古庵の書斎 260 如意古庵
我が合唱団は毎週金曜日の練習後、常連10人ぐらいが栄は住吉町の中華料理屋「金盛園」へと繰り出す。そこでの話題は談論風発、とりとめもない年寄りの繰り言や馬鹿話に花が咲く。
ところで最近は、団の今後のことがよく話題になる。平均年齢75才か、私なんか若い方である。60才以上の男性というのが条件だが、最近はなかなか新人が入ってきてくれない。あと2年後には団創立20周年ということだそうだが、それまで団が持つかどうかケンケンガクガクである。
来年は団塊の世代が大量に退職し、巷に放り出される年である。なんとかこの人たちの何百分の一でも獲得するために呆け気味の頭をひねらなければならない。
このメールを読んでるあなたの回りに、誰かいませんかね。音符なんか読めなくても、声に自信がなくても、ましてや合唱経験が無くても全然かまいません。
歌うことが好きで、人と交わることが好きで、酒を飲むことが好きならなお結構。月会費2千円で、仲間ができて、ストレスが解消できたらこんな良いことはありません。年寄りの男ばっかりですから恥も外聞もないので気楽なものです。
今練習している曲は「小さい秋見つけた」「里の秋」「My Bonny」などです。大曲も良いところがありますが、こういう日本のなじみの曲も上手くハモるとなかなか良いものです。
2ヶ月に一度は老人ホームや病院の慰問に行ったり、たまには女性コーラスの発表会に賛助出演をしたり合宿もします。
市民コーラスとかグリーン・エコー(若い頃、私はここに所属していた)といった大合唱団も良いですが、男ばっかりのこぢんまりした合唱団も良いものですよ。
練習会場は栄のど真ん中、丸善前の朝日神社の社務所です。年寄りはせっかく敬老パスがあるのですから、週に1回ぐらいはそれを使って栄に出るのも良いですよ。
あなたの回りで退屈しているお年寄りがいましたら、是非ご連絡下さい。
○ 私は安楽椅子登攀者
若い頃、スキーで左足の膝をねんざして痛めたのが祟ってか、60代以降下りで難儀するようになって、もう高い山には登れない。明日も孫を連れて低い山に行くつもりだが、せいぜい千㍍ぐらいの山しか登れない。
今は安楽椅子登攀者(アームチェア・クライマー)である。つまり、自分自身は山登りなどしないが、他人の書いた登攀記を読み、写真や地図を眺めてあたかも自分が登ったかのような気分に浸る、そういう人間のことだ。
この夏読んだ山の本の二・三を紹介する。
「私の南アルプス」 共産党委員長 不破哲三氏著
主義主張はともかく、私はこの人を尊敬しているし、南アルプスという山も大好きなので読んでみた。
この山の特徴の第1は山の懐が深いことである。静岡県側からでも長野県側からでも非常に長い登りを強いられる。それも深い樹林帯の中をである。
第2に人が少ない。中高年の団体はまず登ってこない。よって山が静かである。北アルプスなんか登坂路も山小屋の中も高年女性のお喋りには辟易。
南は大学のワンゲルや高校生の団体も登ってくる。彼等はあまり喋らないし、その会話は聞いていて楽しい。
第3はお花畑が素晴らしい。第4は山小屋が良い。熊ノ平小屋なんか夕食に揚げたてのテンプラが出た。この小屋の女主人はアメリカ人です。
嫌なことはただ1つ、山ヒルに食いつかれることである。不破氏も本の中で触れているが、私は実際にやられた。小屋に着いたらパンツが真っ赤っか、仰天したのを覚えている。
それら、だいたい私の思いと同じことが綴られている。 久しぶりに清々しい本を読んだ。
「北壁の死闘」 ボブ・ラングレー著
久しぶりに手に汗握る山岳小説。北壁とはアイガー北壁のこと。一度眺めたことがあるが、あんなところを厳冬期、猛烈な吹雪の中を登るヤツが居る。半分事実、半分はフィクション。このクソ暑い残暑の中でも一気に読めるスリリングな場面の連続。
「脱出記」 スラヴォミール・ラウィッツ著
旧ソ連当局にスパイ容疑で逮捕され、シベリアの強制収容所へ送られた6人の仲間たち。極寒のシベリアから酷暑のゴビ砂漠、チベット高地やヒマラヤの山岳地帯を超えてインドまで歩き通した実際にあった話。山の本ではないが、私はこういう極限にさらされた人間の生き様を記したドキュメンタリーが大好きです。