シニアなシステム屋の身辺事情

そろそろ現役引退してもいいようなトシなのに生涯現役をめざすシステム屋の身の回りの出来事・・

ひょうたんから・・・

2006-03-14 11:57:41 | Weblog
ひょんなことからウチの役員がコミュニティFM局と繋がりができて
当社のCMを流すことになり、私が担当者となった。20秒スポット
CMを数カ月流すそうである。先日、FM局のかたがいらっしゃって
一回目の打ち合わせをした。

おいでになったのは、このFM局の社長さん。活発な語り口で、つい
話題が本題から飛んでしまう。

あらかじめ、20秒くらいの長さに収まる原稿をこちらで準備しておい
た。それにしてもこういう原稿というの、書くのは中々難しいね。
伝えたいこと沢山あるけど、盛りだくさんになっても聴くひとに残ら
ないと何もならない。だいいちイメージが大切だ。放送って、広く
周知できるけど伝えられる情報なんてたかが知れている。余談だけど
スポーツ観戦なんかTVで伝えてくるのは現場のホンの一部だけだって
こと、実際に観に行くとつくづく感じるもの。

ひととおり打ち合わせが終わり雑談モードになったところで話が爆発して
しまった。曰く、情報処理産業だって技術の伝承は徒弟制度なんですよ。
わ、それじゃ職人の仕事とおなじじゃないか。そうそう、だけど目に
見えにくいモノを作っていることが違うかなぁ。でも放送制作だってそう
かもね。そういえばいまの子供たちって、モノ作りの楽しさを知らない
んじゃないの。そうだそうだ・・・

結局、私は会社CMとは別枠でそのFM局の番組にゲスト出演すること
に。会社の宣伝そっちのけで(いや、少しは会社名出すけど)中堅IT
企業から来たヘンなおじさんの立場で出ることになりそう。

10年動き続けたシステム

2006-03-10 15:56:26 | Weblog
数年間、訪問していなかったお客様先に赴く。このお客様にはいくつかの
工程管理システムを導入していただいた。いまはお取引が無いが、こうし
て定期的な訪問は営業活動として必須だ(しかし数年ぶりというのがイカ
んな)。

お客様のシステム部門ご担当者は変わりがなく、しばし、最近の情報交換。
いろいろとお仕事になりそうな感じがあるが、しかしあいだのブランクは
いかんともしがたい。

「そうそう、あのシステム、まだ動いていますよ。見にゆきますか?」

ご担当者の言葉に誘われて、ある工程の現場にゆく。あるある、私が10年
以上も前に開発したシステムがまだ動いている。途端に、私はそのとき
の状況をありありと思い出した。工程の状況をリアルタイムに近い状態
で把握し、次になにをするべきかを画面で判るようにする。いま工程の
どこに滞りがあるか、明日はどのくらいの仕事があるかを一目で判るよう
にする・・・お客側の工程責任者と、まさに二人三脚となって開発に
没頭した日々、夜を明かした現場、責任者と交わした議論・・・

そのときの工程責任者は社内で昇格されて新しい責任者を紹介された。
開口一番

「このシステムはウチになくてはならないんですよ」

稼働開始したときからの、この評価は変わっていない。

技術屋として、これほど嬉しい評価は無い。苦労して作り上げたシステム
がお客様の仕組みとして10年以上も価値を保ち続けたことに。

しかしお客様に悪いけれど、それでいいのかとも思う。もっとこうした
ほうが、もっとこうすれば、あのときは予算や期間や技術面やハード面
の制約でできなかったことが、いまは容易にできるかも知れない。プロ
は一度気に入った道具を使い続けるというが、お客様の進化にあわせて
システムも更新があってほしいし、営業面でもありがたいと思う。

長く使い続けられるシステムは、それだけ設計が良かったことになるだ
ろう。しかし長く使い続けられると、そのお客様へのビジネスチャンス
を狭める結果にもなる。不埒かもしれないけども、そんなことを考え
させられた訪問だった。

