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ばりん3g

能力と性格・自尊心に相関がない理由。

成績と性格・自尊心の相関を示す論文は数多く存在する。このブログでも、情動的知能と成績が自己効力感を介して正の相関を示した論文(Ana-Maria Cazan 2015,James D.A.Parker 2004)や、自尊心が自己効力感を介して成績に正の影響を与えることを示した論文(Lane, John 2004)を紹介してきた。また誠実性は内発的動機・外発的動機による効果を向上し、開放性は内発的動機による効果を大きく上昇させ、どちらの性格特性も成績に貢献している(AsgharHazrati-Viari 2012)という知見も確認できる。

自己決定理論によれば、対象の意志をあしらわず尊重し、また対象が自身の行動をフィードバックできるような環境が内発的動機を発生させ、そうして起こった内発的動機が成績に正の効果を付与し、さらに高い成績は内発的動機を高める要因になる(Nikos Ntoumanis 2010)という。

成績と性格の関係は非常に深いものであるという知見がそろった今、学習者の意志を蔑ろにして知識を叩き込むという戦略を採用する人はほとんどおらず、何かしらの形で学習者の意志を尊重し、また意志を育む授業が展開されている。

が、性格・自尊心が成績に与える影響は知能が与えるそれよりも小さく(Sophie von Stumm 2011)、また自尊心と知能の間に発生する相関はほぼ無視できる(Roy F. Baumeister 2003)という知見もある。自身の意志を尊重されようが、他人から押し付けられる形で業務をこなそうが、能力それ自体にはさほど影響がないという。

成績と性格・自尊心には相関が生じ、成績と知能には強固な相関が存在するが、性格・自尊心と知能には相関が生じない。この三段論法が通用しない訳とは、いったい何なのか。

 

これは『車と運転手』の関係でたとえたほうがわかりやすい。

基本的に、車は運転手の状態に応じた変形をすることはない。運転手が近眼になろうが右腕骨折してようが泥酔状態であろうが、車が持つ機構や性能は変動せず、車は車のままである。なお経年劣化は考えないものとする。

だが、車は運転手の状態によって進み方や性能発揮の度合いが変わってくる。近眼ならば運転が困難になり、右腕骨折であればハンドルがきりづらくなり、泥酔状態の場合はたぶん想像もつかないような経路をたどることになる。

能力と性格・自尊心の関係においても同じことがいえる。

つまり、能力はできることを決め、性格・自尊心は実際にやることを決める要因である(AsgharHazrati-Viari 2012)ということ。能力という基礎数値が性格という倍率の影響を受け、成績という形で求めだされるという関係なのだ。

これが、能力と性格・自尊心に相関がない理由である。

 

 

参考文献

Ana-Maria Cazan,Laura Elena Năstasă. (2015) Emotional Intelligence, Satisfaction with Life and Burnout among University Students.

James D.A.Parker,Ronald E.CrequeSr et al.(2004) Academic achievement in high school: does emotional intelligence matter?

 Lane, John; Lane, Andrew M et al. (2004) SELF-EFFICACY, SELF-ESTEEM AND THEIR IMPACT ON ACADEMIC PERFORMANCE.

AsgharHazrati-ViariaAl,TayaraniRad et al. (2012) The effect of personality traits on academic performance: The mediating role of academic motivation.

Nikos Ntoumanis (2010) Empirical links between achievement goal theory and self-determination theory in sport.

Sophie von Stumm, Benedikt Hell, Tomas Chamorro-Premuzic (2011) The Hungry Mind: Intellectual Curiosity Is the Third Pillar of Academic Performance.

Roy F. Baumeister,Jennifer D. Campbell et al. (2003) Does High Self-Esteem Cause Better Performance, Interpersonal Success, Happiness, or Healthier Lifestyles?


論文を参考にいろいろ喋るブログです。

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