古庵の書斎から

日々のエッセイ

古庵の書斎 260

2011-09-26 07:10:22 | 日記・エッセイ・コラム
               古庵の書斎 260             如意古庵
 我が合唱団は毎週金曜日の練習後、常連10人ぐらいが栄は住吉町の中華料理屋「金盛園」へと繰り出す。そこでの話題は談論風発、とりとめもない年寄りの繰り言や馬鹿話に花が咲く。
 ところで最近は、団の今後のことがよく話題になる。平均年齢75才か、私なんか若い方である。60才以上の男性というのが条件だが、最近はなかなか新人が入ってきてくれない。あと2年後には団創立20周年ということだそうだが、それまで団が持つかどうかケンケンガクガクである。
 来年は団塊の世代が大量に退職し、巷に放り出される年である。なんとかこの人たちの何百分の一でも獲得するために呆け気味の頭をひねらなければならない。
 このメールを読んでるあなたの回りに、誰かいませんかね。音符なんか読めなくても、声に自信がなくても、ましてや合唱経験が無くても全然かまいません。
 歌うことが好きで、人と交わることが好きで、酒を飲むことが好きならなお結構。月会費2千円で、仲間ができて、ストレスが解消できたらこんな良いことはありません。年寄りの男ばっかりですから恥も外聞もないので気楽なものです。
 今練習している曲は「小さい秋見つけた」「里の秋」「My Bonny」などです。大曲も良いところがありますが、こういう日本のなじみの曲も上手くハモるとなかなか良いものです。
 2ヶ月に一度は老人ホームや病院の慰問に行ったり、たまには女性コーラスの発表会に賛助出演をしたり合宿もします。
 市民コーラスとかグリーン・エコー(若い頃、私はここに所属していた)といった大合唱団も良いですが、男ばっかりのこぢんまりした合唱団も良いものですよ。
 練習会場は栄のど真ん中、丸善前の朝日神社の社務所です。年寄りはせっかく敬老パスがあるのですから、週に1回ぐらいはそれを使って栄に出るのも良いですよ。
 あなたの回りで退屈しているお年寄りがいましたら、是非ご連絡下さい。
○ 私は安楽椅子登攀者
 若い頃、スキーで左足の膝をねんざして痛めたのが祟ってか、60代以降下りで難儀するようになって、もう高い山には登れない。明日も孫を連れて低い山に行くつもりだが、せいぜい千㍍ぐらいの山しか登れない。
 今は安楽椅子登攀者(アームチェア・クライマー)である。つまり、自分自身は山登りなどしないが、他人の書いた登攀記を読み、写真や地図を眺めてあたかも自分が登ったかのような気分に浸る、そういう人間のことだ。
 この夏読んだ山の本の二・三を紹介する。
 「私の南アルプス」 共産党委員長 不破哲三氏著
 主義主張はともかく、私はこの人を尊敬しているし、南アルプスという山も大好きなので読んでみた。
 この山の特徴の第1は山の懐が深いことである。静岡県側からでも長野県側からでも非常に長い登りを強いられる。それも深い樹林帯の中をである。
 第2に人が少ない。中高年の団体はまず登ってこない。よって山が静かである。北アルプスなんか登坂路も山小屋の中も高年女性のお喋りには辟易。
 南は大学のワンゲルや高校生の団体も登ってくる。彼等はあまり喋らないし、その会話は聞いていて楽しい。
 第3はお花畑が素晴らしい。第4は山小屋が良い。熊ノ平小屋なんか夕食に揚げたてのテンプラが出た。この小屋の女主人はアメリカ人です。
 嫌なことはただ1つ、山ヒルに食いつかれることである。不破氏も本の中で触れているが、私は実際にやられた。小屋に着いたらパンツが真っ赤っか、仰天したのを覚えている。
 それら、だいたい私の思いと同じことが綴られている。 久しぶりに清々しい本を読んだ。
 北壁の死闘」 ボブ・ラングレー著
 久しぶりに手に汗握る山岳小説。北壁とはアイガー北壁のこと。一度眺めたことがあるが、あんなところを厳冬期、猛烈な吹雪の中を登るヤツが居る。半分事実、半分はフィクション。このクソ暑い残暑の中でも一気に読めるスリリングな場面の連続。
 「脱出記」 スラヴォミール・ラウィッツ著 
 旧ソ連当局にスパイ容疑で逮捕され、シベリアの強制収容所へ送られた6人の仲間たち。極寒のシベリアから酷暑のゴビ砂漠、チベット高地やヒマラヤの山岳地帯を超えてインドまで歩き通した実際にあった話。山の本ではないが、私はこういう極限にさらされた人間の生き様を記したドキュメンタリーが大好きです。

