音楽の原点と言えば各地域の原住民の太鼓の音色でしょうか?
しかし、今日残されている最古の音楽といえば、やはりヨーロッパ音楽の
グレゴリオ聖歌だと思います。それ以前の古代ギリシアの音楽も、
楽譜はいくらか残されていても、その生命力を再現させえることは
不可能のように思いますが、グレゴリオ聖歌とはローマ、カトリック教会の
典礼(礼拝)のための音楽です。
中世のルネッサンス時代から今日まで歌いつがれてきたものですから、
ヨーロッパ音楽の根源、あるいは源流ということができるでしょう。
ハーモニーもなく、旋律線ひとつだけで斎唱(ユニソン)で歌われる
単純きわまりないものですが、それでいてその訴えはたいへん深く、
不思議な魅力を宿しています。
キリストの血と肉を象徴するパンとぶどう酒をうけるミサ聖祭のための聖歌は
特に重要なものです。そこではイントロイトゥス(入祭唱)とか
キリエ(あわれみの賛歌)とかいろいろの聖歌が順々に歌われていきますが、
それらは、一年間を通じて原則として変わることのない歌詞によるものと
クリスマスとか復活祭とかいった特定の祝日のための歌詞によるものと、
二つのタイプに分けることができます。
特にレクイエム(死者のためのミサ)は「死」に出会うことによって、
はじめて自分が生きている意味を知り、また、生きることの理由を
考えるようになります。人間の生き、そして死ぬことの本質的な意味を
強い説得力で、音楽で見事にとらえつくしているのも、当然といえるでしょう。
小学校の音楽室の壁に画鋲で留められた古ぼけたおじさん達の写真を
見たことがあると思います。髪を振り乱しているベートウベン、
すまし顔のシューマン、流し目のワーグナー、おしゃれな服装のモーツアルト、
小太りのブラームスなど、その中に髪をカールした太目のおじさんがバッハです。
私は現代音楽の原点はこのへんにあると思われますが、いかがなものでしょうか?
ヨハン・セバスチャン・バッハの創作活動は、「ワイマール時代 1708~17年」
「ケーテン時代 1717~23年」「ライプツィヒ時代 1723~50年」の3つに
分けられます。オルガン奏者から官廷楽員、楽長となり管弦楽作品として
重要なものの多くはケーテン時代の作であるが、フルートのための作品に
関していえば、ライプツィヒ時代の作と考えられるものも少なくありません、
1000曲にあまる音楽作品は今日、シュミーダー編のバッハ作品目録に
したがってBWV番号を付してしるされるのが習慣となっています。
フーガの技法(BWV1080)の未完成のまま、静かにこの世を
去ってしまいました。