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ぶらつくらずべりい

短歌と詩のサイト

短歌人12月号「会員1」弘井文子

2011-12-17 07:55:43 | 平成23年短歌人誌より
おかあさんがいつとう好きな長の子が赤子をいだく細きかひなに

「いつとう」が「いちばん」ならこの切なさは半減したと思う。この一首には「おかあさんがいつとう好きな長の子」とそのお母さんの愛情を奪ってしまう赤子が登場し、その上細い腕に抱き子守をしている。その姿がいじらしく切なさを生む。
「いつとう」や「長の子」「かひな」の言葉や調べから民謡を感じた。

短歌人12月号「会員2」木嶋章夫

2011-12-16 05:58:32 | 平成23年短歌人誌より
吊革からむしろ僕から手を離さないでください出発します

初句の6音、3、4句「手を離さ/ないでください」と計算ではないだろう。狙いなしに切実な感情が噴出した。切実で剥き出しの孤独を感じるのはこのドライブなリズムのためだろう。
そういえば、先月号も電車だ。

寄りそって走るふたつの電車みて共に生きたいおもいあふれる

電車はほとんどバックも停車もしないしスピードも速い。そんな所と作者のイメージを勝手に重ねてしまう。

短歌人12月号「日々抄」小池光、同人1

2011-12-15 04:53:42 | 平成23年短歌人誌より
①わが妻をいまはおもはず夕方に洗濯物を取り入れてをり

「おもはず」と言うことによって思わなかった妻の姿を想像する。妻がしていたであろう洗濯物を取り入れていればより一層感慨が深くなる。しかも、夕方である。

②右の手は左手を扶けひだりの手右手を扶く沁みておもへる

①を読んで②を読めばこの一首とても切ない。なぜならもうどちらかの手は遠くあるからだ。作者の顔やこちらの勝手な作者のイメージが切なさを強くする。
出来る限り作者の情報は短歌を通して知りたい。直接会えば読む時に眼鏡をかけてしまうからだ。

短歌人12月号「ささやかな風景」高田薫、12月の扉

2011-12-13 05:48:35 | 平成23年短歌人誌より
眠る前の耳に流れる水の音生まれる前の記憶みたいに

本当に静かな寝室は耳に血液の流れる音が聞こえる。いつかそれを表現したかったが先に詠まれた。しかし、私が詠むより私の実感を言い当てられたから満足だ。今後、この音を聞く度に生まれる前にも聞いていたと思うだろう。

短歌人12月号「会員2」高松霞

2011-12-12 08:09:48 | 平成23年短歌人誌より
「おかえり」と「ただいま」の後いくつかの花が初冬の空気に触れた

この「いくつかの花」は部屋に飾られているのだろう。「おかえり」と「ただいま」と言うために玄関に迎えに行く。すると、戸が開き初冬の空気が流れ込む。私はこの「初冬の空気」から夫の姿が浮かんだ。