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事の真相を自分なりに探究し記録しています。

簡保こそが郵政民営化の狙い

2006年01月05日 | Weblog
奪われる日本――「年次改革要望書」米国の日本改造計画 警告レポート、米国に蹂躙される医療と保険制度、関岡英之

 簡保は小口であることと、無審査という簡易な加入手続きを特色としている。もともと簡易生命保険制度は、民間の生命保険に加入できない低所得者にも保険というセーフティネットを提供することを目的として大正五年に創設されたもので、ビジネスと言うよりは日本社会の安定化装置なのである。それが米国人の目には単なる市場としてしか映らない。安定化装置をはずした後に日本社会がどうなろうと一切関心がない。



更に酷かった前原

総選挙での歴史的敗北後、前原新体制となった民主党は郵政民営化の対案を出した。伝えられるところによるとその内容は、簡保を廃止し、既契約分は日本郵政公社の傘下につくる複数の保険子会社に分割譲渡し、五年以内に完全民営化するものだという。この通りの内容だとすれば、これはまさに米国政府の要望書から読みとれる目論見そのものだ。与党案よりも露骨に米国に擦り寄り、簡保の分割まで踏み込んで米国保険業界の狙いをむしろ先取りしている。前原民主党の正体見たり、の感がある。



衆愚政治

 郵政民営化を唯一の争点とした先の総選挙の真相は、官邸とマスメディアが演出したような「改革派」対「守旧派」ではなく、「対米迎合派」対「国益擁護派」の闘いだった、というのが私の理解である。しかし真の国益を守ろうとした自民党の勇気ある議員たちの警鐘は、単細胞的常套句の連呼にかき消されてしまった。我々国民は「小泉劇場」に踊らされ、これらの政策通の国会議員たちから議席を剥奪し、その穴埋めに、小泉総理にひたすら忠誠を誓う公募の新人を大量に国会に送り込んだ。

 小泉総理のワンフレーズに比べ、反対票を投じた自民党議員たちの説明は国民にわかりにくかったと、したり顔で指摘した識者が多い。だが「政治はわかりやすくなければダメ」などというのは衆愚政治の極みであって、成熟した民主国家なら本来恥ずかしくて真顔で言えるようなことではない。



小さな政府は弱者にこそ高負担

 民間保険会社の保険料は、もちろん市場原理が貫徹される。例えば大企業の社員は、会社が一括して保険会社と契約するので、大口顧客として保険会社に値引き圧力をかけることができるため保険料が割安となり、低負担で「世界最先端」の医療を受けられる。

 一方、保険会社は大口契約で削られたマージンを小口契約で補填しようとするため、自営業者、退職者など個人で保険に入ろうとする人などには割高な保険料を請求する。その結果、所得の低い人ほど保険料が重くなるという負担の逆進性が常態化している。「小さな政府」で個人の自己負担が小さくなるわけではなく、むしろ逆なのである。



世界一の医療制度をわざわざ改悪する気か?

0ECDの調査によれば、米国は世界最高の医療費を費やしながら、平均寿命、乳児死亡率、いずれも先進国で最低であり、WHOの二〇〇〇年の報告でも米国の医療制度の評価は世界第十五位と悲惨である。米国医療の実態は、「小さな政府」が国民経済全体的には高負担・低福祉をもたらすことを示唆している。一方、日本の医療制度は米国より安い医療費で、WH0から世界第一位の評価を得ているのだ。この歴然たる事実は、市場原理の導入による医療の効率化を喧伝する「改革」論者を顔色なからしめるものがあるはずだ。




文藝春秋に載っているので、是非全文を読んでみることをお奨めします。







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