若生りえ Jazz Songs & Diary

ジャズ歌手の若生りえがジャズスタンダードソングの歌詞やエピソードについて語る。
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向田邦子の『水羊羹の作法』

2015年07月17日 | ジャンルを越えて ~音楽大好き!!~
みなさぁ~~~ん
こんばんはぁ~~~
この激しい風雨でお疲れがたまるころですが、
今日はやっと金曜日
ゆったりと過ごしたいものです。

さて。
こう暑くなってくると、
冷たいアイスクリームや飲み物が美味しくなってきますよね!

和菓子も大好きな私は、夏はまたいろんな美味しいものを求めて
日々探究しておりますが!?

やはりこの季節なら、宇治金時氷!もいいけど、
水まんじゅう!もいいけど、
やっぱり、水羊羹!ではないでしょうか!!

水っぽくなくて、小豆のうま味がギュギュッと濃縮されていて、
なめらかで、口に含んだときのなんとも心地よい、
いい柔らかさの水羊羹が恋しい季節となりました。

スルッといくつでもいけちゃうわ~

なんて言っているそこのアナタ!!

え?ワタシ??

はい。そうです

おいしいものならいくつでも

と行きたいのですが、向田邦子さんの『眠る盃』の文章を目にしたら、
私もさすがに反省しました。

土井晩翠作詞、滝廉太郎作曲の「荒城の月」の歌詞に、
♪めぐる盃~かげさして
という箇所がありますが、
向田邦子さんは「めぐる盃」を「眠る盃」と覚えてしまったところから
このタイトルが生まれたという向田邦子さんのこの有名な随筆集。

ご存じで読まれたことのある方も多いかもしれませんが、
この中で「水羊羹」について書かれている部分があります。

その部分の抜粋が写真付きで紹介されている本がまた別にあり、
あらためて読むと『水羊羹を食べるときには』というタイトルから、
かなり事細かく、向田邦子さんによる水羊羹の作法講座が繰り広げられています

『水羊羹は、ふたつ食べるものではありません。』

から始まっており、いきなり先制パンチを受けたわけです

『つい手がのびかけますが、歯をくいしばって、
一度にひとつで我慢しなくてはいけないのです。』

と続きます。

えぇ~!そ、そんなぁ~!

と嘆きたくなる心の叫びを抑えてそのあとを読み進めると、

『心を静めて、香りの高い新茶を丁寧にいれます。
私は水羊羹の季節になると白磁のそば猪口に、
京根来(きょうねごろ・黒の漆の上に朱の漆を塗った)の茶托を出します。
水羊羹は素朴な薩摩硝子の皿か、小山岑一さん作の少しピンク味を帯びた
肌色にみだりだけ水色の和蘭蛇手の取皿を使っています。』

で、省略の文字の後、まだ続きます。

『すだれごしの自然光か、せめて昔風の、少し黄色っぽい
電灯の下で味わいたいものです。ついでに言えば、
クーラーよりも、窓を開けて、自然の空気、自然の風の中で。
バックミュージックは何にしましょうか?』

と書かれたところからが今日の本番。

向田邦子さんは幅広い分野に精通されていらっしゃったことでも有名ですが、
やはり音楽にも相当なこだわりをお持ちだったのですね!!

水羊羹に似合う曲として、2曲、あげられていました。

そこには幻の名盤として現在でもLPはなかなか手に入りにくいといわれている
美人歌手「ミリー・ヴァーノン」の名前が。

彼女は5歳のころからパット・キャロンの名前で歌い、
長い下積みののち見出されて吹き込んだ、
『生涯でたった一枚』のレコードがありました。

それが、向田邦子さんの愛聴盤だった『Introducing(イントロデューシング)』というアルバム。

この中から向田さんは、
『水羊羹にはミリー・ヴァーノンのスプリング・イズ・ヒアが一番似合うように思います。』
と書かかれていました。

このことが1977年の雑誌『クロワッサン』で取り上げられ、
その後、NHKでも取り上げられたことから、
この幻のLPがCD復刻版で発売されました。

ジャズファンより、むしろ向田邦子ファンの間で、この超レアなアルバムが
ちょっとしたブームにより、在庫が少なくなるなどのちょっとしたブームがおきました。

まずはその音楽を聴いてみましょうか!

もし、運よくお中元でもらった美味しい水羊羹があるぞ!
という方がいらっしゃいましたら、ぜひご用意いただき、
水羊羹を召し上がりながらお聴きください(笑)

とても伸びやかで深く、声も表現も豊かな素晴らしい歌手だと感じました。
曲の内容は、ロジャース&ハートのコンビでミュージカルからの一曲ですが、

春はやって来たわ
たしかに、ここに、
それなのに、心が踊り出さないのはなぜ?
ワルツを聴いても、心に響かないのはなぜ?
こうしたい!とか、こうなりたい!
なんていう気持にもなれない
それはきっと
だれも私のことを必要としていないからよ

という、春という華やぐ季節とは裏腹なセンチメンタルな女心の歌。

でも、ミリー・ヴァーノンの歌を聴くとジメジメとしたいやなところはない。
その辺が聴きどころ、聴かせどころ、なのかもしれません。

Milli Vernon 『Spring is here』



もう一つは『クラシックならベロフの弾く、ドビュッシーのエスタンプ「版画」も悪くないかもしれませんね。

ミシェル・ベロフさんは現在65歳でご活躍されていますが、
彼のこの曲は載っていなかったので、同じくフランスのピアニスト、
モニス・アークの演奏でお聴きいただきます。
モニス・アーク(1909~1987)はドビュッシーの演奏で
名声を得た方ですので、こちらもぜひ水羊羹のおともにどうぞ!

モニク・アース『ドビュッシー・エスタンプ・版画』



ちなみに、向田邦子さんがおっしゃられていたミシェル・ベロフのピアノも。

ベロフさんは、現在も母校で名門パリ音楽院で教授をされており、日本にも
2013年にはマスタークラス(上級者向けの特別レッスン)で来日されています。

ドビュッシーの演奏も得意で下が、上級者のさらに上の超上級者でも難しいとされる
フランツ・リストの作品なども得意でしたが、80年代に右手を故障され、
一時演奏家としての活動を休んでいらっしゃいました。

それでも何とか演奏家として復活され、そしていまでは
後進の育成にも力を入れている方だそうです。

こちらの曲は、水羊羹、ないしは今月末の
ブルー・ムーンのお共にもどうぞ!

ドビュッシー『月の光』


う~ん!!

いかがですか??

水羊羹がさらに2倍、3倍と美味しくなったよ!
とおっしゃられる方も多いかも!!

今回のことで、水羊羹一つ頂くにも、きちんと背筋を伸ばして、
器や食べる環境、バックミュージックにも気を遣い、
小粋に、そして潔く季節をいただくものなのだと反省

ほんとに反省してるかな??ワタシ??

向田邦子さんへの道のりは長いなぁ~!!

というわけで、今夜は水羊羹でもなんでも、
美味しいものを召し上がって、お好きな音楽で
リラックスしてくださいね~~~!!

今日はこのへんで!!

素敵な週末を~~~

おやすみなさぁ~~~い
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1 コメント

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ブルームーンのお供 (むくちゃんのおばちゃん)
2015-07-17 20:11:27
こんばんは。
無性に甘いものがほしくなりました。

今月のブルームーンには、「月の光」を聴きながら大好きな葛桜を月にみたてて、美味しいお茶を煎れようかな、なんて。
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