シニアなシステム屋の身辺事情

そろそろ現役引退してもいいようなトシなのに生涯現役をめざすシステム屋の身の回りの出来事・・

卒業式

2006-03-24 17:38:39 | Weblog
本業の傍ら勤めている短大の卒業式に出席してきた。

この短大は一部と二部、そして通信課程がある。学生数
は圧倒的に一部が多く、そして年齢層も若いため、これ
までは式典の最中なのに騒がしく閉口したものだが、
今年は静かにその場に居る。

校歌斉唱、学長式辞、来賓祝辞、卒業生答辞、記念品贈
呈、優秀者表彰・・毎年変わらぬ内容で粛々と式が進行
してゆく。壇上に上がる学生が、教室で見せる顔とは異
なっていて、かしこまっているのがおかしい。

こうして彼らは人生のひとつの節目を迎え、新しい世界
に出てゆくのだ。4月になれば、このようにして送り出
された新社会人が街でひときわ目立つであろう。学長の
式辞のなかに「相談ごとがあるなら、いつでも戻ってらっ
しゃい」が毎年ある。社会で得る繋がりは大切だけど、
学びの場で培われた人の繋がりも大切にして欲しい。そ
の繋がりのなかに教員も含まれれば、諸君の人生におい
て大切な財産になるかも知れないぞ、などと偉そうなこ
と言いたくなってきたけど、まだそんなこと言えるのは
少し先かな。

謝恩会も済み、彼らにとって一連の出来事はイベントな
のかも知れないけど、ずっとあとになって学ぶことの大
切さと学べたことの幸福を思い出して欲しいなぁと大量
の写真に収まりながらふと思ってしまった。

ひょうたんから・・・

2006-03-14 11:57:41 | Weblog
ひょんなことからウチの役員がコミュニティFM局と繋がりができて
当社のCMを流すことになり、私が担当者となった。20秒スポット
CMを数カ月流すそうである。先日、FM局のかたがいらっしゃって
一回目の打ち合わせをした。

おいでになったのは、このFM局の社長さん。活発な語り口で、つい
話題が本題から飛んでしまう。

あらかじめ、20秒くらいの長さに収まる原稿をこちらで準備しておい
た。それにしてもこういう原稿というの、書くのは中々難しいね。
伝えたいこと沢山あるけど、盛りだくさんになっても聴くひとに残ら
ないと何もならない。だいいちイメージが大切だ。放送って、広く
周知できるけど伝えられる情報なんてたかが知れている。余談だけど
スポーツ観戦なんかTVで伝えてくるのは現場のホンの一部だけだって
こと、実際に観に行くとつくづく感じるもの。

ひととおり打ち合わせが終わり雑談モードになったところで話が爆発して
しまった。曰く、情報処理産業だって技術の伝承は徒弟制度なんですよ。
わ、それじゃ職人の仕事とおなじじゃないか。そうそう、だけど目に
見えにくいモノを作っていることが違うかなぁ。でも放送制作だってそう
かもね。そういえばいまの子供たちって、モノ作りの楽しさを知らない
んじゃないの。そうだそうだ・・・

結局、私は会社CMとは別枠でそのFM局の番組にゲスト出演すること
に。会社の宣伝そっちのけで(いや、少しは会社名出すけど)中堅IT
企業から来たヘンなおじさんの立場で出ることになりそう。

10年動き続けたシステム

2006-03-10 15:56:26 | Weblog
数年間、訪問していなかったお客様先に赴く。このお客様にはいくつかの
工程管理システムを導入していただいた。いまはお取引が無いが、こうし
て定期的な訪問は営業活動として必須だ(しかし数年ぶりというのがイカ
んな)。

お客様のシステム部門ご担当者は変わりがなく、しばし、最近の情報交換。
いろいろとお仕事になりそうな感じがあるが、しかしあいだのブランクは
いかんともしがたい。

「そうそう、あのシステム、まだ動いていますよ。見にゆきますか?」

ご担当者の言葉に誘われて、ある工程の現場にゆく。あるある、私が10年
以上も前に開発したシステムがまだ動いている。途端に、私はそのとき
の状況をありありと思い出した。工程の状況をリアルタイムに近い状態
で把握し、次になにをするべきかを画面で判るようにする。いま工程の
どこに滞りがあるか、明日はどのくらいの仕事があるかを一目で判るよう
にする・・・お客側の工程責任者と、まさに二人三脚となって開発に
没頭した日々、夜を明かした現場、責任者と交わした議論・・・

そのときの工程責任者は社内で昇格されて新しい責任者を紹介された。
開口一番

「このシステムはウチになくてはならないんですよ」

稼働開始したときからの、この評価は変わっていない。

技術屋として、これほど嬉しい評価は無い。苦労して作り上げたシステム
がお客様の仕組みとして10年以上も価値を保ち続けたことに。

しかしお客様に悪いけれど、それでいいのかとも思う。もっとこうした
ほうが、もっとこうすれば、あのときは予算や期間や技術面やハード面
の制約でできなかったことが、いまは容易にできるかも知れない。プロ
は一度気に入った道具を使い続けるというが、お客様の進化にあわせて
システムも更新があってほしいし、営業面でもありがたいと思う。

