
とおちゃんの映画感想ですニャ!! 読んで得してニャ!!
「天使と悪魔」 天使と悪魔、それが共存する人間という存在
魅力度★★★(最高5)
1.まずひと言
教皇が逝去しヴァチカンで次の教皇を決定するコンクラーベが行われました。表面的には何事もなく粛々とコンクラーベは執り行われ、新教皇が決定されました。しかしその間、とんでもない事件が背後で起こっていたという話です。
宗教象徴学者ラングドン(トム・ハンクス)はヴァチカン警察から請われて、誘拐された次期教皇候補である4人の枢機卿の救出に向かいます。
犯人一味は秘密結社イルミナテイという組織で、ガリレオの流れをくむ科学を信奉するヴァチカンの敵だそうです。彼らはスイスの物理学研究所(CERN)から反物質という恐ろしい危険物を盗んである悪だくみを計画していました。
ラングドンはCERNの女性科学者ヴィットリア(アイエレット・ゾラー)と協力し、誘拐犯から届いていた手紙の暗号を解読した結果、反物質の入った容器を維持するバッテリーの切れる夜中12時までに4人の枢機卿が次々に殺害され、反物質が大爆発することを知ります。
そこで迫り来るタイムアップと闘いながらの息もつかせぬ枢機卿探しが繰広げられます。これで終わったのかと思ったら、まだどんでん返しの続きがあって楽しめました。
ただし、秘密結社イルミナテイ一一味の姿が余り明確でなかった点が悔やまれます。
本当の主人公というべきカルメレンコ(ユアン・マクレガー)やリヒター隊長(ステラン・スカルガルド)、シュトラウス枢機卿(アーミン・ミュラー=スタール)の役割が興味深かったといえます。
2. さらにひと言
ヴァチカンすなわち宗教者とイルミナテイすなわち科学信奉者という設定で、その戦いが天使と悪魔との戦いなんでしょうか。
この大見得切ったテーマが本作でずばり現されているようには到底思えません。宗教に対立する科学をイルミナテイという極めて特殊な秘密結社に特定した本策の意図が不鮮明です。
カルメレンコが最後にヘリに乗って爆弾と共に暗い天空に消えてゆき、消滅し、その英雄的死によってヴァチカン市民を救ったとしたら、彼は天使となりえたでしょう。しかし、それではカルメレンコの意味深長な計画が達成できませんでした。
したがって彼はパラシュートで降りてきて生きながらえたのです。彼の英雄的行為によって彼自身がもう少しで教皇に推薦されたはずですが、ラングドンたちによって阻止されました。
しかしながら今ではヴァチカンのような宗教者こそが、科学の真髄を最も把握しその利用の仕方を心得ているのかもしれません(本当かどうか知りませんが、本作で明らかなようにヴァチカン内部の極めて高度な科学技術を用いたシステムはそれを語っている気がします)。
真の悪魔はあるときは天使のようにも見え、真の天使はあるときは悪魔のようにも見える、それが人間の中に共存している、そんなふうに気付かされる映画でした。
2009年 アメリカ
監督:ロン・ハワード
製作:ロン・ハワード、ブライアン・グレイザー、他
原作:ダン・ブラウン「天使と悪魔」
脚本:デヴィッド・コープ、アキヴァ・ゴールズマン
音楽:ハンス・ジマー
出演:トム・ハンクス、アイエレット・ゾラー、ユアン・マクレガー、ステラン・スカルガルド、ニコライ・リー・コス、アーミン・ミュラー=サタール、他
劇場:TOHOシネマズ