「人をこうる歌」
1 妻をめとらば 才たけて
みめ美わしく 情けある
友を選ばば 書を読みて
六分(りくぶ)の侠気(きょうき) 四分(しぶ)の熱
2 恋の命を たずぬれば
名を惜しむかな 男(おのこ)ゆえ
友の情けを たずぬれば
義のあるところ 火をも踏む
3 汲めや美酒(うまざけ) うたひめに
乙女の知らぬ 意気地(いきじ)あり
簿記の筆とる 若者に
まことの男 君を見る
4 ああわれダンテの 奇才なく
バイロン、ハイネの 熱なきも
石を抱( いだ)きて 野にうたう
芭蕉のさびを よろこばず
※ ダンテあるいはコレッジ、
与謝野 鉄幹 (1837~1935 明治・大正時代の歌人・詩人)
浪漫派の歌風を確立した与謝野鉄幹の詩「人を恋ふる歌」の一節であり
才色兼備の女性に対する情熱的なあこがれがこめられている。
鉄幹の妻与謝野晶子は、この詩にうたわれたとおりの理想の女性で
あったのであろう・・・
晶子の有名な短歌
「柔肌の あつき血汐に 触れも見で 寂しからずや 道を説く君」
(晶子・みだれ髪)
さて、あなたはどっち・・・?
この道を説く君は誰?
鉄幹、あるいは初恋の若き僧侶鉄南、
実は兄秀太郎のことではないか、という説もあるそうですが、
私はこの説にうなずきます。
心の中で堅物の兄にたいし、挑戦的につぶやいたのでは・・・
共に心に刻む一節です。
(-。-:)