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ぶらつくらずべりい

短歌と詩のサイト

短歌人12月号「会員1」砺波湊

2011-12-23 05:55:23 | 平成23年短歌人誌より
なんだ海じゃないのか、という音させて夜更けにわたしの窓叩く雨

この「わたしの窓」はわたしの部屋の窓だろうか。この雨もだ。私は実際の窓であり夢の中の窓でもあると思う。うつらうつらしている状態で聞く雨の音なのだ。
だから、「なんだ海じゃないのか」と聞こえた。
まるで雨は海に落ちたかったみたいだ。

短歌人12月号「夜霧」藤原龍一郎、同人1

2011-12-22 04:53:27 | 平成23年短歌人誌より
水曜日週の半ばと疲れたる身は廃船のごとく揺らげる

水曜日にもはや廃船のごとくなる程、疲れている。これから先がどうなるのか心配だ。だが、この一首の臍はそこにはない。「揺らげる」にある。
「揺られる」ではない。「揺られる」なら何か乗り物等外界の力に揺らされることだが、「揺らげる」なら自身の体のみの影響で揺らいだということだ。しかし、自身の意思で揺らいだのではない。廃船なのだから。

短歌人12月号「会員2」田宮ちづ子

2011-12-20 05:52:48 | 平成23年短歌人誌より
<お母さんはしーんとしてなきゃ>シーンとしたるその果てのことも知らずに

<お母さんはしーんとしてなきゃ>
幼い子が何かのゲームをしていて、母にシーンとするように頼んでいるように読める。けれど、最後まで読むと母の死が暗示されている。
この一首、とても大きな不安を感じる。内容もさることながら、韻律がそうさせるのだ。
作者の不安が逆に母への愛を感じさせる。

短歌人12月号「会員2」田平子

2011-12-18 05:55:08 | 平成23年短歌人誌より
空うつす水の面(おもて)のような空くもをうかべて秋の空あり

現実の反転がある。「空をうつす水の面のような空」、「空うつす水の面の空模様」ではない。そこが、この一首の謎であり謎に引き込まれていろいろと考える。私もよく空を見るから秋空の美しさは感じている。ただ秋空はあまりに美しくてどこかほんの少し過剰だと思う。そこを「水の面」と表現したのではないか。