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ばりん3g

マイクラ補足 兼 心理学のつぶやき

心の迷いが、ネガティブな気分を引き起こしているわけではない。

2022-01-16 | 旧記事群

2013年に発表された論文によると、心の迷いには気分を下げる効果はなく、またそれはネガティブな感情を引き起こさないという。

具体的には、心の迷いは悲しみや不安などの感情によって引き起こされるが、心の迷いそれ自体は感情への関与はなく、迷いが引き起こされた後の感情や気分低下は迷いが生じる前の感情によって予測できるという。

また、心が迷う感情的な理由は迷いを引き起こした感情と一致するため、悲しみや不安といった感傷のプロセスの1つとして心の迷いがあるというよりかは、感傷のプロセスと同時並行する形で心の迷いが発生している可能性がある。

なので、心の迷いを引き起こした感情が解消されればそれ以上の気分低下は発生しないのだが、例外として対象と関連性の高い現在の問題を理由に生じた心の迷いは後の悲しみとわずかな相関を示したという。このわずかな相関は、心の迷いというプロセスが問題解決のプロセスを反映したものである可能性が高い、と推測された。

注意点としては、今回の研究は心の迷いとそれを抱く前と抱いた後の感情の相関を計ったものであり、因果関係を証明するものではないということ。悲しみや不安が具体的にどういった経路で心の迷いを引き起こしているのか、を追求したものではない。

 

ーーーハニーチュロスを1ダースか、それともポン・デ・リングを1ダースか。

ミスタードーナツで何をどれぐらい買うかで私はよく迷うのだが、

どういう決断を下そうが、悲しい気分はちっともわかない。

……お財布は、とても悲しいことになってるけれども。

 

 

参考文献

Giulia L.Poerio,PeterTotterdell et al. (2013) Mind-wandering and negative mood: Does one thing really lead to another?


一次サイコパスと二次サイコパスの、動機の違い。

2022-01-15 | 旧記事群

2005年に発表された論文によると、一次サイコパスは不安を抱かないから、二次サイコパスは衝動的に反応するから、それぞれ非社会的と形容される行動に至るのだという。

具体的には、衝動性の高さと不安からの回避傾向という2つの指標で一次・二次サイコパスを計った結果、一次サイコパスは衝動性は平均並みで不安からの回避傾向が非常に弱く、二次サイコパスは衝動性が非常に高く不安からの回避傾向が平均かそれ以上であるという結果が出たという。

「やりたいという思いが強すぎて、思ったことをすぐに口に出してしまう」のと「発言するときに生じる不安が小さすぎて、口を紡ぐ要因にならない」は、第三者から見れば同じようなものだが、それぞれの要因はかなり乖離したものである。

前者は自身の行動により少なくとも何らかの感情が発生するが、後者は感傷することがほぼない。前者は集団に反発するよう着飾り挑発し喧嘩を売るだけの心のもろさを見せる(Michael G. Vaughn 2009)が、後者はむしろ集団に馴染み、挨拶と応答は一般人のそれとほぼ変わりないのだ。

 

ーーーあと、二次サイコパスは諭したりなだめたりするのは効くけど、

一次サイコパスは説得に耳を貸さない、という違いもある。

もし君が何らかの理由で銃を向けられたとき、

向けた相手が表情1つ動かさないのであれば……一秒でも長く悔いて。

 

 

参考文献

Newman, J. P., MacCoon, D. G., Vaughn, L. J., & Sadeh, N. (2005). Validating a Distinction Between Primary and Secondary Psychopathy With Measures of Gray's BIS and BAS Constructs. 

Michael G. Vaughn,John F. Edens et al. (2009) An Investigation of Primary and Secondary Psychopathy in a Statewide Sample of Incarcerated Youth.


