御鏡壱眞右往左往

繰言独言、謂いたい放題・・・

少し真面目に考えてみる

2006-11-05 08:46:49 | 環境・農業

実は世界レベルでも農産物供給は逼迫傾向が続いている。
その背景には人口増加と、BRICsの消費拡大がある。
加えて、バイオエタノールを始めとする燃料への供給急増の問題もある。
本年は、熱暑の影響で穀物の生育は良好といい難く、
経済紙等では麦類の相場が大きく上昇することを懸念しているようだ。

穀物に注目すると、
実は世界レベルではついに消費が生産を上回る事になりそうだ。
FAO(国連食糧農業機関)の予想によれば、
'06年の穀物生産は2,020百万トン(前年比△0.9%)、
これに対し消費は2,062百万トン(前年比1.6%増)、
見込み充足率は約98%となっている。
もちろん、現状で461百万トンの在庫があるので、
すぐに需給が問題となるわけではないが、
在庫も減少傾向を続けていることは知っておく必要がありそうだ。
特に問題が顕在化しているのがトウモロコシだろう。
生産について言えば近年は記録的豊作が続いているとされるが、
食生活の変化(食肉消費の増大=飼料消費の増大)と
工業需要(エタノール原料)の増大に追いついていないのが現状であるとされる。

最近、国内の人口は減少に転じたとの報道があったが、
世界的に見れば今後も増加の傾向は続きそうである。
食生活について見ると、
特にBRICs、中でも中国、インドの変化が著しい。
経済成長期の只中にあるこれらの国では、
総カロリーはもちろん、油糧作物、動植物油脂、肉類、乳製品、卵等の消費が著しく増加し、
欧米型の食生活に近づいている傾向が見える。
その一方で、特に中国で顕著なのだが、
消費量が増加するのに対し自国内での生産量は減少傾向にある。
この部分は日本もかつてたどった道であるが、
中国の場合は更に耕地の砂漠化などの問題もあり、より一層深刻だと言えるだろう。
実際、中国の貿易収支は赤字となっているが、
これは急増した食料輸入額が輸出の伸びをはるかに凌駕したことを意味する。

先に述べたトウモロコシについて、
実は中国は世界第2位のトウモロコシ生産国である。
にもかかわらず、今年の3月から一時的にではあるが、輸出停止措置を取っている。
それほど国内需給が逼迫しているということだろう。
これは、食肉消費、特に牛肉消費の拡大によるものだ。

世界第1位のトウモロコシ生産国は言うまでも無く米国だが、
こちらで課題となるのはエタノール需要である。
バイオ燃料エタノールへの転換は今後十分に検討に値する問題だと信じるが、
食糧問題と絡めるとまだ大きな課題を残している。
'05年の時点で米国産トウモロコシの12%程度がエタノール向けに使用されたそうだ。
これにより約13百万キロリットルのエタノールが生産された計算になる。
米農務省によれば、
'10年頃にはこの倍量の生産を可能にするだけの設備が整備される見通しで、
これが全て稼動すれば、ほぼ倍の66百万トンのトウモロコシが使用されることになる。
米国におけるトウモロコシの生産性は向上している(GM品種による単位面積あたりの収量増等)が
作付面積は頭打ち(特に地下水資源の枯渇などの問題が大きい)なので、
中国が純輸入国に転落しそうなこととあわせると
食糧需給に与える影響は極めて大きい事になりそうだ。
ただ、バイオ燃料エタノールについては
セルロース系エタノールの開発に関する研究も始まっているので、
期待をもって経過に注目したい。

もうひとつ無視できないのが天候要因である。
本年も記録的な熱暑で欧米の麦が大きな打撃を受けたことは前述のとおりだし、
ここに来て豪州も熱暑と乾燥により作柄が良くないとの情報が入っている。
これらは単発的な気象変動であるとしても、
温暖化の傾向は早晩に終息を見るとは思えない。
しかし私がまだ小学生くらいの頃は、
現代は間氷期(氷河時代のうちで氷期と次の氷期との間の、比較的気候が温暖な時期)だと言われ
冷害が問題にされていたのだが、
いつの頃からか温暖化の方が問題になってしまった…何事も過ぎたるは尚及ばざるが如し。
加えて天災なども、
現代のように流通チャンネルが世界規模で展開されていると
何処から何が波及してくるか、予想もつかないところから痛撃をもらうことがある。
如何に経済力があっても、無いものを入手することはできない。軍事力も然り。

事程左様に食糧というのは大きな問題である。
確かに現在の自給率40%の計算の仕方には異論もあってしかるべきだが、
食糧供給の大きな部分を海外に依存している事実は動かし難い。
世界の食糧事情は同時に国内の食糧事情でもある。
まして四方を海に囲まれた日本、
水産資源さえ枯渇が懸念される現在、
少しでも自給率を上げ、同時に無駄を無くしていくことは絶対に必要なことだ。

自給率を上げるには
自給できるものを中心に据えた消費形態を再構築することが肝要だろう。
「地産地消」という言葉には少々余計な手垢がついた感があるのだが
考え方の基本としてはこの線が一番妥当だろう。
コメを主体とし肉類、特に牛肉食を減らすような食生活が求められていくのではないだろうか。
少なくともアトキンスダイエットなんぞやっている場合ではない。

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