長く使い続けられるシステムは、それだけ設計が良かったことになるだ
ろう。しかし長く使い続けられると、そのお客様へのビジネスチャンス
を狭める結果にもなる。不埒かもしれないけども、そんなことを考え
させられた訪問だった。

失注

2006-03-07 12:22:27 | Weblog
「しっちゅう」と読む。手元の辞書を開くと、こんな言葉は出ていないので、
もしかしたら業界用語なのかも知れない。意味は、「注文を失う」。受注の
反対だ。

先日、大阪へ飛んでいったコンサル案件がお客さんの都合で先延ばしになっ
たと中間に入っていただいているベンダから連絡が入った。事実上の失注で
ある(だいだい、うまく商談がすすむときはタイミング良くポンポンと進む
のだが、うまくゆかないときは時間がかかるのと、断片的だが良い情報しか
届いてこない)。

いくら技術が良くても(決して自分はウデが立つとは思っていないが)、ともか
くお客様から認めてもらえなければ、受注が無ければたちまち干上がってし
まうのである。営業部門は、がんばっているのだが新規のお客を得るには多
くの時間と労力を必要とする。もっと効率的に新規開拓はできぬものかと、
知恵を絞る。得意分野を分析する、製品を企画する、広告方法に工夫する・・
前にも書いたけど「何でもできます」では技術者個人もそうだが会社であっ
ては他社との競争に勝てないのだ。

「だめだったよ・・・」営業部長の横の椅子に腰掛け、あ~あ、とタメ息。
まぁしかし、失注であっても得るところはある筈だ。他の客に矢を放とうと
相談を開始した。

IT技術者が減ってゆく?

2006-03-04 18:09:00 | Weblog
先般、大学の恩師と酒席をともにしたとき、情報系の入学志望者が減少
傾向にあると伺った。局地的な現象かと他大学の就職担当をされてい
る教員に問うと、似た返事が返ってくる。最近、大学の学科名に「情報
工学科」とか「システム工学科」という古くからある名称に替えて
「メディア××学科」や「○○クリエータ学科」など、横文字名に変わっ
ているのは、これへの対策のひとつなのだという。私などは、見ただけ
で何を勉強しようとするところなのか、にわかに判らないのだが。

情報系の学生が減ることは、そのまま情報系の人材が産業界から減って
ゆくことに繋がりやすい。「情報化社会」などということばはとっくに
死語になっているけど、資源を持たない日本で情報処理業はこれからも
成長する必要がある分野だと思っているのに、この現状はどうだろうか。

情報処理業、といっても実際の分野は広い。私の勤務する会社のよう
にシステム開発を主業にしているところや、インターネットを使った
サービスを実現させている会社、インターネットそのものを実現させて
いる会社もあればシステムを維持管理する会社もある。ハードウェア
を開発・販売している会社も忘れてはならないし、それらを扱う商社
のような会社も情報処理業といえるだろう。

さまざまな業務形態があり、それぞれが特長を出して業界を形成してい
る。しかしよく見ると時代の流れというのがあるようで、そのときどき
によって注目を集める仕事があることは確かだ。たとえばネットバブル
隆盛の頃はインターネット系が実態以上に期待されたし、ここ最近は
インターネットを使ったビジネスを実現している会社が学生に人気が
あるという。どうも、私の居るシステム開発は最近人気が低いようだ。

たしかにシステム開発というと営業が捉えてきた商談レベルから客先に
詰めて具体的なシステムに仕立ててゆき、受注後は他の会社のひとたち
と一緒にシステムやプログラムを作ってゆく。そして導入後はしばらく
フォローが続くのだが、どの段階でも仕事のスタイルは

コツコツ

なのだ。残業、休日出勤、徹夜、不意の呼び出し、そんなことは日常
茶飯事、そこに喜びを見いだせるくらいじゃないとシステム屋は勤ま
らんよ、などと若い学生諸君に言えばきっと彼らは業界を敬遠するだ
ろう。

しかし考えてもらいたい。世の中にカッコいい仕事なんて、ないのだ。
確かに楽ちんに見える仕事はあるかも知れない。でもね、目に見えに
くいけど「システム」というモノをお客さんやプロジェクトメンバー
と創ってゆく(作ってゆく、じゃない)工程は、苦労が多いほど自分の
人生に何らかの良き影響を与えるのだ。苦労して作ったあとの達成感
が素晴らしいとうひとがいるが、私の場合、出来上がったときの

  あ、できたんだ

と思うその瞬間にホッとチカラが抜ける脱力感を味わいたくてやって
いるようなもの。情報産業には、そんな機会がいっぱいある。これか
ら社会に出ようとする学生諸君がこのような体験を知らずして人生歩
むなんて、勿体ないなぁと思った。