能力と性格・自尊心に相関がない理由。

2022-01-14 | 旧記事群

成績と性格・自尊心の相関を示す論文は数多く存在する。このブログでも、情動的知能と成績が自己効力感を介して正の相関を示した論文(Ana-Maria Cazan 2015,James D.A.Parker 2004)や、自尊心が自己効力感を介して成績に正の影響を与えることを示した論文(Lane, John 2004)を紹介してきた。また誠実性は内発的動機・外発的動機による効果を向上し、開放性は内発的動機による効果を大きく上昇させ、どちらの性格特性も成績に貢献している(AsgharHazrati-Viari 2012)という知見も確認できる。

自己決定理論によれば、対象の意志をあしらわず尊重し、また対象が自身の行動をフィードバックできるような環境が内発的動機を発生させ、そうして起こった内発的動機が成績に正の効果を付与し、さらに高い成績は内発的動機を高める要因になる(Nikos Ntoumanis 2010)という。

成績と性格の関係は非常に深いものであるという知見がそろった今、学習者の意志を蔑ろにして知識を叩き込むという戦略を採用する人はほとんどおらず、何かしらの形で学習者の意志を尊重し、また意志を育む授業が展開されている。

が、性格・自尊心が成績に与える影響は知能が与えるそれよりも小さく(Sophie von Stumm 2011)、また自尊心と知能の間に発生する相関はほぼ無視できる(Roy F. Baumeister 2003)という知見もある。自身の意志を尊重されようが、他人から押し付けられる形で業務をこなそうが、能力それ自体にはさほど影響がないという。

成績と性格・自尊心には相関が生じ、成績と知能には強固な相関が存在するが、性格・自尊心と知能には相関が生じない。この三段論法が通用しない訳とは、いったい何なのか。

 

これは『車と運転手』の関係でたとえたほうがわかりやすい。

基本的に、車は運転手の状態に応じた変形をすることはない。運転手が近眼になろうが右腕骨折してようが泥酔状態であろうが、車が持つ機構や性能は変動せず、車は車のままである。なお経年劣化は考えないものとする。

だが、車は運転手の状態によって進み方や性能発揮の度合いが変わってくる。近眼ならば運転が困難になり、右腕骨折であればハンドルがきりづらくなり、泥酔状態の場合はたぶん想像もつかないような経路をたどることになる。

能力と性格・自尊心の関係においても同じことがいえる。

つまり、能力はできることを決め、性格・自尊心は実際にやることを決める要因である(AsgharHazrati-Viari 2012)ということ。能力という基礎数値が性格という倍率の影響を受け、成績という形で求めだされるという関係なのだ。

これが、能力と性格・自尊心に相関がない理由である。

 

 

参考文献

Ana-Maria Cazan,Laura Elena Năstasă. (2015) Emotional Intelligence, Satisfaction with Life and Burnout among University Students.

James D.A.Parker,Ronald E.CrequeSr et al.(2004) Academic achievement in high school: does emotional intelligence matter?

 Lane, John; Lane, Andrew M et al. (2004) SELF-EFFICACY, SELF-ESTEEM AND THEIR IMPACT ON ACADEMIC PERFORMANCE.

AsgharHazrati-ViariaAl,TayaraniRad et al. (2012) The effect of personality traits on academic performance: The mediating role of academic motivation.

Nikos Ntoumanis (2010) Empirical links between achievement goal theory and self-determination theory in sport.

Sophie von Stumm, Benedikt Hell, Tomas Chamorro-Premuzic (2011) The Hungry Mind: Intellectual Curiosity Is the Third Pillar of Academic Performance.

Roy F. Baumeister,Jennifer D. Campbell et al. (2003) Does High Self-Esteem Cause Better Performance, Interpersonal Success, Happiness, or Healthier Lifestyles?


乳幼児のやる気を育てるための10の原則

2022-01-13 | 旧記事群

1998年に発表された論文は、乳幼児のやる気を育てるための10の原則を掲げている。今回は10の原則を、それぞれ一言説明を添えて紹介する。

前提知識として、内発的動機(やる気)は生後数週間後の段階から『吸う』という行動として現れ、発育とともに強化されていく本能的な機能であるということを、覚えておいてほしい。

 

