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漆作家 大内麻紗子の【好きなことを好きなだけ】ブログ

漆の時代がくる?

2回に渡り「サステナブルな社会」をテーマに語ってきました。

最後となる今回は「つくる責任とつかう責任」について、私が思う事を綴っていきたいと思います。


『SDGs(持続可能な開発目標)』のひとつである「つくる責任とつかう責任」

これは

  • 持続可能な方法で生産し、責任をもって消費する

といった内容です。


私は漆芸の勉強をする前はスポーツメーカーのデザイナーとして少しの間ですが働いていました。

ざっくりいうと時代の流行に合わせてデザインし、大量につくられた製品を、シーズン中にみんなでなんとかして売るのがブランド全体の仕事です。

しかしつくったものが全て売れるわけではありません。

最終的に残ったものは廃棄されます。

そして新しいシーズンに向け、また大量に生産されるのです。

(時代に合わせて今はシステムが変わっているかもしれません)

このときに感じた、常に新しいモノにだけ目が向けられ、つくったモノが残っていかない虚しさも、会社を辞めたひとつの理由でした。


当時は気づくことが出来なかったけれど、おそらく製品をつくる過程で生まれたロスも相当なものだったと思います。

生地をつくるとき、必ず色見本用にサンプルを上げます。

そのサンプル生地だって染めるのに最低のロット数が必要だったりするわけです。

そこで色味が違えばまた染め直しを頼みます。

今思えばNGになった布たちはどうなったのでしょう。

再利用されたのでしょうか。

それとも……


そしてそれは服として形になったから安泰というわけでもなく、商品棚に並べられ、売れ残ればセールにかけられ、それでも売れ残ると行き場をなくすわけです。

着られるものなのに、もったいない。

なんともいえない罪悪感のようなものがありました。


会社を辞め、大量生産大量消費されるものではなく、ひとつひとつを大切にするものづくりを自分の手で行いたいと思い、飛び込んだ美術の世界。

そこで出会った漆芸。

漆の持つ可能性や表現の豊かさに魅了され、漆のユニークさを伝えられる作品づくりを目指している私ですが、一方でいまの時代において必要な素材であるとも感じています。


ご存知の方も多いとは思いますが、〝漆〟は木の樹液です。

自然に還る天然の樹脂なのです。

漆器は時代と共に安く手に入り楽に扱えるプラスチック製品に取って代わられました。

しかしそのプラスチックがいま、問題になっています。

古くは縄文時代から使われてきたという漆。

これまでの長い歴史の中で、漆が何か問題視されたというようなことは聞いたことがありません。

それは人工物ではなく、天然の素材だからだと思います。


漆の木は当時から人の手で世話をし、育てられていたのではないかと言われています。

それだけ生活に欠かせないものだったのでしょう。

ですが必要不可欠ではなくなってしまったいま、漆の木は激減しています。

少しずつ植林の活動も増えてはきていますが全盛期に比べたら微々たるものです。

だってプラスチックがあれば漆なんて必要ないのですから。

需要は減る一方です。


「漆は毒なんでしょ?」

なんて言われることもあります。

かぶれるだけで毒ではありません。

昔からお椀やお重、お箸など口に入れるものにも使用されてきました。

毒ならばそんな使われ方はしません。

それにしっかり乾いていればかぶれることもないのです。

漢方医薬のなかには漆による治療法や利用法がたくさん出ていると、松田権六さんの書籍である「うるしの話」にも書かれていました。

プラスチックに比べたら幾倍も安全と言えます。


ただ現状としてそういった意味での純粋な漆器は減りつつあるように感じます。

合成樹脂の上に上塗りだけ漆を使っているもの。

他の成分が混ざっており漆100%ではないもの。

私には正直、これがいいか悪いかはわかりません。

だって時代は大量生産大量消費を良しとしてきたのですから。

右肩下がりの漆器産業は、なんとかいまの時代を生きるために皆必死なのです。

新しいものとの融合、そして提案。

生き抜くための工夫も工芸の進化と捉えることだってできると思います。

ですからこのように漆の扱いが変わってきたのは必然だと私は思うのです。

しかしきっとこの流れだって時代が変わればまた変化していきます。

そしてそれは遠い先ではなく近々の出来事かもしれません。


「サステナブルな社会」を見据えたとき、おそらく漆のあり方も見直されるでしょう。

自然に優しいものとして昔のような姿に戻っていくかもしれないし、逆により新しい姿を見せてくれるかもしれない。

消費者が何を望むか。

望まれるものづくりができるかどうか。

いま私たちは消費者としても生産者としても岐路に立たされています。


長い歴史のある〝漆〟

その歴史には意味があり価値があります。

「サステナブルな社会」をつくるには〝漆〟はもってこいな素材です。

意識を変えるだけで時代は変わります。

「サステナブルな社会」という風に乗って、今度は〝漆〟がプラスチックに取って代わる時代がやって来るかもしれません。


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