先日、「Botaniaは工業modか?:Minecraftの工業modの定義と要素の明文化について」を投稿したところ、ある視聴者さんとの議論が大いに盛り上がったため、備忘録的に記載する。
文脈情報の欠如を避けるため、原文を記載する。
視聴者:
製作者が工業といってるわけだから工業なのでは?
と一言でまとめられるけど、Botaniaの本質は工業だと思う
花やマナと魔術らしさはあるものの見かけ上だけであり
花を発電機マナを電気と置き換えると工業Modの紹介にしか思えない
なんなら送電時の距離減衰あるしある側面から見ればMekanismより
工業してると言えるのかもしれない
筆者:
おっ殴り合いですか? 受けて立ちますよ。
Botaniaの本質は工業である、という点について。「なんらかのエネルギーを利用し、加工を行い、ともすればその伝達に限界や減衰が生じている」ことを工業の本質とみなし、この特徴をもって工業modと分類した場合、ほとんどの魔術modは工業modと言えるでしょう。すべての魔術はエネルギーネットワークの構築と利用が主軸ですが、それらはすべて工業と言えるのでしょうか。エネルギーネットワークの構築と利用のみで、工業modを分類できるとは思えません。今回提唱した定義のうちに「電力など現実の工業で用いられる動力源を基盤としたシステム」を含んでいるのはそのためです。
また、この記事で扱っている工業は、金属加工等の重工業的生産行為を指しています。Botaniaは「確かに工業らしい」と言える要素はあるかもですが、それが重工業として直接的に描写されているとはいいがたいです。
以上の理由より、現時点ではBotaniaを工業modとして扱うのは難しいと思われます。
ただし、なにをもって"工業"とするかはいまだ揺れが存在します。現在は重工業の領域を暫定的に工業と定めています(重工業を中心とした機械による加工操作が要素の大部分(実稼動的観点から)を占めていること)。が、ここを突き、Botaniaで行われている製造過程が工業的描写であると証明すれば、定義が拡充され、Botaniaを工業modとして扱えるかもしれません。
現在の定義では、特に農林水産や畜産を扱う機械を導入するIndustrial Forgoingは工業modの定義に入っていません。しかし、大半の場合、このmodは工業modという扱いを受けています。この主観と定義の差分から切り崩してみるのは有効でしょう。
視聴者:
あまり魔術modに詳しくないので一部怪しい部分はありますが、Botaniaのエネルギーは魔術modと比べると現実に即しているエネルギーが多いです。石炭や水力?や太陽光など。一方魔術modではVisなるものや血、マナなど。これらを踏まえると同じとは言い難いとは思います。そもそも魔術を「一見不可思議なことを知られざる合理的手段で達成する手練の技。 」(コトバンクより引用)とするのであればマイクラが不思議パワーがありすぎて、議論が始まらないので今回は省略します。
Botaniaにおける金属加工については鉄含む金属などにエネルギーを与えて変質させたものを使うことはよくあることです工業modではGregが該当します。そして大半の工業modで行える鉱石倍化についてですが、現実に即した方法がとられていません。具体的に説明すると長くなるのですが、(しうさんがゆくラボ2Part9で解説しています。ステマじゃないよ)上記の定義に当てはめると金属加工は工業modの定義を定める上では除外して考える必要があります。
以上からBotaniaは魔術要素を含む工業modとして作られたmodというのが判断できます。
完全に余談ですが、Botaniaは「とある魔術の禁書目録」世界における上条当麻のようにどちらつかずの本人(製作者)曰く科学サイド(工業mod)のような立ち位置ではないでしょうか
テスト前なので短文かつ思慮浅はかな回答となってしまい申し訳どざいません
筆者:
楽しくなってきた。
エネルギーネットワークについて。
現在の工業modの定義には「電力など現実の工業で用いられる動力源を基盤としたシステム」が含まれています。Botaniaのマナ生産には現実の発電方法を思わせる様式が見受けられますが、そもそも"マナ"が「現実の工業で用いられる動力源」をモチーフにしているかどうかが不明瞭です。たとえ生産方法が工業らしい、輸送手段が工業らしいであっても、あくまでも"らしい"であって。
なぜ「現実の工業で用いられる動力源」という指標を用いているのかというと、エネルギーネットワークの差分を明確にするため、現実の指標を流用していることが挙げられます。
この場合、現在工業modとして認知されているmodの数多くで運用されているエネルギー単位である"RF"が「現実の工業で用いられる動力源」をモチーフとしているのかについて、同様に議論する必要があります。
鉱石処理などの工程が現実の工業に即しているかについて。
これには実装上の理由が伴います。基本的に、現実の要素をゲームに落とし込む際、スペックや容量の観点、あるいは娯楽要素の確保のために、事象に対する解像度を落とすなどの処置がとられます。このため、「現実の工業に忠実であること」を工業modの定義とした場合、かのGregですらはじき落される可能性があります(そもそも機械が1㎥なんぞに収まらない、という話になるため)。
現在の工業modの定義である「重工業を中心とした機械による加工操作が要素の大部分(実稼動的観点から)を占めていること」には、現実の工業に忠実であることが要件として求められていません。あくまでも、現実の工業を題材として、解像度を最適化したものという認識です。
また、Botaniaが工業modと主張するには、現在の定義においては「重工業を中心とした機械による加工操作が要素の大部分(実稼動的観点から)を占めていること」を説明する必要があります。実稼動的観点というのは、Botaniaを実際にプレイする際に、重工業あるいは工業をモチーフとした要素の割合が過半数を超えている、ということです。
ただし、「重工業を中心とした機械による加工操作」を工業modの定義とするかは、いまだ議論中ではあります。
ここから抽出できる問題は「工業や魔術で用いられるエネルギーネットワークを、どの項目に従い分類するか」「分類を決定する際、現実の要素をどれだけの割合で参照するか」となります。
問題に対する提案として、記事でも述べたように「単にひとつのラベルをもって分類するのではなく、複数のラベルを付けられるようにし、それぞれの比重をもって「これは特に工業的な要素が強い」と判断するのが吉」でしょう。
また、魔術modと一般に称されるmodのエネルギーネットワークの特徴を列挙するのが、工業modその他ネットワークとの差分を明確化するという意味で、適当であると考えられます。「一見不可思議なことを知られざる合理的手段で達成する手練の技 」をいちから定義するのは難問かと思われますが。というか、きちんと定義出来たら広義の科学に当てはまって、科学的手法になるのでは…?
謝辞:
コメントしてくれた視聴者さん。勝手に記事にしちゃってごめんなさい。