1:レスポンシブな環境の提供。乳幼児が自己効力感を感じられるようなおもちゃや活動を提供すること。

2:一貫性のある応答的なケア。矛盾のない行動や反応を、乳幼児を指示するのではなくあくまでも要望への応答を行うこと。

3:乳幼児の自主性をサポートする。乳幼児が自由に遊べる範囲を定義し、またそれ以上の過剰な干渉を避けること。

4:親密な関係を築く。乳幼児が「親の元にいれば安心である」であることを学習できるよう、暖かく、しかし他人行儀ではない接触を。

5:共同注意を確立する。乳幼児が他人に対する効力感を獲得するために、また集団活動のメリットを学ぶために、乳幼児が目を向けたものに焦点を当て、時に話し合うこと。

6:『やる気がある人』の具体例の提示。学びや遊びに熱意を注ぐ人と乳幼児を接触させ、同じような熱意の開花の可能性を高めること。

7:乳幼児の能力にあった課題の提供。クリアするごとに徐々に難易度を上げ、乳幼児の自己効力感を高めよう。

8:問題解決のための足場づくり。提供するのは回答や一方的な攻略方法ではなく、あくまでも乳幼児が解決策を生み出すまでの援助(誘導尋問のような)である。

9:自己評価する機会の提供。直近の行動を振り返るよう促し、フィードバックを形成し、新しい目標を作れるような問いかけを。

10:報酬は控えめに。乳幼児の目標が『報酬獲得』にすり替わらないように、努力量やプロセスに焦点を当てた評価を行うこと。

 

まとめると、乳幼児のやる気を育てたいのであれば「外部からの過剰接触によって子供が萎えないよう、子供が何かに興味を持ち学ぶように、教育側も子供に興味を持ち、ひたすらに分析する」ことを心がけることが重要となる。

この10の原則は乳幼児だけでなく義務教育期間においても、一部はより上位の教育機関であっても通用する。生後24~36か月の間に「1-主観的成功率(Atkinson 1957)」という達成動機の方適式が組み上げられている(Michael Lewis 1992)ことからも察せれるように。

 

ーーーこれが「子供だから」と言って軽視しないほうがいい理由の1つ。

子供が持つやる気の構造は、大人のそれとほぼ変わりなく、

「子供だから」というセリフは、自身もしくは周囲のやる気への軽視と同義となる。

だからこそ、子供のやる気を育てるのは、非常に難しいんだ。

 

 

参考文献

Martha P. Carlton & Adam Winsler et al. (1995) Fostering Intrinsic Motivation in Early Childhood Classrooms.

Atkinson, J. W. (1957). Motivational determinants of risk-taking behavior.

Michael Lewis,Steven M. Alessandri et al. (1992) Differences in Shame and Pride as a Function of Children's Gender and Task Difficulty.


思春期の子たちは『契り』よりも『拒絶』を重く見ているのかもしれない

2022-01-12 | 旧記事群

2010年に発表された論文によると、思春期における親や同級生からの社会的支援の弱さは、ストレスを介して抑うつ症状を強めるという。

また、社会的支援の弱さは対人関係への依存を引き起こし、対人関係への依存はその後の社会的支援を弱める傾向にあったという。

だが、親や同級生からの社会的支援の強さや親密度は抑うつ症状と関係がなく、社会的支援の強さはストレスと抑うつ症状の相関に介入しなかった。

このことから「周囲からどれだけ愛されているか」ではなく「周囲からどれだけ拒絶されているか」が思春期における抑うつ症状の重要なファクターではないかと推測された。自尊心がより不安定になり、被害者意識が加速しやすい思春期だからこそ、この傾向が強く表れるのではという推測も立った。

思春期の対人関係では「盃を交わした友」よりかは「放屁しても笑って許してくれる教室」の方が望まれるのかもしれない。もちろん、どちらもあるに越したことはないが。

 

ーーーまた、今回の研究では同級生からの支援がない状態が非常に強いストレスを引き起こす、ともある。

こういった状態は主に学校内でいじめという形で現れるが、

ごくまれに「崇高な理由を掲げ自主的に学校との関係を断つ」こともあるのだそう。

その崇高な理由をいつまで掲げられるかは、少し気になるところである。

 

 

参考文献

Randy Patrick Auerbach, Joseph S. Bigda-Peyton et al. (2010) Conceptualizing the Prospective Relationship Between Social Support, Stress, and Depressive Symptoms Among Adolescents.