(有)山内牧場

青森県八戸市で競走馬生産をしている山内牧場の生産馬、繁殖牝馬、繋用種牡馬についてのブログです。

サラブレッドという生き物

2008-05-21 14:01:08 | Weblog
昨日の南関のあるレースで、お知り合いの馬主さんの持ち馬が競走中止になりました。(ウチの生産馬ではないのですが)かなりバタバタしていたのでどうなったか心配でしたが、その馬主さんから『決断しなければならない』との話を聞きました。
先日のキタノカーペンターといい、つい昨日一昨日のダイタクグレースといい、サラブレッドという生き物は本当に脆い生き物だと思います。ただ『速く走る』ということだけを究極の目的に血の改良を重ねられ続け、その細い四肢で500kg前後の身体を支えるというガラスの脚である宿命、馬に携わる人間すべてがある程度の覚悟を以って臨まなければならないことを痛感させられます。サラブレッドはその儚さゆえに美しいのでしょうし、人の心を捉えて止まないのかもしれません。
私が最初に馬の死というものに直面した記憶は、ノーパスシャドウという馬でした。ウチのかまど馬のシヤドウの仔で、母が勝った浦和桜花賞を3着し、その後も4歳牝馬路線(当時)で好走を繰り返していた馬でした。そしてクラスが変わった矢先に、レース中の怪我だったか調教中の怪我だったか…予後不良になってしまいました。『クラスが下がって楽に競馬できるはずだったのに…』と悔しそうに言った社長を今でも覚えています。シヤドウの後継として、繁殖入り後の期待もしていた馬だっただけに本当に悔しかったと思います。
無事出産をして、1歳まで育ち、育成に入って無事入厩・デビューを向かえ、無事に競走生活を終え、繁殖入りして(もしくは乗馬クラブ等、引退後の用途を見つけ)馬生を終える。こんな当たり前に思えることが、どんなに難しいことか、最近本当に考えさせられます。写真は1歳の2頭ですが、彼女たちもこれからどんな馬生が待っているのか…可能な限り見守ってやれたらと思います。
馬は経済動物、走ることができなくなったら、子孫を残せる一握りの馬を除いてはその存在価値を問われてしまいます。しかし、経済動物とはいえ、生き物です。馬にこれからどれだけ長く携わっていけるか解りませんが、馬に対する想いは変わらず持っていけるようにしたいと思います。