every word is just a cliche

聴いた音とか観た映画についての雑文です。
全部決まりきった常套句。

グッバイ・ビッグ・バンド

2009-04-01 | TECHNO

Matthew Herbertは鬼才、奇才、天才の名を欲しいままにしているし、実際それに見合う才能の持ち主だと思う。
オイラとしても彼のプロジェクトから名前を頂戴しているくらい思い入れがある。

殆どのリリース(Remix含み)を聴き、来日の際には会場に足を運んでそのパフォーマンスを見てきた。
そのリリースごとに新しいスタイルやアイディアが詰め込まれ、パフォーマンスも見るたびに進化する(そして過去のスタイルを振り返ることは無い)。
その歩みをリアル・タイムで体験できることに喜びを感じられる数少ないアーティストだった。

だったと過去形で書くのは、正直抵抗がある。
何せ"wishmountain"を名乗っているくらいなのだ。


Roisin Murphy『Ruby Blue』は見事なポップ・アルバムだったし、『Goodbye Swingtime』でのスウィング・ジャズへの挑戦もそれは見事だった(Blue Noteのライヴも素晴らしかったものなぁ)。

が、またエクレティックなエレクトロニックの世界を見せて欲しいという思いが強くあるというのが正直な気持ちだ。

スウィング・ジャズや映画音楽など洗練されていく姿を見てみたいというのもあるけれど。
何しろミニマルハウスやクリックハウスの雛形を用意したひとりでもあるのだ。
まだ彼は「Moving Like A Train (Smith N Hack Remix)」(近年最高・最強の曲のひとつ!)のようなブッ飛んだ狂気を秘めているハズだ。




『There's Me And There's You』を聴くのが遅れたのもそういう流れがあるからだ。
『Goodbye Swingtime』を更にポップにした『There's Me And There's You』は50年代のアメリカが一番輝いていた時代を思い起こさせるし、実際優れたポップスとして機能するだろう(*1)。
しかし、そこにはDr.Rockitで見せたようなファンタジーもRadioboyで見られるような凶器も感じることは出来ない。

Herbertには何かを彷彿させるような音楽ではなく、目から鱗が落ちるような新しい風景を見せて欲しい。
だから、ビッグ・バンドにさよならしてもらいたいなぁと思い入れの強いファンとしては身勝手に思うのだった。

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Bodily Functions

Goodbye Swingtime


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