古庵の書斎 259

2011-09-12 12:27:43 | 日記・エッセイ・コラム
                古庵の書斎 259            如意古庵
 今日は私事で恐縮。実は私、かなり悪性の前立腺ガンと宣告されました。去年の暮れ、市の特定検診のついでに癌の検査を受けたのが運のツキ。
 悪性というのはガン細胞の顔つきが悪いということ。正確にはグリーソンスコア(この意味わからない)が2から10まであるのですが、最悪のレベル10と云われました。
 以来、検査検査であちこちの病院をたらい回しされたあげく、やっと八事日赤で治療を受けることになりました。
 今年に入って化学療法を3ヶ月毎に受けてきました。なんのことはない、女性ホルモンを体内に埋め込むのだ(注射とはちょっと異なる)。で、それから体が少しおかしくなりました。下っ腹がせり出してきた、頬がふっくらしてきた(天皇陛下がそうだ)、1日に4・5回ブワァーと汗が出るとかです。要するに女性の更年期症状というやつらしいのです。
 そして、やっとこの9日から放射線治療が始まりました。午後の2時からですが、その2時間前から小便はするな、ガスと便は出しておくようにと難しいことを課されました。
 トモ・セラピー(強度変調放射線治療)と言ってCTの装置に入るのと同じ要領。照射そのものは10分くらいか、あっけなく終わりました。
 問題はそれが終わった後でした。書類を持って会計に行き、バーコードの紙切れをもらって現金支払機にかざしたら、なんと2万9千なにがしと表示されました。そんな大金今日は持ってませんと泣きついたら、次回来るときで良いですよと云われてホッとするやら、ガッカリするやらでした。 
 とまあ、こう書くと大変なように思われますが、毎日テニスはできるし酒は飲めるし、普通の生活をして良いと言われました。悪性と云われても痛くも痒くも何ともありません。自覚症状がまったくないのです。むしろ、ホルモン注射を打ってから体調がおかしくなったくらいです。暮れに下手な検査なんか受けなければピンシャンしていたことでしょう。
 心強いのはテニスや合唱の仲間にかなりの同好の志?が居て、こんなことで話題が盛り上がるのです。ちょっと変ですね。
 昨日もラジオ体操が終わったあと、今まで言葉を交わしたことのなかった人から「これから大変ですねえ」と声をかけられた。狭い如意村のことだから、話しは尾ひれ羽ひれがついて直ぐに広まるのだ。そして「いやいや、それほどでもないんですよ」から始まって、ひとしきり前立腺談議となりました。こんなことでも、人の輪は拡がるものですね。
 とまあ、こんな具合でこの病気とも今後長いつき合いになりそうです。みなさん、心配しないでください。
○ 内閣支持率
 菅内閣の10数%から野田首相になって一気に60%に跳ね上がった。まだ何にもしていないにもかかわらずだ。ま、誰の時もそうなのだから目くじらを立てることもないのだが、この世論というやつのいい加減さは知っておくべき。
 ヒトラーが政権を取る直前の選挙支持率は実に99.7%でしたからね。国民はいつでも何処の国でも浮気で、熱し易く冷め易く、そして忘れっぽいのだ。
 
○ 敬老パス
 名古屋市では65才以上の市民に年1~5千円の負担で地下鉄・市バスの乗り放題の敬老パスがいただける。観光地や名物で全国に自慢できるものがほとんどない名古屋で唯一誇れるものがこの敬老パスだと思っています。
 これは、かっての革新本山市政のもとで実現した貴重な遺産である。
 市内の移動はこれで全部済んでしまう。年寄りが気軽に外へ出かけられるのは健康や呆け防止のためにも良いことだ。全国の大都市でこんな制度はないだろう。
 毎朝、ラジオ体操で顔見知りになった御仁。名古屋市と道一本隔てて春日井市に住んでいるのでその恩恵がない。ぼやくことしきりだ。
 私は毎週の金曜日、合唱の練習のために栄に出かけるので、これはほんとに有り難いと思いながら使っている。
 これが今、危機にある。国にならって名古屋市は市民に「事業仕分け」をしてもらおうということで、その対象の事業に敬老パスがあがっているのだ。
 どのように仕分けされるのか、これから目が離せない。まさか、全廃ということはないだろうが、対象年齢が繰り上げられるとか、負担の5千円が引き上げられることは考えられる。なるべく穏やかな線に落ち着いてもらいたいものだ。