失注

2006-03-07 12:22:27 | Weblog
「しっちゅう」と読む。手元の辞書を開くと、こんな言葉は出ていないので、
もしかしたら業界用語なのかも知れない。意味は、「注文を失う」。受注の
反対だ。

先日、大阪へ飛んでいったコンサル案件がお客さんの都合で先延ばしになっ
たと中間に入っていただいているベンダから連絡が入った。事実上の失注で
ある(だいだい、うまく商談がすすむときはタイミング良くポンポンと進む
のだが、うまくゆかないときは時間がかかるのと、断片的だが良い情報しか
届いてこない)。

いくら技術が良くても(決して自分はウデが立つとは思っていないが)、ともか
くお客様から認めてもらえなければ、受注が無ければたちまち干上がってし
まうのである。営業部門は、がんばっているのだが新規のお客を得るには多
くの時間と労力を必要とする。もっと効率的に新規開拓はできぬものかと、
知恵を絞る。得意分野を分析する、製品を企画する、広告方法に工夫する・・
前にも書いたけど「何でもできます」では技術者個人もそうだが会社であっ
ては他社との競争に勝てないのだ。

「だめだったよ・・・」営業部長の横の椅子に腰掛け、あ~あ、とタメ息。
まぁしかし、失注であっても得るところはある筈だ。他の客に矢を放とうと
相談を開始した。

IT技術者が減ってゆく?

2006-03-04 18:09:00 | Weblog
先般、大学の恩師と酒席をともにしたとき、情報系の入学志望者が減少
傾向にあると伺った。局地的な現象かと他大学の就職担当をされてい
る教員に問うと、似た返事が返ってくる。最近、大学の学科名に「情報
工学科」とか「システム工学科」という古くからある名称に替えて
「メディア××学科」や「○○クリエータ学科」など、横文字名に変わっ
ているのは、これへの対策のひとつなのだという。私などは、見ただけ
で何を勉強しようとするところなのか、にわかに判らないのだが。

情報系の学生が減ることは、そのまま情報系の人材が産業界から減って
ゆくことに繋がりやすい。「情報化社会」などということばはとっくに
死語になっているけど、資源を持たない日本で情報処理業はこれからも
成長する必要がある分野だと思っているのに、この現状はどうだろうか。

情報処理業、といっても実際の分野は広い。私の勤務する会社のよう
にシステム開発を主業にしているところや、インターネットを使った
サービスを実現させている会社、インターネットそのものを実現させて
いる会社もあればシステムを維持管理する会社もある。ハードウェア
を開発・販売している会社も忘れてはならないし、それらを扱う商社
のような会社も情報処理業といえるだろう。

さまざまな業務形態があり、それぞれが特長を出して業界を形成してい
る。しかしよく見ると時代の流れというのがあるようで、そのときどき
によって注目を集める仕事があることは確かだ。たとえばネットバブル
隆盛の頃はインターネット系が実態以上に期待されたし、ここ最近は
インターネットを使ったビジネスを実現している会社が学生に人気が
あるという。どうも、私の居るシステム開発は最近人気が低いようだ。

たしかにシステム開発というと営業が捉えてきた商談レベルから客先に
詰めて具体的なシステムに仕立ててゆき、受注後は他の会社のひとたち
と一緒にシステムやプログラムを作ってゆく。そして導入後はしばらく
フォローが続くのだが、どの段階でも仕事のスタイルは

コツコツ

なのだ。残業、休日出勤、徹夜、不意の呼び出し、そんなことは日常
茶飯事、そこに喜びを見いだせるくらいじゃないとシステム屋は勤ま
らんよ、などと若い学生諸君に言えばきっと彼らは業界を敬遠するだ
ろう。

