▽▲▽▲▽▲

没【えちうど】マフラー

上手く纏まらなかったので没
***

「オレって愛されててさ、見てこれ、マフラー、編んでもらったんだ。アイツ、手、器用でさ。他の奴からマフラー借りたんだよ、寒かったし、あったかいねーってタアイモない会話でね。そしたらアイツ、急にオレに冷たくなっちゃって、可愛いよね。帰ったらずーっとオレのコト無視して毛糸編んでてさ、一緒に帰ってくんないくらい怒ってんだって思ったら、毛糸買いに行ってたみたいでよ、」

 惚気話を聞かされる。めちゃくちゃ美味い、生き甲斐みたいなフライドポテトが砂食ってるみたいだよ。

「愛されるっていいな。へへ、マフラーちょぉ暖けぇもん。手編みマフラー、エモいわ」

 柿みたいな色のマフラーは涎掛けみたいだった。翻弄されちゃってまぁ、可哀想に、カレシさんは。

「冬の間は、ずっと着けよ。洗濯したら縮んじゃうかね?」
 そうしてストローを齧っている。この季節に飲むバニラシェイクは美味しいなぁ?マフラーの暖かさが身に染みるだろ?

「手編みマフラーって、やっぱエモいわ。アイツに抱き締められてるってカンジ」

 ふぅん、って思いながらボキは冷めたポテトをつまんだ。


「赦せないんだ。付き合っている自覚が足りないと思う。これは束縛か?」
 こいつのカレシと行ったファストフードとはうって変わってお洒落な喫茶店だった。相手はコーヒーで、ボキはミルクティー。
「まぁ、向こうはマフラー喜んでたし、いいんじゃない?」
「喜んでいたのか……?」
 冬場だからか、こいつはいつにも増して陰鬱な感じがした。絶世のイケメンってくらいイケメンなのに、カビが生えそうな雰囲気がある。交友関係広くて明るいカレシとは、そら上手くいかんわなって思う。
「ずっと着けるって言ってたけど?」
 こいつは少しも嬉しそうな顔をしなかった。
「いいことだ。一編みずつ、怒りを込めた」
「そんなドリームキャッチャーみたいな……」
「人を呪わば穴二つというだろう。二つじゃ足らない。あいつは俺の呪いを首に巻いていればいいのさ。赦さないよ。浮気は。浮気は、赦さない」
 ぼそぼそと喋るこいつは、怨霊みたいで怖かった。
「どこまでが浮気だよ。一緒にワックに行くくらい?」
「いいや、お前に怒りはないよ。そんな話じゃない。あいつが俺を縛りつけているんだ。見せびらかすように、あんな真似を……あのマフラーの編み目の数だけ、俺はあいつと穴に落ちる。他に本当に好きなやつができたなら手放してやる。でもな、赦せないんだ、俺を妬かせようとしてする浮気は」

***
2023.12.5

最近の「【そりゎ"えちぅど"】 ※ド短編BL」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事