ウェネトさまの館

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空の発見(松濤美術館)

2024年10月04日 20時07分35秒 | 展覧会・美術関連

渋谷区立松濤美術館「空の発見」を観たのでございます。
https://shoto-museum.jp/exhibitions/205sora/
(展示室以外は写真撮影可)

江戸時代から現代までの日本美術と西洋絵画で「空」の表現の変遷を辿るという展覧会。
一部展示替えあり、前期(~10月14日)・後期(10月16日~)合わせて約100点の展示じゃ。

構成は以下の6章。気になった作品もリスト順に。
まずはお2階の第1会場からじゃ。

【1章:日本美術に空はあったのか?―青空の輸入】
日本美術中の多様な空の表現。

・松川龍椿《京都名所図屏風》江戸末期 六曲一双 屏風
この時代の日本美術の金色の空と雲、今まで何の疑問もなく観ておったが、何ゆえ西洋の影響を受けるまで青い空と白い雲がなかったのかと、いきなり目から鱗が。
この屏風も、川は青く描かれておるのにのぅ。

・司馬江漢《犬のいる風景図》寛政末期 絹本・油彩、額装
横長~い画面に、明るい青空と白い雲の西洋風絵画。

・葛飾北斎《冨嶽三十六景 山下白雨》江戸時代 大判 錦絵
富士山の山頂は一文字ぼかしの鮮やか青空。山麓は怪しい空模様で稲光ビカビカ。

【2章:開いた窓から空を見る―西洋美術における空の表現】
西洋美術と日本美術の視点を比較。西洋絵画の空は写実的じゃ。

・ジョン・コンスタブル『イングランドの風景』より 1830-1832年 メゾチント/ポートフォリオ
5点ともモノクロじゃが、見るからにイングランドの空の様子がビシビシ伝わりまする。

・ウジェーヌ・ブーダン《ノルマンディーの風景》1854-1857年 油彩・板
ブーダンは、コローから「空の王者」と讃えられたのじゃった。

【3章:近代日本にはさまざまな空が広がる】
高橋由一、横山大観、岸田劉生などなど、近代日本のさまざまな空模様。

・亀井竹二郎〈石版『懐古東海道五十三驛真景』油彩原画〉より 1877年頃 油彩・紙
23歳の若さで亡くなった作家。東海道の名所を西洋画の手法で描いたシリーズから6点。
小さな油彩じゃがとても好み。

・阿部正直《雲の写真7 No.16-No.24》(阿部正直コレクション:気象観察記録資料)1929年12月25日 写真、鉛筆・紙
初めて知ったお方じゃが、雲を観察し記録し続け、「雲の伯爵」と呼ばれた気象学者だそうな。
気象写真とスケッチの展示、興味深うござります。

・萬鉄五郎《太陽の麦畑》1913年頃 油彩・板
ゴッホめいたうねうね。オレンジ色や黄色の光線を四方八方に飛ばす太陽、オレンジ色の麦畑、紫色の木々。かなり好き。

・中村岳陵《残照》1961年 絹本着色、額装
(リストでは3章じゃが、展示は地下の第2会場)
燃えるような夕焼けの空に浮かび上がる、冬枯れの木のうねる枝々のシルエット。
迫力ある美しさでたいそう好み。

ささ、地下の第2会場へまいるぞよ。

地下の展示室は、白い壁に大きな作品がずらずら並び、より空を感じられまする。
展示順は、5章→4章じゃが、リスト順に書きまする。

【4章:宇宙への意識、夜空を見上げる】
・葛飾北斎《『富嶽百景』浅草鳥越の不二図》1834-36年頃 半紙判濃淡墨摺絵本
富士を背景に、大きな渾天儀で天体観測する様子が描かれておる。

・高橋由一《中洲月夜の図》1878年 油彩・カンヴァス
暗い夜空の雲の切れ目から満月が雲と川面を照らし、川には小舟に乗る3人のシルエット。お気に入り作品じゃ。

・駒井哲郎《星座》1962年 アクァチント(サンドペーパー使用)、ディープ・エッチング
シャボン玉のように変化する球体たちが浮遊して幻想的。

・柄澤齊『死と変容』第2集 洪水より「洪水A」1989-1990年 木口木版・紙
宇宙に浮かぶ卵形の透明な球体の中に、山々が埋まったような大地。

【5章:カタストロフィーと空の発見】
カタストロフィーによって露わになるもうひとつの空の姿で、戦争や災害が描かれておりまする。

・中村研一《北九州上空野辺軍曹機の体当り B29二機を撃墜す》1945年 油彩・カンヴァス
淡い色彩の美しい空かと思いきや、体当たり攻撃を決行した悲惨な瞬間なのじゃった。

・香月泰男《青の太陽》1969年 油彩、方解末、木炭・カンヴァス
本展のメインビジュアル。蟻の巣穴のような空間から、青い空と星々が見えておる。
一見絵本の世界のようじゃが、シベリアでの悲惨な体験から生まれた作品だそうな。

【6章:私たちはこの空間に何を見るのか?】
現代のアーティストたちの空。

・AKI INOMATA《あの日の空を覚えている 1926年4月20日、1929年12月25日、1932年12月12日》2024年 デジタルタイプCプリント、ステレオスコープ、4Kビデオ
3章に展示の気象学者・阿部正直へのオマージュ。
阿部の気象観察資料に残されていた雲をよみがえらせる試みで、楽しゅうござります。

空に焦点を当てた展覧会、目から鱗で興味深く、観応えござりました。
会期は11月10日までじゃが、最初に書いた通り一部展示替えがございます。
後期も観に行こうかのぅ。

観終わってランチすべく、早足で向かった先は肴とり。 

前回松濤美術館に来た時に初潜入したお店で、鮪丼がワンコインで衝撃のコスパの良さだったのじゃ。

今回も窓際のおひとり様席で落ち着きまする。

どれにしようか迷うのぅ・・・

港定食をお願いいたしまする~。

ど~ん!

サバ味噌、カキフライ4個、アジたたき、これで税込850円とはコスパ良すぎじゃ。

サバ味噌はご飯がガンガン進むが、ご飯とお味噌汁はおかわり1回無料ゆえ安心じゃw

カキフライは、タルタルソースが付いているのも嬉しい。
わたくしはタルタル派じゃからの。

どれも美味しゅうござりました。
普段お魚にあまり愛はないが、ここのランチは全種類制覇しとうござります。

★本の話
湊かなえ『人間標本』

早い段階で、え?これで終わる?と思うたら、その後のどんでん返しからのどんでん返しが怖く、後味は最悪なのじゃった。
高松和樹の口絵、6体の標本を文章の描写のままで美しく描いてて凄い。