しかし考えてもらいたい。世の中にカッコいい仕事なんて、ないのだ。
確かに楽ちんに見える仕事はあるかも知れない。でもね、目に見えに
くいけど「システム」というモノをお客さんやプロジェクトメンバー
と創ってゆく(作ってゆく、じゃない)工程は、苦労が多いほど自分の
人生に何らかの良き影響を与えるのだ。苦労して作ったあとの達成感
が素晴らしいとうひとがいるが、私の場合、出来上がったときの

  あ、できたんだ

と思うその瞬間にホッとチカラが抜ける脱力感を味わいたくてやって
いるようなもの。情報産業には、そんな機会がいっぱいある。これか
ら社会に出ようとする学生諸君がこのような体験を知らずして人生歩
むなんて、勿体ないなぁと思った。

「何でもできる」は赤信号

2006-03-01 21:32:38 | Weblog
システム開発は多くのひとが携わってすすめられてゆく。開発の内容や規模に
よって必要なスキルや経験、そして人数や期間は変わってくる。したがって
多くの場合、ひとつの会社だけで開発がすすめられてゆくことは稀だ。これ
と似た業界に建設業界があるが、どうもあちらは会社ごとに役割が決まって
いるそうだが、我が業界はそれほど明確に決まっていない。

ひとつのプロジェクトをすすめるとき、自分がどこかの会社から仕事をもら
うカタチで参画することがあるし、仕事の一部を他の会社のひとにお願いする
こともある。会社によって得意分野があるのだが、結局は「ひと」の能力に
依存することになるから、一緒に仕事をする(かも知れない)ひとと面談する
ことは必須だ。(かも知れない)と書いたのは、面談の結果、一緒に仕事でき
ないと判断することがあるからだ。

先日、受注予定プロジェクトに参加していただけそうなひとと面談した。通常、
面談は、対象となるひとの年齢や、過去にどんな仕事をどんな役割でどのくら
いの期間したのか、そのひとの特長があればそれは何か、そんなことを書き連
ねた「経歴書」という文書を貰ってすすめる。そして一緒に営業担当者が同席
する。

ところで、面談でそのひとのことが全部判るなんて、不可能だ。
「コイツは××業の○○システムを3年経験しました。△△システムは2年で、
そのときの環境はVBとオラクル、これはリーダーでした。それから・・」
営業担当者が経歴書を前に延々と説明するのを私はフムフムと聞くフリして、
実は次のことだけが知りたいのである。


   そのひとの目線やふるまいはどうか
   きちんと日本語が話せるか
   困ったことや問題に気がつくかどうか

ひとつめは礼儀、ふたつめはコミュニケーション、みっつめは問題発見力。
それだけ判ればいい。技術については経歴書みればだいたいわかるし、だい
いち実際にやってみないと判らないから、面談で技術力を見抜こうなんて、
思わない。共通の話題は経歴書になるから、そこから質問してみる。私の
質問の意図にあった返答が的確に返ってくる。むむっ、なかなかいい感じ。
会話になっているぞ。

私はとっておきの質問を出してみた。

  「いちばん得意にしていること、これは負けないぞ、と思うことって何?」
  「何でもできることです」
  (営業担当者)「ええ、コイツはどんな技術も業種も何でも来い!です」

それはないだろう。なんでもできるなんて、実は何もできないぞ。そんな
万能なひとが居たためしない。私はこの

   何でもできる

というのと

   いままで失敗したことがない

という技術者はハナから信頼していない(この自説には賛否両論があるか
も知れないが・・)。または圧倒的に経験不足のどちらかだ。残念ながら
お引き取り願った。ああ、会話ができるひとだったのになぁ。

腰の軽さが身上

2006-02-28 01:13:06 | Weblog
土曜日、朝から掃除・洗濯していたら携帯電話が鳴った。
誰かなァととると、懐かしい声。1年前に一緒に仕事
した外注さんだ。あのとき、私はユーザ側のIT化コン
サルタントの役割でこの外注さんに接していた。かなり
ご無理をおかけして、悪いことしたなぁという感覚を持っ
ている。

