短歌人12月号「断簡」泉慶章、同人1 2011-12-06 07:00:17 | 平成23年短歌人誌より 官能の物体ひとつ浸潤しわが身は魚の呼吸してあり 「あり」の把握に痺れる。「おり」なら普通でこの一首の客観性は失われる。この「わが身」はペニスだと思う。それを濡らす物体。水と魚。とてもエロチックだ。
短歌人12月号「九月の紫陽花」黒崎聡美、卓上噴水 2011-12-05 05:54:28 | 平成23年短歌人誌より ソファーから脚を伸ばせば日焼けした首筋までの遥かなる距離 鏡でも見ない限り自分の首筋は見えない。けれど、日焼けをしていればその存在を強く感じる。見えている脚から感じている首筋までの距離感。それを発見した繊細な把握。
短歌人12月号「会員1」勺禰子 2011-12-04 06:34:58 | 平成23年短歌人誌より 重吉のやうに光に「いつまでもかなしかれ」とただ貫かれゐる この一首にあるのは強く生きるための諦めだ。何かを述べるより八木重吉の詩を。 貫(つら)ぬく 光 はじめに ひかりがありました ひかりは 哀しかつたのです ひかりは ありと あらゆるものを つらぬいて ながれました あらゆるものに 息を あたへました にんげんのこころも ひかりのなかに うまれました いつまでも いつまでも かなしかれと 祝福(いわわ)れながら 八木重吉「秋の瞳」 例えば宇宙のような湖に潜ったとして、今から水面に上がれば息をすることが出来て助かる。けれど、あまりに底の光景が美しいので手を触れてみたくなり、生きることを放棄してより深くまで潜る。 そんな危険なダイビングを見ているみたいな詩だ。
短歌人12月号「会員1」三島麻亜子 2011-12-03 04:51:31 | 平成23年短歌人誌より さらに遠く道あることの寂しさや落ち蝉ひとつ跨ぎてゆかむ 作者の短歌はとても静かだ。多分、一人で一人をしっかり考えているからだと思う。 この落ち蝉を「ひとつ」と数えること。一匹ではなくひとつなのだ。死は蝉を物に変えてしまう。なぜなら、「さらに遠く道」があるからだ。立ち止まれない、立ち止まらない人間の性が表現されている。
短歌人12月号 2011-12-02 05:53:08 | 平成23年短歌人誌より 題詠blog2011、046~060 046:奏 聞いてると手先が熱く熱くなるあなたがベッドで奏でるウクレレ 047:態 右の翼、左の翼。本当にどっちでもいい態度であなた ○048:束 後ろ手にあなたは髪を束ねつつ夜の気配を綺麗に消した 049:方法 疾駆するキリンのように見つめてた。あなたを忘れる方法がない ○050:酒 起きぬけにあなたと酒をひっかけて心中ごっこをした冬炬燵 051:漕 うつらつら真昼間から漕ぐ舟にあなたを乗せて電車は進む ○052:芯 ばぁちゃん子そんな気がしたキャンドルの芯を摘んで消したあなたを 053:なう なうなうなあなたはかるくねいきたてうなうなうななねむるうなうな 054:丼 どんぶりにふたをしているようなものあなたは静かに湯気を上げてる 055:虚 サバンナを自由に駆けていたあなた。叫べ、ニッポンの虚空に向かい 056:摘 菜の花を摘むことなかれあなたにはただの花でも僕には違う ○057:ライバル ライバルにならないなんていいながら火箸のように見ているあなた ○058:帆 遠くだけあなたは見つめ行けばいい帆はいつまでも僕が見ている 059:騒 空騒ぎ冬物語テンペストあなたへの風お気に召すまま ○060:直 一輪車漕いでるように真っ直ぐにあなたは行き先だけを見ている