古庵の書斎 258

2011-09-05 07:08:20 | 日記・エッセイ・コラム

             古庵の書斎 258         如意古庵

 紳助と暴力団の関係が週間誌を賑わしている。そこで思い出した。
 先日、イタリアはシチリア島に行った時のこと。シチリア島というと誰しもマフィアを思い浮かべるでしょう。現地でもその説明がありました。
 このマフィアと日本の暴力団が同じものかどうかわかりませんが、ケタは違うようです。
 何年か前、そのマフィアの親分だか誰かが逮捕されて裁判になった。そして死刑にした。そしたら、その裁判官が後日マフィアの組織に殺されてしまったというのだ。これは恐い。その後その裁判官は名誉市民としてどっかから顕彰されたというが。
 説明の最後に、みなさんは心配しなく良い。ここのマフィアは外国の旅行客を狙うようなそんなチャチなことはしないと言って安心させてくれました。
 もう一つ、私の家からそう遠くないところに暴力団かやくざのお家がある。図書館の行き帰りに、よくその前の道を通るのだが、一風変わった造りになっている。
 南に面した1階部分は全面シャッターでいつも閉めきられている。その両サイドと2階、には防犯カメラが道行く人を睨んでいる。よく見たら裏にも2個付いていた。川を挟んで30㍍位のところには楠小学校の正門がある。いいんだろうか。
 
○ 時津風親方に実刑
 時津風部屋の力士だった若者を、親方が兄弟子に命じて殴るけるの暴行をさせて死亡させた事件。当初愛知県警犬山署は事件性はないと判断したが、死因に不審をもった両親が新潟大に鑑定を依頼、暴行による外傷性ショック死と判明。そして親方の実刑が確定した。
 私はこのこと自体別に感想もないが、この事件についての警察の初動捜査の怠慢は許せない。それは部屋から死亡の届けを受けたとき、犬山警察は部屋の言い分を鵜呑みにしてけいこ中の不慮の事故として処理しようとしたことだ。
 その背景として、犬山署幹部達は部屋に招かれてちゃんこ料理(当然アルコールも)を振る舞われている事実があるのだ。おそらく名古屋場所の度に犬山近くに置いたその部屋との長い慣例となっていたのだろう。要するに時津風部屋と犬山署幹部はナアナアの関係だったのだ。それが初動捜査を遅らせ、親が不審に思わなければヤミに葬られていただろう。警察幹部がこんなことをやっていたんでは、客観的で公正な捜査は望むべくもない。 
 私はこの警察幹部も処罰すべきと思うのだが。
○ 戦争について
 この9月18日で満州事変(実は戦争)につながる柳条湖事件80周年である。この事件をきっかけとして日本は長く辛いアジア・太平洋戦争に突っ込んでいく。
 そのせいか、このところ戦争の悲惨さを伝える書、記事が少なくない。広島・長崎の原爆、ソ連のシベリア抑留、ガダルカナル島の戦いと。しかし、だいたいにおいてそれらは日本側から見ての記述であって、日本(日本人)がいかに悲惨な目にあったかという視点で描かれている。
 ところで最近、私は「ゴースト・ソルジャー」という本を読んだ。アメリカ人が書いたもので、フィリピンのバターン半島での「死の行進」として知られる日本軍によるアメリカ兵捕虜の虐待と、それを救出するアメリカの作戦を描いたものである。
 そこには命乞いをするアメリカ兵を日本兵が刀でいとも簡単に首を切り落とす場面や、食糧も水も満足に与えないで飢え死にさせていくことが詳細に書かれている。
 日本人としてこういうのを読むのはあまり気分のいいものではない。ひょっとしたら私の叔父さん(2人、南方で戦死している)もと思うとなおさらだ。 しかし、こういう視点からの戦争の描写を読むのも大切なことだと思う。
 戦争だから双方かなり残虐なことをやったのは否めないが、捕虜の扱いについては日本軍よりアメリカ軍の方がはるかに人道的であったというのが私の結論。