んだ作品ではないのだけれど、
それでも「隠されている事実」が何なのか興味は募っていったし、
真相が見えたときに受ける衝撃は同じくらい大きかった。
「人間って、こんなものだよね」っていうダークな真実でなくても、
胸をつかれる人の姿があることに驚きました。
小説ってすごいし、
湊かなえさんの着眼点で描く「人間像」はやっぱり奥深い。
お久しぶりの、くるみより
純平副館長さん、お留守の間、ありがと~!!!