片手ハンドルで運転してるのは、髪の毛をツンツン立てた若いお兄ちゃん。
右手でスマホを操作しながら、まったく前方に注意をはらっていない。
どちらかがよけなければ確実にぶつかる状況。
2メーター手前で身体を横にして自転車を通そうするが、そこをめがけて自転車は突っ込んでくる。
間一髪で気配を感じて顔を上げる兄ちゃん、一瞬慌てたような表情を浮かべるが、チッと舌打ちしてハンドルを切りすれすれでかわして去って行く。
相変わらず右手に握りしめたスマホで、即Twitterにこう上げるのかもしれない。
「トロいおっさんとぶつかりかけた チョーうぜえ」
同じ日の坂道での出来事。
自転車の前と後ろに子供を乗せたママが、携帯電話を耳に当てながら坂道を下ってくる。
こちらとの距離は5メートル以上離れているし、坂道は広く避ける必要もないぐらいに端を上っているので、普通なら接触するハズがない。
だが携帯を耳に当てたママは明らかにそちらに気をとられ、前を見ているようで見ていない。
オヤジの歩く方にスーッと寄ってきて、何かにつまずいてよろけた。
ハッとして両手でハンドルを握り、オヤジの右腕をこすってそのまま坂を下って行ってしまった。
振り向くと後ろの席の子供が、まん丸な目でオヤジを見つめていた。
きっとそのママはFacebookで自分の間一髪体験をアップして、ママ友にいいね👍をもらっているのだろう。
お昼前の常磐線に乗って、日暮里に着いた。
乗り換え駅だから多くの人が下りる。
オヤジの前に立っていた数人のOL風と学生風の娘たち、揃いも揃ってみんなスマホを手に持ちイヤホンを耳に突っ込んでいる。
ドアが開きいっせいに乗客が下りるが、彼女たちはスマホの画面を見ながらその流れに従う。
先頭のヒールの娘が、ホームに下り立ったところで足を取られよろける。
後続の娘たちはそれをヒョイと避けて、前に出て歩き去る。
よろけた娘も何事もなかったようにそのまま進み階段を上がる。
どの娘もスマホ画面を見つめたまま、だ。
いったいこの国はどうしちゃったんだろう。
一時もスマホや携帯を手放せないほど大事な要件があるんだろうか。
それほど日々の雑多な事象から目や耳をそらしたいのだろうか。
電波のように不安定に誰かと繋がっていないと安心できないのだろうか。
都会はストレスが溜まる現場だということはよくわかるが・・・・・。
もっと自分の目で見ればいいのに、もっと自分の耳で聞けばいいのに。
ポンコツなオヤジはすこし、ため息をつく。
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