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ぶらつくらずべりい

短歌と詩のサイト

短歌人12月号「会員2」辻和之

2011-12-11 02:30:29 | 平成23年短歌人誌より
彼はまだ出航しない青インク、もう乾かない灰に似ている

証人、連行、点呼、密告。今回の一連に出てくる言葉である。作者の手法はとても新しい。(新しいと言えるのは過去をよく知っていることだから、私の知る範囲で新しいということ)
言葉の溶接ラインが見えないのだ。彼なのに出航、出航なのに青インク、青インクなのに乾かない灰に似ている。
私は「乾かない灰」から「青インク」で書かれた手紙を燃やした灰を濡らした場面を想像し「まだ出航しない」から、その手紙は出されなかったと感じた。そして、最後に「彼」だ。彼は手紙なのだ。男ではない。
私は私の知らないうちに手紙にされていた。
どこに連れていかれるか、何にされるか分からない短歌。
そんな短歌はあったのか。

短歌人12月号「黄金の秋」猪幸絵、同人2

2011-12-10 08:27:57 | 平成23年短歌人誌より
ベランダのコンクリートにへばりつく髪の毛数本あって取れない

何の変哲もない日常だけれどこの一首、どこか狂気を感じないだろうか。髪の毛が取れない。その事実だけであり、感情を表す言葉はない。通常あるべき言葉がなければ人は補う。その補うというプロセスが読む人それぞれの実感になる。

短歌人12月号「桃花心木のピアノ」若尾美智子、12月の扉

2011-12-08 05:51:17 | 平成23年短歌人誌より
大人にはなかなかなれず少女から老女になるのはたやすいような

大人とは一体なんなのか。少なくとも歳を経ればなれるものではないと思う。大人とは意識してなるものなのだ。しかし、少女は生まれながらに少女だし、老女の場合は否応なしに老女になってしまう。強い実感がある一首だ。