第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」13話、デミュクの両替は上手くいったの?まだまだ、情報収集はつづくの?「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0016
16、デミュクの両替は上手くいったの?まだまだ、情報収集はつづくの?
デミュクと執事シュシャンは、女将が両替から帰ってくるのを待った。
執事シュシャンは、その空いた時間、ここの土地について語り始めた。
「私が調べたところ、
デミュク様。この土地は、南に川が流れていたことから、
『サウゼ・リバデンド』と言います」
「河があるのですか?土地は、痩(や)せてるのに」
「あったのは昔ですよ。その河も今は干上(ひあ)がっています」
「ほぉ。
シュシャンに会った喜びで、
すっかり、街の名前を聞くのを忘れてたよ。
そうか、この土地は、サウゼ・リバデンドと言うのか」
執事シュシャンは、主人デミュクの役にたったと嬉しそうに話を続ける。
「この土地は、北から来た貴族が土民(どみん)から奪(うば)い取って統治した街です。
その時、抵抗(ていこう)した土民の長(おさ)は、
祈りの儀式を行って悪魔を呼び出しかけた。
しかし、長(おさ)の力が足りずに、
北の貴族を滅ぼすのは失敗したとかだそうですが、
その時以来、河(かわ)が枯(か)れているそうです。
悪魔を呼び出す儀式で、この土地と我々の世界は繋(つな)がったのかもしれません」
「それでですか」
「イリスさんの褐色の肌は、土民の名残かもしれません」
「でも、イリスは、神を信じていますよ」
「それは、北の地方の信仰をこの土地に広めたからです。
信仰は、力を持ちます。
土民を従わすのに一役(いちやく)をかっています」
そこに女将が両替から帰ってきた。
「20枚のミュウデラ金貨が60枚の金貨になったよ。
だんな、純度が3倍あったよ」
デミュクは、金貨を受け取り文字を読んだ。
(ロンバルト。王国の名前か?)
冠(かんむり)を被り、口髭(くちひげ)を蓄(たくわ)えた王様の横顔が描かれている。
「お礼は、どのくらい払えばいいの?」
「金貨を3枚てとこだよ。
それより、たくさん食(く)って飲(の)んでおくれ」
両替は、上手く行ったようである。
「それなら女将(おかみ)さん。何か、お酒はありますか?」
「あると言っても人参酒(にんじんしゅ)だけどね。
それでいいかい?」
「それを頼(たの)みます」
女将さんは、古びた瓶(かめ)に入(はい)ったお酒を持ってきた。
「客もいないし、たんと飲んでおくれ」
「もしよかったら女将さんも飲まれますか?」
女将は、デミュクの隣に椅子を持ってきて座った。
粘土を焼いたコップを三つ持っていた。
それをデミュクらに配った。
そして、瓶(かめ)から柄杓(ひしゃく)で酒を汲(く)んで入れた。
デミュクは、恐る恐る一口含(ふく)む。
舌がアルコールでしびれる感覚を受ける。
「ごくっ」と飲み込んだ。
何にか気分が少しほぐれる気がした。
「女将さん。野菜炒めを食べてみて、
これを振りかけたんだ」
デミュクは、コンジョの小瓶を見せた。
「確かに黒い粒がちらほら見えるね」
女将は、一口食べた。
「これは、刺激的だね。だんな、これは良いよ」
女将は、更に一口食べ、お酒を飲んだ。
「お酒に合うね。
これは、あんたの国で育ているものなのかい?」
「はい。コンジョです。私の国で育てています」
「ふぅぅん。でも育てるのは難しいのだろ」
「確かに難しいです。でも、水をそんなに必要としないし、
気候もこの土地にあっていると思います」
「是非(ぜひ)とも、この土地でこの食べ物を育ておくれんかね」
女将は、これでこの土地が繁盛(はんじょう)するかと思うと心がうきうきした。
「今、それを考えていて、
領主へ私たちを紹介して頂けくことはできませんか?」
「領主の息子なら、カードゲームの後、夜中に飲みに来るよ」
「だんな、待ってみるかい?」
「待たせていただけますか?」
「まだ、時間もあるし二階で休むといいよ」
女将は、デミュクと執事シュシャンをここで休むように促(うなが)した。
「女将さん。領主の名前は?」
「エンバレーン領主マルコスさま、
息子は、マルミニおぼちゃんだよ」
デミュクと執事シュシャンは、食事を終え、2階の部屋へと階段を上がった。
つづく。次回(領主の息子マルミニ)
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