話をうかがうと、この外注さんが親しくされている大手
ベンダさんがシステムのコンサルタントを探していて、
早急に提案したいのだが都合はつくか、という要件だっ
た。

私のことを思い出していただいたのだ。ありがたい。こう
いうハナシは早くすすめるに限る。本来は上司に相談して
判断するのがスジだろうが、即答で「やりましょう!」
と返事した。最初の打ち合わせは翌月曜日にするとのこと。
行きまっせー、嬉しいじゃないですかぁ、トントン拍子に
ハナシがすすんで。

で、月曜日に昼すぎの新幹線に乗って一路大阪へ。

さきほど最初の打ち合わせを済ませてきました。我が上司
に勝手ばかりで悪いけど、このレスポンスの良さがお客様
に好印象をもたらすのではないか。この素早さがシステム
屋に必須の心がけではなかろうか。結果を出してゆけば、
このようなビジネススタイルでも会社に受け入れられる筈。
その時点で相手にとってベターと思われる行動をすること
が良きビジネスに繋がる、そう思っています。

さて・・・帰路に、その外注さんに先般の仕事のときのこ
とをあらめてお詫びを申し上げました。ところが

「いえいえ、良き思い出ですよ。お客さんに導入効果を出しま
 したものね」

の一言で救われる思いがしました。ひととひととの繋がり、
これからも大切にせねばなりませぬ。



社内の研修会

2006-02-26 19:04:58 | Weblog
通常、サラリーマンは本業以外の仕事をしてはいけないことに
なっている。ウチの会社もそうだ。しかし会社は太っ腹なとこ
ろがあって、私は許可を受けて社外でいろいろな活動をおこなっ
ている。専門書の執筆と出版、雑誌への定期掲載、企業む
け研修会、そして4年前から短大の非常勤講師だ。普通のサラ
リーマンが、こんな別の顔を持てることは非常に幸せなことで、
会社に感謝している。ただ会社も、私を広告塔として利用して
いるようだけど、それは大いに結構。だいいち、この業界で
必須な人脈が拡がるではないか。

さて、私は社外で以下の人材育成の研究をしてきている。

  上級SE

上級SEというと、世間では曖昧な定義になるが、ここでは
営業案件から客先の本当のニーズをひきだし、それに合致する
システム化案を考えて提案し、受注のあとは開発陣にシステムの
内容を正確に指示することができるひとを指す。実はこれ、
上級SE教育研究会という社外研究会に私が
所属していることで得たテーマなのだ。

で、このテーマでいままで企業研修や短大授業をおこなってきた
が、昨年末に社内異動があって私の役割が変わったことを機に
社内でこれと同じ授業を始めている。

毎週土曜日の昼から連続8回、1月から開始してあと数回で終わる。
社員向けの講師するって、なんだか抵抗ある。日常の生態?がバレ
ているからね。でも受講生諸君は、私も教員として見事に扱ってく
れる。私も熱が入る。

内容は、システム提案書の書き方とか、人前でのしゃべり方とか、
そのような技法を勉強するのではなく(無論それも大切であるが)、
システムそのものの考え方とか、お客の意識をどう把握してどの
ようにシステムに反映させるといった、システム化にあたって
必要な考え方を身につけることとしている。したがってあらゆる
分野に通用し、普遍的な事項だから将来に渡って使えなくなる
ことはない。

自由意思で参加する自主研修だから、この研修を受けたからといっ
て人事考課に反映されることはないし、すぐに役立たないかも知れ
ない。でも受講生は、まるで知的刺激に飢えていたように熱心だ。

研修が終わったら、私は受講生にアンケートをとってみようと思う。
いままで社外のひとたちばかり相手にしてきたが、社内でも、この
内容の研修がこれからも通用するかどうかを自ら確かめるために。