御鏡壱眞右往左往

繰言独言、謂いたい放題・・・

やっと梅雨明け

2009-08-05 22:38:05 | 環境・農業
もっとも、梅雨明け宣言というのは立秋までにされるそうで
立秋を過ぎても梅雨が明けなかったという例もあるらしい。
(この場合は梅雨明け宣言そのものが無い)

梅雨というのは基本的に雨模様であるから
当然のこととして日照時間が少なくなる。
日照時間が少ないと光合成の能力が低下することになり
植物は炭酸ガス同化量が低下し、同化養分の蓄積が不良となる。
農作物の場合は、これはそのまま生育不良→収穫量や品質の低下に直結する問題である。

が、この問題に一筋の光明が差し込んでいる。
そしてその明かりはピンク色をしているらしい…


光合成促すピンクの力 野菜・果樹で成果 フィルム、ネット開発/諏訪東京理科大など
日本農業新聞09-08-02

 諏訪東京理科大学(長野県茅野市)とマテリアルサイエンス・ナガノ(同県岡谷市)は、野菜や果樹などを覆って光合成を促すピンク色のフィルムとネットを共同で開発した。原料のプラスチック樹脂に特殊な蛍光染料を混ぜた。太陽光を農作物が取り込みやすい波長の光に変換し、昨年からの現地試験では増収や栽培期間の短縮、糖度の上昇などの成果が出た。同社は光変換光合成促進農法(通称=ピンク農法)と名付け来年から販売する。

 植物は一般に、光合成をする際に赤色帯域(580~780ナノメートル)の広範囲の波長を利用する。開発した素材は、波長を変換する素子が組み込まれ、青色帯域(380ナノメートル付近)の波長を赤色帯域に変える。

 同大システム工学部の谷辰雄教授は「染料の中の電子が光エネルギーに反応して赤色を帯びる」とメカニズムを説明。この働きで、太陽光が少なくても、植物は効率的に光を吸収することができるという。フィルムはハウスのビニールの代替として、ネットはトンネルやマルチに利用する。

 フィルムの試験に協力する長野県原村のセロリ農家、永田広幸さん(61)せつ子さん(55)夫婦は「幾分、成長が早くて軸が太く、葉色が濃くなった気がする」と話す。

 同社は「耐久性は3年。市販の資材と比べ4割程度高い価格で販売する予定。リースも検討している」と話している。

写真はこちら(読売オンライン)より


なかなか面白そうなのでいろいろと調べてみると、
透過する光の波長そのものを変えているらしい。
「光変換光合成促進農法」として特許出願しているようだ。 赤い蛍光染料で光合成を促す赤色帯の光を人工的に増幅させるというわけだが
蛍光物質というのは高エネルギー(短波長)の光を、より低エネルギー(長波長)の光に変えるわけだから、 青や緑の光がよりエネルギーの低い赤色に変えられる、というのはなるほど言われてみればわかる話だ。

開発に携わった㈲マテリアルサイエンスナガノはもともとはDVD素材の樹脂加工会社だそうな。
この蛍光染料、太陽電池の発電効率の増加に使用される光変換素子のひとつで
どうやら有機化合物の半導体利用資材でありもともとプリンタの染料インクに使うものと同じらしい。
だとすれば安定性もそれなりにあると考えて良さそうだ。

写真を見る限り透過光量の減衰率が少し気になるが、
そのあたりはこれからのデータの蓄積と商品展開に期待というところだろうか。


ただ、光合成=光呼吸は、
(当然のことだが)化学反応である以上は質量保存の法則が絶対的に適応される。
即ちいかに光の効果(投入エネルギー量)が高くても
原料となる二酸化炭素と水の量によって上限は制限されることになる。
普通、強光条件下の光合成効率は二酸化炭素濃度に制限されるといって良いだろう。
無論そのあたりは植物(作物)によっても様々であり、C4植物あたりではこの資材、極めて効果的と言えるかもしれない。
二酸化炭素に関しては一応現場では炭酸ガスボンベ等による二酸化炭素放出装置というシロモノも使われてはいるが、
温室内が頻繁に強制的に換気されることなど考え合わせれば、
二酸化炭素施用の効果のほどは正直疑問だ。
そのあたりまで勘案したときには、4割高という価格設定がどのように作用するだろうか。

いずれにしても、注目していきたい技術だ。

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